序章
前日、現場での作業中に足を滑らせ、頭部を強く打ちつけた。医師は「大きなケガではないが、しばらくは安静に」と言っていたが、タクヤにとっては怪我の痛みなど、どうでもよかった。
病室のテレビでは、ローカルニュースが流れている。15年前、青海町で突然姿を消した同級生・カノン。先日、深山で発見された彼女の遺体について、警察は「足を踏み外したことによる事故死の可能性が高い」と発表していた。
だが、タクヤは知っている。15年前のあの雨の日、暗がりの中で起きた出来事を、彼はこの目で見てしまったのだから。見て見ぬふりをして生きるには、あまりにも長すぎる15年だった。
『記憶喪失の探偵って、すごく面白いと思わない? 自分自身のことも分からなくなっているのに、見ず知らずの他人のために事件を解決していくんだよ。意味わかんない』
と笑いながら言う
読書家だったカノンが夢中で話してくれた、一冊のミステリー小説。
頭をぶつけた事故、事故死で片付けられようとしている彼女の死、そして目の前に広がる偽りの空白。
あるアイデアが思い浮かぶ。
考えをめぐらさてる内に、扉がゆっくり開く。
「よかった、大丈夫そうだな」
あまり心配していない表情を浮かべながらそう言った。彼は幼稚園からの幼馴染のユウキ。今でも交流がある友達だ。
「ああ……でも、あんまり気分はよくない」
ユウキは嘘つけ言わんばかりの顔つきで「ふーん」と嘲笑していた。
タクヤは包帯の上からそっと頭に触れ。横になりながら天井えお凝視して考える
緑の風が吹き抜けるこの町で、15年越しの遊びが今、始まる。




