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自販機暮らしのサンピエール(3世)  作者: ブリ大根
ハムハム公国編〜波乱
22/42

ハムゥ〜! その十四!

あらすじ!

ハムハムフードってすごいな!

ハム源とハム平はどうなっちゃうの?!

クマハチ〜!クマハチ〜〜!

ぶつかりあうオーラの発生源へと赴いたサンピエールはヒイバーの前に抽象アートのような物体があることに気づいた、しかもその内側から先ほど感じたオーラの一端を匂わせている。


ヒイバーが扉の中に入ってから時間はそう経っていないにも関わらず二匹の様子、抽象アートのオーラからして既に交戦を終えているようだった。


交戦を終えられるほどの時間はなかったはずなのになぜかと思考を巡らせるサンピエールの耳にヒイバーの声が聞こえた。


ピエコに捧げるソナタ〜情熱のダンゴ仕立て〜行きます!


今日ダンゴ食いたいー特にみたらしー胡麻もいいー

尻尾ビターン

今日ダンゴ食いたいー特にしょうゆー味噌もいいー

尻尾ビビビターン

今日ダンゴ食いたいースキヤキ風味にカツ丼仕立てーあーダンゴ食いたいー

尻尾ビターン


唐突にはじまる歌と踊りに困惑するサンピエールに今度はいつのまにか隣にいた白ハムが話しかけてきた。


「始まったか…今回のピエコ弔いの舞ダンスバトルで一番情感込めて踊れるのはピエコの親であるヒイバー以外にいないだろう。技術は荒削りでも今回のダンスバトルで重要なのはテーマであるピエコへの弔い、その条件でいけば有利なのは間違いない。」


困惑をより深くするサンピエールに構わず話終えた白ハムはじっとヒイバーの踊りを見ている。疑問を挟める様子ではない。


ダンゴうまいーピエコ上手くできたーダンゴ上手くできたーダンゴ食べようピエコー

尻尾ビターン

ピエコー、ピエコー、呼ぶ声にかえる声なくー

尻尾ビターン

……(四分休符)

ピエコはもうーいないー

尻尾ビターン


はじめの遅いテンポは日常の穏やかさの表現、見ていて少し退屈なほどだった踊りがダンゴを作り出してから変わる、不穏な低音とピエコを呼びかけながら忙しなく動くヒイバーは観客にピエコの不吉を予感させた。その後のヒイバーの尾を叩く音の後の一瞬の静寂で引きつけられた後の嘆きのダンスは心をぐっとヒイバーの心情に近づけさせる。


見事な演出と豊かな情感によるダブルパンチは何がなんだか分からないサンピエールにも何がなんだか分からない感動をもたらした。


「ぐぅ、なんて哀れな親子なんだ…不覚にも泣きそうになってしまったではないか。」


事情を知っている風な白ハムはサンピエールよりも感動していた。余韻に浸っている様子の白ハムには先ほどよりも質問しやすい、そう思えたサンピエールは口を開いた。


「ピエコ?」


「ピエコが必要か、と?なるほどな、弔いだけにテーマを絞るか。それも手だな。私もヒイバー同様ピエコへの弔い要素を入れるつもりだ。まぁ精々頑張ってくれ、どちらにせよ優勝賞品の秘文書は私のものだ。」


そう言い捨て歩き出した白ハム。質問の意図を察してもらえずもやもやとした気持ちを募らせるサンピエールだった。サンピエールや踊り終えたヒイバーのいる位置から距離をとり白ハムは宣言する。


ピエコさよならサンバ〜鎮魂と浄土の輪舞曲(リンド)〜行かせてもらう!


さよならのサンマは秋の匂い

脂がうまい肉厚サンマ

揚げたサンマ、塩焼きサンマ、刺身でサンマ

まわるサンマ海から胃へまわりまわる

まわるサンマの先にピエコ、浄土入ってますから!

アミーゴ!フゥフぅ〜冷ませサンマ!鎮まれサンマ!

熱く燃えろピエコの体!爆発させろピエコの体!

サヨナラサンマ〜!


詩のように美しいサンマをしっとりとした音楽が色どり、その後に表現されたさまざまな方法で調理されたサンマ料理もすこぶる美味そうだった。指先の動き一本一本が計算され尽くした舞は華やかさには欠けるが丁寧に磨き上げた銀細工のように上品な輝きがあった。


だがそれだけでは終わらない、サンマがまわりはじめると白ハムもまたまわりだす。ただのターンではない、まるでドリルのようなターンだ。地を削るかのような激しいターンは盛り上がる音楽に合わせ回転数を上げて、竜巻すらをも生み出す。衰えることなくまわる白ハム、そして音楽がフィナーレを迎えようとするそのとき、竜巻を生み出すほどの回転に白ハムの足を地に縛り付ける引力は耐えきれず、呪縛から解き放たれた白ハムは空を回転する。そしてついに迎えた最後のパート、白ハムは空中でトビウオのような勇ましいポーズを決めた。


圧倒的な技術に畏怖さえ抱きながらサンピエールは感動した。相変わらずピエコが誰かは分からなかったがとりあえず感動した、それほどの美が白ハムの踊りにはあったのだ。


「ヒュー!盛り上がってきたぜ!最後はあんたか!もっと会場をヒートアップさせてくれそうだな!」


ヒイバーが踊るように促してくる、ついにサンピエールの番が来てしまった。薄々勘付いていたがなんの準備もなく焦る中で、しかしサンピエールの心は負けたくないと叫んでいた。サンピエールの奥深くに眠っていた踊りたいという欲望は身体中を焼き、焦りとともに心の中に溜まっていく。そしてついに容量を超えた欲望が表に這い出してその衝動にまかせサンピエールはおもいつくままに曲目を叫んだ。


ピエコって誰だ知らないのに踊らされるとかこんなのヤケっぱちじゃないとやってられんわブルース〜!


曲目そのままにサンピエールはヤケっぱちだった。ヤケっぱちのまま無茶苦茶に動きたいように動き、叫びたいときに叫んだ。踊りとしてのも体裁も音楽としての様式も捨ててサンピエールは暴れた。暴れまわって紙だらけの地を何度となく叩き、搔きむしり、雄叫びをあげて、サンピエールは何かに憑かれたかのように暴れて、気づいたときには表彰台の一番上にいた。

次回予告!

日本のサンタさんは冬に来ます!

かえりみろ日頃の行い!

原価0の色料とサンピエールの転職!

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