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十三話 その後

「ねえねえルイちゃん、内貴君、浅本君と一緒にどこかいっちゃったね。」

「そうだね…………?今ちゃんって言った?」

「うん、だってルイは女の子でしょ?」

「驚いたな、てっきりクラスのみんなが僕のことを男だと思っているのかと……」

「だいたいはそう思っているわね。でも、所作とか全部女の子だよ?」

 

 典子が笑いながらそう告げる。

 

「ちょっと嬉しいな、初めて女の子って言われたからね。」

「そうなんだ!私観察には自信があるんだ。ちなみに内貴君は気づいてないと思ってるかもだけど、彼ね、いっつも私の匂いかいでくるの!」

「それは……あまり聞きたくなかったな……」

「すれ違うときに、クンクンクンって!!」

 

 憧也君って意外とロクでもないのかな。

 

「ルイちゃん今からどうする?」

「僕らは憧也君の家に戻ってみんなの帰りを待とう。」

「うーーーん、かぁふぇ行かない?」

「…………?」

「わ、私友達とかぁふぇに行くのが夢だったんだ。」

「ああ、カフェね。いいよ、暇だしね。」

「やった!」

 

「ホットコーヒーとカツパンで。」

「じゃあ、私はフラッペコーヒーで。」

 

 典子は緊張しているのか、先ほどから挙動がおかしい。

 

「ルイちゃんホットコーヒー飲むんだね、大人だ。」

「一度飲んでみるといい、疲れがとれるよ。でもね、ここの真髄はカツパンなんだよ。何回か来たんだけどカツパンに勝てる相手なんていなかった。ただ量が多いんだよ、半分こにしよう。」

「ふふふ、ちゃんと子供で安心した。」

 

 僕たちは世間話をしながら料理を楽しんだ。

 

「そろそろ帰ろうか。」

「うん。」

 

 帰路につく。

 

「ねえ、ルイちゃん。私なんで内貴君の家に連れていかれたの?だって文化祭の劇のパンフレットの中にルイちゃんと内貴君の名前なかったから、今朝のは嘘だってわかって……」

 

 本当にさっきまで信じていたんだ……

 

「そうだね、確かに今朝のは嘘だ。もしかしたら典子は今僕らを疑ってるのかもしれない、犯罪に巻き込まれないか心配に思っているかもしれない、でもね、今は僕らを信じて欲しい。話すべきときがきたらきちんと全てを打ち明けるよ。」

「うん、わかった!さっきのカフェでの会話でルイちゃんが悪いことするわけないってもうわかったから、信じるよ!私観察は得意なんだ!…………今日も監視必要なんだよね?今からお母さんに泊まるって言ってくるから、待ってて。」

 

 典子は自宅まで直行した。



 ふう。

 新幹線がいかに快適かを今理解した。ジュンさんみたいに早ければいいってわけではない。あれは本当に内臓が飛び出るかと思った。サイコパスめ。

 

「どちらまで?」

「へ?ああ、博多駅までです。」

 

 隣の席の70代くらいの女性が話しかけてきた。

 

「奇遇ですね。私も博多駅までです……あなたは……お一人で旅行ですか?」

「いやいや、旅行なんて長いことしてませんよ。今日は祖父が入院している病院までいってきただけです。」

「えらいわねぇ。うちの息子なんて、ずっと連絡もくれないのよ。親不孝が過ぎるわ。まったく」

「ま、まあ連絡がないのは元気な証拠ですよ。あなたのことをちゃんと考えていると思いますよ。そちらはなにしに?」

「例の息子が福岡にいると聞いてね。ていうのは建前で遊びに来ただけだけどね。うふふふふ」

 

 その後は他愛もない会話を続けていた。会話が途切れると別の話題を探す、これが結構きつかった。初デートの時にこんなに沈黙が多かったらフラれるな、なんて思いながら2時間弱で到着した。

 おばあさん相手に何思ってるんだか……

 

「それじゃあ私はあっちだから、また縁があったらそのときは。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

 残りは2000円、タクシーは金が足りないよなぁ。地下鉄で帰るか。

 俺はチケットを買い、地下鉄に乗った。

 結構満員だな。今は20時36分帰宅ラッシュってやつか。

 満員電車嫌いなんだよなぁ。知らない人と密着するし…。

 ってデカぁ!横の人めっちゃでかいやんけ!筋肉質のドレッドヘアで……

 

「ウォルフ、さん?」

「トウヤ……」

「トウヤじゃねえか!?こんな所で何してるんだ?」

 

 ウォルフの股下でちっちゃいのがおらびあげている。

 

「何って、話したいこと山ほどあるんけど、詳しいことはあとで話すよ……って篤男さんは?一緒じゃなかったっけ?」

「「…………」」

「なあ、どうしたん……」

「なぁ、トウヤ……このままだと篤男が殺されちまう!!」

 

 涼が大粒の涙を流しながらそう言った。

 

「ちょ、おまっ、大丈夫かよ。」

「俺が、俺がヘマしたから、、」

「リョウ、ワルクナイ、オレガヨワイカラ」

 

 涼とウォルフがお通夜みたいな空気を出している。

 

「何があったんだ!?ああ、この駅だ、ひとまず降りるぞ。」

 

 外はもう充分暗かった、時刻は21時をまわっていた。

 俺たちは公園のベンチに座った。

 

「今日俺たちは3人で、資料室の禁書庫で本を盗んだんだ。」

「うん…………え?」

「それで、敵に見つかって、篤男が攫われた…今夜、今夜0時に処刑するって…………すんっ、ぐすっ……」

 

 いやこれはどっちだ?どっちが悪いんだ?

 ただ、それが本当なら今は助けることを最優先するべきだ。

 

「涼泣くな、まだ処刑されてないんだろ?今から奈織さんとルイに話つけて、救出しにいくぞ!」

「…………うん。」

「お前ら、こんな所でなに道草食ってるんだ。帰るぞ。」

「な、奈織さん!!よかった、いいところに…………いまから篤男さんを助けに…………って」

「「ええーーー!!」」

 

 奈織さんの左手には篤男さんが抱えられ、泡を吹いてくたばっていた。

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