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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第50話 死霊魔導師の失敗。

 村で馬を休ませた後、商隊は何事もなく……順調に進んだ。


 途中、Dランクパーティーの一人が馬車から落ちたくらいだ。


 一緒に乗っていた者たちは、全員が寝ていたため気付くこともなかった。


 護衛中だろ……せめて一人くらいは起きていようよ……。


 それに、ジムが落ちて気絶した男を馬車に戻したから、俺たち以外誰も気付いていないし……。


 騒ぎは野営地に到着する少し前に起こった。


 馬車から落ちた人が意識を取り戻し、骨折の痛みで叫んだからだが……。


 本人にしてみれば、馬車の上で寝ていたはずなのに、起きたら腕が折れていたとか、誰でも混乱するか……。


 悪戯した手前、少し罪悪感もあるが……悪事を働こうとしたのだから諦めてもらおう。


 それより、盗賊の村の動きだが、予想通り俺たちを襲うようだ。


 黒づくめのヤツと、村人を見張るデバンからの念話で、俺たちの三時間ほど後に村を出発したとのこと。


 子供と、村を防衛する最小限の者を残し、総勢五十の者がこちらに向かっているそうだ。


 デバンいわく、女を含め身なりは村人のそれだが、まるで統率された軍隊のようだと。


 間違いなくキンダフィッカ伯爵家の騎士だろう。


 今日の野営地には俺たちが護衛する商隊の他に、馬車が二台と冒険者パーティーが一組。


 一台は商人のようだが、もう一台はおそらく貴族だ。


 下位の貴族で、それも当主や嫡男ではない……三男以下の一行ってところかな。


 貴族にしては者護衛の数が少なすぎる。


 その護衛騎士は、そこそこ立派なテントのまわりで周囲を警戒しているが、四人しかいない。


「貴族のようだな……盗賊共もアレを見て襲撃を取り止めてくれると楽なんだが……」


「ヘルヴィ、でもさー、なんとか伯爵様はお金が欲しいんでしょ? 貴族ならいっぱい持ってると思ってよけいに襲ってきそうじゃない?」


「セレスの言うことにも一理あるな、護衛もあの程度の数だ、盗賊共の数次第だがセレスの言う通りくるだろう」


「盗賊たちは約五十だよ、それも統率の取れた軍隊みたい」


「なんだと?」

「嘘っ! 軍たぃ――むぐぅ」


 叫びそうだったセレスの口を手で塞ぎ、あたりを見渡すが、こちらを誰も見ていない。


「声が大きいよセレス。気をつけてね」


 塞いでいた俺の手を、上から自分の手で押さえて離してくれない。


 すぴすぴと、鼻息が手にあたるが、『このまま話を続けて』と、キラキラした大きな目で催促してくる。


「ほほう、ならば我もこちらの空いている手を借りるとするか」


 ヘルヴィも、俺の手を取り口にあてる。


「えっと、じゃあ話すね、盗賊たちは――」


 妙なことをしているなと、まわりの者からは見えるだろうが、デバンから念話で聞いたことを説明し始める。


 説明が終わると、やっと手を離してくれた。


「ネクロウ、どうするのだ」


「うん、まずはジムはこのままここに残ってもらうんだけど、デバンには先に村に残っている村人を眠らせて王城かな」


「なるほど、こちらに向かっているものはまだ到着まで間があるからな、いいと思うぞ」


「うんうん。さすがネクロウ、完璧な作戦だよ」


「ありがとう。村に百人近くまだ残っているから結構ギリギリかもしれないけどね」


 おそらく残っていたもののほとんどが本当の村人だろう。


 それより……この野営地、レイスだらけだな。


 放っておいてもいいし、盗賊をとらえる時に使役して……あれ?


 んー、なんだろう、違和感が……。


 そう、レイスなんどけど、ちょっとレイスとは違うような……あっ、わかった……魔物じゃないんだ。


『ここのレイス、盗賊に殺された人』


 ジムの念話で繋がった。


 墓地でもない、ただの野営地なのに、相当数のレイスがいること事態おかしなことだ。


『ネクロウ様、助けてあげて』


『助けるって言われても、死霊魔導師じゃ魔物じゃないレイスに何もしてあげられない』


『使役して、盗賊捕縛』


『そうか、今回は討伐じゃなくて捕縛が目的』


『魔物じゃない、精神も大丈夫』


 そうなのか、魔物のレイスを人に取り憑かせると精神に異常が出る。


 それが無いと言うなら、懸念していた後に尋問も出きるということだ。


 それに脅されて参加している本当の村人もいるかもしれない。


 精神異常にならないのなら、これ程確実で楽なことはない。


『みんな、恨み晴らせる』


 そうだ、ここのレイスたちは盗賊に殺られたんだ。


『そうだな……ジム、ここのレイスたちに説明できるかな、それで手伝ってくれるなら、作戦は――』









 嘘だろ……。


「ネクロウ、状況はどうなのだ?」


 ぽいっ、と枝を焚き火に放り込んだヘルヴィが、空になった手で俺の袖をくいくいと引っ張り聞いてくる。


「わたしも聞きたいー、どうせもう終わってると思うけどさー」


 セレス……中々鋭いが、今回は半分失敗だ。


「……盗賊たちはちょっと前に確保済み、あとは王城に送るんだけなんだけど……」


「「なんだけど?」」


「一人、キンダフィッカ伯爵のところからデバンに見張ってもらってた黒づくめのヤツいただろ?」


「確か、あの御方とやらの伝令役だったか」


「そんなのいたっけ?」


「うん。その黒づくめには逃げられたみたい」


「嘘っ、デバンさんが見張ってたのにどうやって……」


「まさか、デバンから逃げ延びるとは……何者だ」


 レイスたちに盗賊の体に取り憑かせ始めた時、取り憑かれた際に、ビクリ、と体が跳ねる。


 たったそれだけのことで異常に気付いたのか、すぐに黒づくめはデバンが見ている前で、パッと消えたそうだ。


 デバンの見立てでは転移魔法。


 一番情報を持っていそうなヤツに逃げられたのは痛い。


 捕まえた奴らだけで黒幕だろう『あの御方』まで繋がればいいんだが……。


 なんともスッキリしない雰囲気のまま、夜警の時間が過ぎていった。

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