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「ホワイトサーベルによるとそのアンクレットからは幸福の感情があふれでているそうだ」
「幸福の?」
キルギア王国、夏の昼下がり、王城の最上階の夫婦の寝室に造られたバルコニーでつかのまの平和を楽しんでいる二人がいた。
今日の午後はラインハルトが執務を引き受けてくれたので結婚以来初めて、夫婦水入らずで昼から休暇を楽しんでいる。
外はさわやかな風がそよいでおり、小さな鳥たちがさえずり飛んでいる。
ふかふかのソファをバルコニーに置き、シュミーズドレスを着たシェリアがゆったりと腰かけた膝の上には大分肋骨の完治も近いデュランダルが頭をのせていた。
「魔王であるドラゴンがシェリアを攻撃できなかったのはそのせいだと言っていた。魔王は負の感情が増大したものだから幸福の感情には近づけないそうだ」
「聖獣たちは大丈夫なんですか?」
「彼らは、負の感情を浄化させている。だから幸福の感情を理解はできないようだが、近づくことは可能だそうだ。ちなみにその浄化させたものこそが魔晶石らしい。負の感情があるからこそ人間は幸せに喜びを感じることができる。だから魔晶石はこんなにも美しい」
デュランダルが懐から黄色く輝く石を取り出した。
「まぁ」
希少な石、魔晶石。日によって色が違うという。
「ホワイトサーベルにもらった」
「そうだったんですね」
「キルギアの針葉樹林に長く住む彼ら聖獣は、昔からキルギア人と共存してきた。おそらく低級魔獣たちは知能を持たず、単純な負の感情でできている。人は低級魔獣を殺すことで負の感情を自ら浄化しているんだ。中級以上の魔獣たちは低級を人間があやめることについては否定しない。彼らは人間が自らが生み出した負の感情と戦い浄化することを見守っている。そして自らも負の感情を針葉樹林にためて石として浄化させてくれている。そういう生き物だったんだよ。彼らは」
「キルギア人は長い歴史の中で魔獣との関係性を守り続けていた。キルギアは他国の人々からの鬱積した負の感情を浄化する役割を持っているんですね」
「ああ」
「誇りを持つべきです」
「誇りか…」
「この話をキルギア人ひいては世界中に拡散すべきですわ」
「そうだな。では童話として拡散するか?」
「まぁそれはいい考えかも」
「だろう?俺も愛を知って少しずつ人の機微な感情を持てるようになってきたってことかな?」
「まぁ」
今はドレスに隠れて見えないが、肌身離さずつけているアンクレット。
オルベリアにいたころは首飾りとして加工していたものだ。
シェリアは少し腰をかがめるとアンクレットのホックをぱちりと外した。




