121話 文化祭初日(後編)
「交代だぞー。」
しばらくすると、マイペース系男子の大森がその取り巻きを率いて教室な入ってきた。入ってきて、いつも通りのマイペース口調でそう言った。
「おぅ。」
「りょっ!」
「りっ!」
「じゃぁ、後は任せたよ。」
これに俺、浩平、圭吾、学はそれぞれ答える。店番も今日は終わり...となれば、後はこの3人とただ文化祭を回るだけ。実に空虚で残念なことだが、沙耶香にも仕事があるというなら、そう割り切ってこいつらと行くぐらいしか俺にはできないのである。
それに明日は確実に彼女と2人きりで回れるのだ。だが、やはりここにも弊害がある、と言うか残念なことも付きまとうだろう。例えば、こいつらとか、こいつらとか、こいつらとか!お母さんとか!お母さんとか!お母さんとか!
(やっぱ、加藤が羨ましい...。)
そこを鑑みても、今頃俺に言わせてみれば学年二位の美少女と楽しくやっているであろう彼が羨ましかった。つい1年半ほど前はリア充に対して嫉妬からくる憎悪しかなかったのに、今となっては嫉妬からくる羨望という、嫉妬らしい結果になっているのだから驚きである。
まぁ、そんなわけで俺たちは次に2階の2-Bへ来た。一応、ここは伊能のクラスで、2年の間では美男美女だらけと噂になっているらしい。
(やっぱ、美男美女だらけだなぁ...。)
それは引くほど、その通りだった。ここだけ空間そのものが俺たちよりはかなり上だという感じである。制服越しからでもパッと見で分かる巨乳さんも結構、多い。
出し物は美男美女クラスらしく「Ladies and Gentlemen 」と題した執事&メイド喫茶みたいなところであった。男子はタキシードを着ているし、女子はメイド服を着ている。
席に座ると1人の美少女が
「ご注文はいかがなさいますか、ご主人様?」
と丁寧な言葉で聞いてくる。俺は無難にオムライスを注文しておいた。
浩平にはまた別の美少女が歩み寄って
「本日はいかなさいますか、ご主人様?」
と聞いていて、彼はかなり興奮した様子で
「はっはー、じゃぁ、オムライスを貰おうかなぁっ!」
と言った。
「か、かしこまりました。」
そう言って去っていくメイドさんの顔は完全にドン引きの顔である。
(まぁ、そうなるわな...。変態連れてきて悪かったな...。)
俺は正直、そんな謝罪の思いしか湧かなかった。
が、圭吾と学の言葉を聞くと浩平なわて可愛いものだと思うのであった。
なんと、圭吾はメイドの質問に対して、
「じゃぁ、ご注文は君で。」
とドヤ顔で気持ち悪い言葉を発し、学はというと、
「僕的にはJS、JCぐらいが一番良いんだけど、JKも年下ならギリ守備範囲だよ。オムライスで。」
とこっちはこっちでロリコン発言をしと飛んでもない返しが続いたのである。もちろん、メイドさんは思わず人前じゃやっちゃいけない顔になる。
(ホ、ホントにごめん...!変態連れてきて!)
俺は本気で謝りたい気持ちに至った。
そして、そんな彼らに天罰が下る。
「失礼ですが、お客様...。メニュー左下にあります通り、店内でメイドにセクハラ発言をされた方にはメニュー表で頭部をひっぱたかせていただく、というのが当店の決まりとなっております。どうか、ご了承ください。」
横から突然、現れた美男2人はそう口を揃えて、しかし言い終わる前にそのメニュー表で学、圭吾の頭をひっぱたたいた。
「う、内の変態がホントにすみません。」
俺はペコリと会釈する。これには流石紳士、
「いえいえ、ごゆっくりおくつろぎください。」
と会釈で返して帰っていった。
「美味しくな~れ♥️美味しくな~れ♥️萌え萌えキュン♥️」
その後、出てきたオムライスにはメイド喫茶恒例の言葉とともにケチャップが注がれた。オムライス自体は市販らしいが
「う、うめぇ...。」
俺と浩平は素直にそう言葉を揃えた。
(正直、これ仕上げに「愛」を注いだプラシーボ効果ってあるよな。)
同時に俺はそう思った。
一方、圭吾と学も「萌え萌えキュン」サービスはされたようで、
「うまい。」
「おいしい...。」
と声を揃えた。ただし、俺たちには「Love」と書かれていたものが、あちらでは「H」である。これに対して、学は
「水素の元素記号かな...?」
と現実逃避した。
そして、メイド喫茶を出た後は4階1-A浜崎のクラスでチーム対抗型ミニゲームをやって俺たちが勝利を納め、2階化学教室では有志の科学展示会でプロジェクションマッピング地球儀を見、紐の長さや球の大きさなど様々なニュートンのゆりかごも比較しながら見た。
これを最後にこの日の文化祭回りは終わりとなり、俺たちは各自で下校した。内のクラスは本と漫画の豊富さが好評でスベらず食べ物類は完売したようだ。売上の方はクラス全員に分配された。




