幕間 最強オシャレ私服国家・前編
それはいつかの出来事――。
「結構色んなところに行きましたにゃ~」
「ああ、そうだな」
海上都市ノアの部屋の一室で、まったりと時間を過ごしていたノアクルたち一行。
最近は忙しく、こういう時間を取れなかったのでようやく気を抜ける感じだ。
ムルなどは半分眠っているような状態で頷いたりしている。
「色んなところの色んな奴……」
「個性豊かというか、濃い奴らが多かったのぉ」
ノアクルは戦ってきた相手を思い出し、アスピは面白かった相手を浮かべる。
「そうですね~……色んな……方々が――」
ジーニャスは船の上だと天才ゆえに、普段はない記憶力が発揮されてしまう。
瞬間記憶能力のように、実際の姿が明確に見えてくる。
そうしていると、ふと気が付いてしまった。
「あれ? 私たち、服が一着しかありませんにゃ……?」
「何を急に言い出すんだ、お前は」
「い、いや、だって……色んな服がこの世界にはあったじゃないですか。なのに、私たちって一着しか持ってませんよね?」
ジーニャスは一張羅である海賊服のコートを見せつけた。
凝ったデザインではあるし、頑丈に作られているので見た目は綺麗なままだ。
ファッションとしても素晴らしいだろう。
しかし、ジーニャスは年頃の女の子でもある。
「今まで気が付きませんでしたが、航海中はずっとこの服ですにゃ!! レディとしてオシャレをしていなかったですにゃ!?」
「いや、そういうの必要か? 頑丈で機能性があって、ある程度見栄えが良ければいいだろ」
「あ”ぁ”ーっ!! オシャレがしたいですぅに”ゃ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
いきなり床に寝転がって、ジタバタと野生の動きをするジーニャスは謎のヤバさがあった。
「こ、壊れた……ジーニャスが何か壊れた……。そんなに服一種類じゃダメなのか……。俺なんてこれと同じ服を10着は用意してるぞ……」
「え”っ、それもちょっと怖いですにゃ……」
「おい、急に素に戻るな。……まぁ、たしかに船の上だし、できるかぎり要望は答えてやりたいところだな」
「さすがノアクル様!」
「というわけで、ここにいないローズにお任せで良い案を出してもらおう!」
すべてローズに丸投げしたのであった。
***
――数十分後、頭を抱えたローズがやってきた。
「あのですね、殿下。貴方達は暇でも、意外と内政はやることが多いんです。こんなオシャレのためだけに手間をかけるだなんて……かけるだなんて……」
爆発しそうなローズの空気を察し、ノアクルは冷や汗で弁解をし始める。
「い、いや、それは、その……な……!!」
「ナイスアイディアですわー!!」
「は?」
「トップである殿下が、見た目に関する高い意識を持ってくだされば、下の者達も模範としますわ!! それに前々から思っていて。殿下や、ジーニャスさん、ムルさん、アスピさんとか、見栄えが良いのだからもっとオシャレを楽しめると!!」
「お、おう……?」
意外な反応――あのローズが乗り気だ。
もしかしてと思ってしまう。
「ローズ、まさかお前もオシャレをしたいのか?」
「なっ!? べ、別にわたくしは宰相として相応しい衣服さえあれば――」
「いや、お前も見た目良いだろ、可愛いと王都でもよく言われてたし」
「か、かかかかか可愛くなんてないですわ!? 殿下!?」
「まぁ、ローズの性格的にオシャレは興味ないか」
「はぁ!? ありますけどぉ!?」
「なんでそこで怒るんだよ……意味わからん……」
「良いでしょう、この朴念仁殿下に見せてあげますわ!! ねっ、ジーニャスさん!!」
いきなり話を振られたジーニャスは、まさかここまでになるとは思っていなかった。
ただローズの圧に気圧されて、借りてきた仔猫のように返事をするしかなかった。
「にゃ、にゃ~……」
コミカライズでフミキチさんが海軍服コスプレをさせていたのを見て、「あれ? 原作だと別の服着せたことないな……」と思ったので書いてみました。
タイミング的には新作投稿の宣伝にもなるかなーと思ったのですが、かなりギリギリになってしまったので前半だけ……!!
後半のファッション部分をお楽しみに!





