九十話 兵器の正体
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「ノールさん、いつもありがとうございます!」
俺とルーンは、目の前の魔導服の女性、ノールに頭を下げた。
「気にしないで。ちょうど私も来る予定があったから。それじゃあ、またあとで会いましょう」
受付に入ってすぐのところで、ノールは俺達に手を振って別れた。
今俺がいるのは、王都の中央図書館。
王都山頂にある王宮とは、ここをでて五分ほどの距離である。
それ故か、街中では見かけないような豪華な服を着ている者もちょくちょく見かけた。
王宮の貴族なども、ここにやってくるのだろう。
鎧を身に着けたルーンが、図書館を見て呟いた。
「辺境の国家と侮ってましたが、なかなか立派な建物をつくりましたね」
「ああ。エルペンの図書館の、十倍の大きさはあるかな?」
エルペンの図書館とは比べものにならないほど広い。
目に見える一番奥まで、三分ぐらいはかかるだろうか?
見上げれば、遥か高い場所に天窓がある。
建物自体が円筒のような形になっており、複数の階層に壁一面の本が並べられていた。
「柱も大理石なんか使っちゃって。本の量もそうですが、ずいぶんお金をかけてるみたいですね」
ルーンの言葉に、俺は頷く。
これほどの量の蔵書……王国中の本の殆どがここにあるのだろう。
かつての帝国のそれに全く劣らないように見える。
この中から、地下都市に関する本を見つけるのは骨が折れそうだな……
だが、一応細かい案内図も用意されており、ある程度目処はつけられそうだ。
「地下都市に関する蔵書は……最上階か」
俺とルーンはらせん状の階段を上っていく。
ここでは一階層が、一軒家の二倍の高さがある。
つまりは、十階分の高さを上る必要が有るのだ。
俺は途中、はあはあと息を吐きながらも、ようやく最上階へ着いた。
ルーンが俺の背中をさする。
「ルディス君、大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫だ。まあ、ここまで大きいと昇降機が欲しいけどね」
「あれがあれば、ここまですぐですからね。あれを作る技術はないのかもしれませんが」
帝国でこういった巨大な建物には、必ず昇降機というものがあった。
階段を使うよりも早く、楽に魔力で上り下りできる装置だ。
ルーンの言うように、技術もそれを作る材料も王国にはないのかもしれない。
不便だが、王都の建物の密集具合を見るに、高くしていくしかなかったとも思えるが。
「しかし、頂上ともなるとさすがに人も少ないな……」
各階層は広い回廊となっており、読書のための椅子や机などが置かれている。
下の階層までは結構な人がいたが、ここでは数人程しかいない。
息を整えていると、後ろから足音が響いた。
「あら、ルディス。偶然ね」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには長い白銀の髪を伸ばした青いドレスの女性がいた。
ユリアか。
さっき、ここから二階層下で本を読んでいるのが見えたが、ここまで来たようだな。
しかし、偶然……なのかな?
ちょっと目があった気がしたが、すぐに目を逸らされた。
だから、会釈する暇もなかったのだ。
まあ、ともかく挨拶しよう。
「殿下」
俺とルーンはすぐに膝をつこうとする。
が、ユリアは片手を前にだす。
「堅苦しい挨拶はやめて。それよりも、お疲れのようね」
「え、ええ。こんなに高い建物初めてだったので」
「そうね。王国じゃ、ここぐらいしかこんなに高い建物もないし」
「へえ。そうなんですね。とても壮麗な建物でびっくりしましたよ」
「まあ、かのヴィンダーボルトが見栄のためだけに作った建物だけに、豪華さだけは折り紙付きよ。よくもまあ、こんな不便な図書館をつくったと思うけど」
ふっと笑うユリア。
だが、冒険者が初代国王の批判に頷くわけにはいかない。
俺は苦笑いを返すしかできなかった。
「そんな気にしなくても、誰も聞いちゃいないわよ。そんなことより」
ユリアは真面目な顔でさらに続けた。
「頂上は人気のない本ばかりだけど。二人とも何を探しに来たの?」
「ええ。実は地下都市関連の本を探してまして」
「ああ、地下都市ね。私も地下都市関連の本は全部目を通してるから、力になれるわよ。何でも言ってちょうだい」
ユリアは得意げな顔をした。
なんだかんだで、俺達と話したかったのかな……
ただ、それはありがたい。ユリアに聞けば、しらみつぶしに探す手間が省けるだろう。
「本当ですか? 助かります!」
しかし、まさか地下都市の最下層について、また金の鍵に関してのことを詳しく言うわけにはいかない……
発言に気を付けながら、聞くとしよう。
が、その前に聞いておきたいことがあるな……
「そういえば、殿下は地下都市の一番深い所に何があるか知っておられますか?」
ユリアはやはりか、という顔をした。
「あなたも、地下に眠ると言われる兵器に関して調べているの?」
「はい。冒険者が皆、噂していて……」
「なるほどね。王族の中でも、今それを探すのに躍起になってる一派がいる。最近は、冒険者にもそれ関連の調査依頼を多く出してるとは聞いたわ」
「はい。俺も建国神話の本を読んで、ヴィンダーボルト一世がかつて授かったとされる神の力と関連してるのではと思いまして」
ここ王都の建設時にでてきた、ヴェストシュタットの戦いのくだり。
そこで、ヴィンダーボルトは押し寄せる十万の魔物を、神から授かった炎の魔法で倒したという話だ。
それが大陸の勢力図を塗り替えかねないと言われる兵器として、噂になったのではというのが俺の推察だ。
ユリアはうんと頷く。
「あなたもそう思ったのね……神の力で魔物を倒したなんて、有り得ない。きっと、何かからくりがある……それが、王都の地下に兵器があるという話に変わっていった……」
「殿下もそうお思いでしたか」
しかし、兵器か……
俺は最下層から派遣されてきたベルタの話を知っているので、その”兵器”の正体とやらがある程度掴めてしまってる。
ここ王都ヴェストシュタットは、もともとザール山という大火山の上に築かれた……
そして今、ベルタの仲間たちが最下層の火口で、噴火を抑えている……
確定ではないが、ヴィンダーボルトはなんらかの手段を用い、火山の溶岩を使って、魔物たちを倒したのではと俺は推測する。
そして同じようなことを推測していたのは、俺だけではなかった。
「ええ。そして私の予想だけど……その兵器の正体は、この山がかつて大火山と恐れられていたという噂に関連するんじゃないかって」
ユリアもまた、この山の下が火山であると推測していたのであった。
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