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元悪役令嬢と婚約破棄してなぜかヒロインやらされてます。  作者: 上川ななな
勢いだけでこうなったけどあながち悪くもない
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04 母性本能って本当にあるみたい

 私とラファエルはその日の深夜に王都の駅に到着した。

 私の身柄は一応、国の保護下にあるのだけれど、マクシミリアン王子の計らいで、結婚式までラファエルの管理下で自由を許された。

 護衛も本来は付けるべきなのだけど、ラファエルが必要ないの一点張りで頑として断ってしまった。

 まあ、私自身も腕に覚えがあるので、平気といえばそうなんだろうけど、王子が許可を出したということは、ラファエルの護衛としての能力認めたからなのだろう。

 まあ、一応半吸血鬼としての触れ込みもあるし。


 私達は徒歩でラファエルの住まいまで行くことになった。

 話に聞くと、駅からそんなに遠くもないらしい。


 駅から大通りを歩いて、十分もすると通りに面して住宅がひしめき合って立ち並んでいた。彼の家は隣家との間隔がほぼ無いような作りの年季の入った二階建ての邸宅だった。階段を上るとすぐ玄関で、ラファエルが鍵を開けてドアを開けた。


「どうぞ」


 中は入ってすぐ二階へと続く階段、その脇の廊下を抜けた突き当たりがリビングだった。リビングの奥がキッチン。

 ていうか、見事なまでに物がない家だった。まるで生活感がない。


「本当にここに住んでるの?」


 まるで家の内覧に来たような錯覚すら覚える。

 リビングにはソファどころか、椅子一つない。

 キッチンも同様で、調理器具も食器すらまともになかった。


「……図書館を追い出された時に、たまに帰ってきて寝るだけ?」


 どうせ、そんなことだろうと思った。


「明日、色々買い出しに行こう。そうしよう?」


「……分かった。お前の好きにすればいい」


 その日はとっとと寝ることにして、私達は順番にシャワーを浴びた。驚いたことに、二階の寝室のベッドはダブルサイズだった。


「なんでダブルサイズ?」


「広いベッドで一人でゆっくり寝れるから」


 そういえば、こいつは読書と寝ることだけが趣味だった。

 リビングにソファもないし、どうしようかと思っていると、ラファエルは無言でベッドに横になってしまった。


「ちょ、ちょっと!! 私の寝るところは?」


「ここで一緒に寝るしかないだろ?」


 そ、そりゃあそうだけど。

 私は意を決して、隣に潜り込む。

 てっきり襲われるのかと思ったけど、ラファエルが速攻で寝てしまったので、その日は何もないまま朝を迎えた。


 翌日、なかなか起きないラファエルを叩き起こして、私達は街へ買い物へ出掛けた。

 食材も調理器具すらないので、朝食は抜きだ。


 欠伸を噛み殺しながら歩く彼はフラフラだった。

 あれだけ寝てるのに、まだ寝足りないのか。


「ねえ、大丈夫?」


「……………」


 こりゃダメだ!!

 私は仕方なくラファエルの腕を支えるようにして歩く。


 はっ! これはもう腕を組んでいるのか!?


 途端に恥ずかしくなって、私は彼からパッと体を離した。

 私が離れたことで、フラフラしていたラファエルは、まるで切り離されたロケットみたいに道の往来に向かって飛び出す格好になってしまった。


「危ない!!」


 慌てて腕を引いて引き寄せると、抱き付くような格好になってしまった。

 道行く人々が、私達を振り返る。

 ヤバイ!! ジロジロ見られてる!!


「ちょっと!! しっかりして」


 往来は馬車や車が行き交うので、さすがに危ない。

 ちゃんと歩いてくれないと困る。


 ラファエルの顔色は良くない。目の下には相変わらずくっきりクマが出来ている。

 食事もちゃんと取ってないみたいだし、着るものだって殆ど持ってないし、あまりにも自分に無頓着過ぎるだろう。


 何だかほっとけない。

 まるで情でも移ってしまったみたいだ。


 何かまず食べさせるべきだろうか?


「ねえ、何か食べる?」


「………いや」


 いつもこんな調子だから。

 やっぱりちゃんと食べないから、こんななんじゃ?

 顔色も悪いし、凄く痩せてるし。


「こっち来て」


 私はラファエルを強引に引っ張って、ある場所に連れ込んだ。

 ここから近くて、充分な食事を食べれるところといったら、ここしか思い浮かばなくて。


「で、コイツ何なの?」


 アレックスはラファエルの向かい側に座って、仏頂面で眺めている。


「何って、ラファエルだよ」


 ラファエルは出された朝食を黙々と食べている。

 焼いたマフィンに何やら半熟卵やらが乗った何やらお洒落なメニューだ。


「美味しいね、これ」


「エッグベネディクトだよ」


 へぇ、そんな名前なんだ。


「ジーンてやっぱりバカだよね」


 うう、とうとうアレックスにもバカって言われた。

 溜め息をついて、アレックスはそっぽを向いた。

 やっぱり図々しかったかな、大公家に連れ込むだなんて。


「あなたもちゃんと食べて下さいね」


 ユーエンが、お茶のお代わりを持って来てくれて私は恐縮する。


「ごめんね、押しかけちゃって」


「あなたは歓迎しますが、もう一人は……」


 そうだよね〜、本当にごめんなさい。

 でも美味しいご飯と思ったら、あなたしか思い浮かばなかったの!!


「何でウチに連れてくるかなぁ? コイツの顔なんか見たくなかったんだけど?」


「これ美味い。お代わりある?」


 うわ、ここでお代わり言うの? 空気読めないのコイツ?

 ラファエルは散々言われてるのに全く気にしてない。


「私のあげるから、これ食べなさい!!」


 私の分を彼にあげた。呆れて見ている二人に対して、私は笑顔を取り繕う。


「うーん、やっぱりジーンは可愛いな。たとえ作り笑いでも」


「同感です」


 うう、二人には頭が上がらない。

 いつかちゃんとお礼しなきゃな。


「ジーンさ、もうウチに住めば? この際コイツも一緒でいいからさ」


「ええっ!?」


 さすがにそこまで甘えてしまうのは、まずいだろう。


「……それは嫌だ」


 ええええっ!? 何であんたが断るの?

 脱力した私を、ユーエンが宥めるように肩を叩いてくれた。


「ねえ、本当にコイツでいいの?」


「うーん?」


 首を傾げる私に、アレックスは溜め息をついた。

 だんだんアレックスは兄上に似てきたような?

 一方のユーエンは、相変わらずのラファエルにとうとう噛み付いた。


「あなたが彼女の面倒を見ると言ったのでしょう? 話では護衛まで断ったとか。ではもっとちゃんとしてもらわねば困ります」


「……………」


 ユーエンの言うことは尤もだ。


「彼女がどんな思いであなたをここに連れて来たか。よく考えてみたらいかがです?」


 相変わらず容赦ないけど、当のラファエルはどこ吹く風だ。

 あああ、本当にごめんなさい!!


「全然こたえてないよ、コイツ」


「……そのようですね」


 色々思うところはあるけれども、二人が私を心配してくれてるのだけは分かる。

 二人の好意につい甘えてしまったけど、もうここには連れて来ない方がいいかな? そう私が考えていると、


「そいつは大嫌いだけど、ジーンが頼ってくれるのは嬉しい。遠慮しなくていいからさ、いつでも遊びに来てよ」


 帰り際にアレックスはそう言ってくれた。


 私はまだ食べたそうなラファエルを引っ張るようにして、大公家を後にした。

 ラファエルは、心なしか元気になったようだ。


「やっぱり朝御飯はちゃんと食べなきゃダメだよ」


「……そうだな」


 さすがに同意した!!

 やっぱり料理は勉強しなきゃダメかなぁ。

 ラファエルは貴族って訳じゃないし、料理人を雇えるだけの給料なんかないだろうし。


 そういや、こいつお金持ってるのかな?


 一応、私には貯金がある。家に送っていた分とは別に、自分でコツコツと貯めていた分だ。

 聖乙女になってからは、一切の生活費の面倒を見てもらっていたので、貯金に全く手を付けてはいなかった。

 クレジットカードなどはない世界なので、大きい買い物などは小切手を切るのが一般的だった。


 私達は繁華街にある店に向かって、調理器具や食器、家具を最低限買い求めた。配送業者が後ほど家に届けてくれるらしい。

 支払いは驚くことにラファエルが全て持った。


「大丈夫なの?」


「金なら持ってる」

 

 へぇー、まああれだけ物がない生活をしていれば、お金もそこそこ貯まるのかもしれない。王立図書館の司書だって一応公務員だし、給料はそこまで悪くはない筈だ。

 それから私達は、ラファエルの服を買いに店を何軒も回った。

 私の趣味で選んでしまったけど、無頓着な彼は文句も何も言わなかった。

 完全にいつもは仕事の制服を着た切り雀で、普段着らしい普段着をあまり持ってなかったのもある意味凄い。

 それでも城の離れに最初に来ていた時は、わりとまともな格好をしていたのにな。

 話に聞くと、あれは高そうな店でお任せで見繕って貰ったものらしい。どうせそんなことだろうと思った。


 私が世話を焼かないと、何だか彼の身の回りが成り立たない気がしてきた。何これ? 母性本能?


 昼食は外食で簡単に済ませて、会計した時に私は自炊の必要性を感じた。毎食外食していたら、生活費が凄いことになる。

 何だかんだで私は恵まれていたんだ。貧乏だと思いながらも、一応屋敷にはメイドもいたし、料理もまともにしたことはなかった。

 聖殿に入れば、また至れり尽くせりの生活にはなるらしいけど、やっぱりその前にラファエルをどうにかしないといけないだろう。


「……料理のレシピ本でも買おうかな」


「何のレシピが知りたいんだ?」


「何って、色々?」


 並んで歩きながら、私はとりあえず基本の料理を思い浮かべる。面白いことに、この世界の料理は和洋折衷で日本食も割と普通に浸透している。日本という国は、この世界にはない筈なのに。


「作りたい料理を言ってくれれば、作り方のレシピは教えてやれる」


「は?」


 もしかして、料理本のレシピが頭に入ってる?

 そんなものまで読んでるの?


「だったら、あんたが作った方が早くない?」


「その考えはなかった」


「…………」


 私はとりあえず市場に寄って、食材を買って帰ることにした。

いつもありがとうございます。


久々の更新になってしまいました。

実はマクシミリアン王子の話と2話更新してます。割り込みしても更新に載らないんです(涙

しばらくこの2パターンの話を続けていこうかと思います。それにしても話が終わらない!!


各話、もうしばらく続きます。すみません。


各キャラ、エンディングのテイストがバラバラで、ラブコメのパターンが少ない(汗

でも全員ハッピーエンドの予定です。


次回もよろしくお願いします。

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