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三十九話 運命の共振

「話なんていい!今すぐ逃げろ!」

「でも…………」


「断罪砲ッッッッ!!」

 

辺り一面が光に包まれた。

ゴゴゴゴゴ…………

 

「あんたは……!?」

「昨日ぶりだね、内貴憧也君!うわぁ、なんか2人死んでる……って奈織様!?」

「久遠…………」

「お前、敵じゃないのか……?」

「?ああ、昨日は個人的に事実を調べに行っただけだよ。ね?鹿子ちゃん?」

 

コクコクと頷いている。

 

「……なんで母さんを襲った。」

「記憶、見るため。眠らせる必要、あった。ごめん。」

《マダオ仲間ガイタンデスネ。》

「まじ!?無傷!?」

 

チートかよ……

俺たちの勝利条件はやつの心臓を潰すこと。

ただ場所がわからないから細切れにするしか………………

…………はっ!

 

「おい!鹿女!!」

「!はいっ……!」

「お前記憶見れるんだな?あいつの記憶見れるか?」

「……頭に触れれば多分。」

「よし、俺が隙を作る。記憶をみて心臓の位置を特定しろ!!」

「でも……」

「それしか生き残る術はない!!」

「鹿子ちゃん!初任務だよー!頑張ろうね!」

 

 鹿子は静かに頷いた。彼女は勘づいていた。ここで躊躇すれば、未来はない、と。

 

「……わかった。」

「マグナス……まだやれるな……!」

《死ニナサイ愚カナ人族ヨ》

 

 ケイルシールの低い声が、響き渡る。彼の瞳が、金色に輝き、その周囲の空気が、重力と圧力によってねじ曲がり始めた。

 

《グオオオオオオオオオオオオオオ!!》


ケイルシールが咆哮をあげる。周囲の重力が異常に増大し、四人の身体が、急激に地面に押し付けられる。


「重力……!?」


必死に立とうとするも指一本も動かない。

 ケイルシールの力は、彼らの能力を遥かに上回っていた。


《ソノママ圧死シナサイ。》

 

身体から、血管が破裂しそうなほどの圧力がかかる。

 

「ぐはぁっ……!」

 

 四人は、壁を感じていた。それは、努力で超えられる壁ではない。

 次元の壁。彼らがどれほど力を振るっても、ケイルシールはただそこに立っているだけで、彼らの攻撃を無効化し、彼らの身体を圧殺しようとする。

 

(心臓……心臓の位置さえ、分かれば……!)





 

「悪ぃな!!待たせた!!」


 

澄んだ一声が響き渡る。

 

「……ウズ!!」

「お前、随分と力つけたみたいだな。せっかく倒したスライムも吸収しやがって!」

《早ク私ヲ殺サナイト仲間ガ死ンデシマイマスヨ。》

「おっと、そうだな。じゃあお構いなくっ!」

 

まずはこの重力魔法をどうにかしないとな。

ダンッ!

姿勢を低くし、足の下にもぐりこむ。

 

「ガラ空きだ!」

 

短剣を逆手に握り、下から斬り上げる。

ザザザザッッ!!

ウズの短剣はケイルシールの股下から首までを引き裂いていた。

 

《フン……コノ程度カ》

「なにっ……」

 

斬ったはずのところにもう傷はなかった。

ゴッ!

 

「っはぁっ……!」

 

腹から腕が新たに生え、ウズを殴りとばす。

 

《今ハ人ノ姿ニナッテイルダケ。変幻自在デス。》


くそっ、肋折れた……

油断した!

息を吸うたびに胸が痛み、握る短剣も今にも零れ落ちそうになる。

 それでも――立ち止まるわけにはいかない。

 ウズは血まみれの唇を噛み切り、再び一歩を踏み出した。

 

「……私が、やるしか、ねぇだろ……!」

 

 ケイルシールの重力場は今も広がり、仲間たちは膝を折りかけている。このままでは誰も抗えない。

 ならば、自分が犠牲になってでも隙を作るしかない。

 

《無駄デスヨ。抵抗ハ無意味》

 

 ケイルシールは静かに宣告する。

 だが、ウズは笑った。

 血に濡れた顔で、八重歯を剥き出しにして。

 

「無意味でも、やらなきゃならねぇんだよッ!!」

 

全身の筋肉が悲鳴を上げる。

ウズは大地を蹴った。

突進。

一直線に飛び込む。

刃が閃き、ケイルシールの胸へ突き刺さる。

――ズブリ。

肉を裂いただけ。大したダメージは与えられないだろう。

でも、それでも構わない。

狙いは斬撃そのものではなく、その直後。

ウズは刺したところにすかさず焙烙火矢を埋め込んだ。

 

「ッらあああああッ!!」

 

ドカンッ!!

 爆薬が炸裂し、爆炎がケイルシールの上半身を覆う。

 一瞬だけ、その動きが止まった。

 

《……ッ……》

 

 たった一瞬。だが、仲間には十分だった。

 

「今だッ!!」

 

 その瞬間、彼らを押し潰していた重力が一瞬だけ弱まる。

 仲間たちの身体が一斉に解放され、自由を取り戻す。

 

「……っ、はぁ……はぁ……」

 

 ウズは膝をつき、力なく笑った。

 

「……ちょっと…休むわ……」

 

 握っていた短剣は彼女の手から落ちた。

 視界が暗転しながらも、彼女は最後までケイルシールを睨み続けていた。


ウズ!

サンキューな!!

 

「鹿女!ケイルシールまで一直線に走れ!!」

「………わかった!」

《…………》

 

ケイルシールの攻撃の手は緩まない。

何千もの矢を生成し、こちらに飛ばしてくる。

 

「……っ!」

「……させるかよ!!」

「マグナスさん……!」

「断罪砲!!」

 

鹿女を守るべく全力で援護する。

何本かの矢は鹿の仮面をかすめ鮮血が飛び散っている。

が、彼女の足は止まらない。

防御などはせず、突進することにのみ専念していた。

もう少し、もう少し……

よし!

 

「いけ!!」


その言葉と同時に鹿女が綺麗な跳躍をみせる。

体を回転させながら、まるで体操選手のように宙を舞い、



ケイルシールの頭を触った。

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