↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/4

10秒で乗り換える悪役令嬢

「エレナ・フォン・ローゼリア! 貴様のような陰湿な嫌がらせをする女との婚約は、本日限りで破棄させて貰う!」



 王立学園の卒業パーティー。

 華やかな大食堂の中央で、第一王子ミゼルが叫んだ。


 その傍らには、しおらしい態度で怯えるフリをしながら、口元に隠しきれない笑みを浮かべる男爵令嬢ローズが寄り添っている。


 周囲の貴族達がざわめき、哀れみと好奇の視線が一斉にエレナへと注がれる。


「はい、承知いたしますわ」


「……は?」

 拍子抜けしたようなミゼル王子の声。

もっと取り乱し、泣き叫んで縋り付いてくると思っていたのだろう。


 私は殿下から視線を外し、回れ右をした。

 そして、人集りを割ってまっすぐ10歩。


 そこに立っている、親善大使として今夜のパーティーに列席していた人物の前でピタリと足を止める。


 隣国の皇太子、ユリウス・ヴァルハイト殿下。

眩しいほどの金髪に、吸い込まれそうな美しい瞳。


 智勇兼備と名高い彼は、突然目の前に現れた私に驚きと緊張の入り混じった様子で、少しだけ目を泳がせた。


 私はドレスの裾を少しだけ持ち上げ、心からの笑みを向けた。

「ユリウス様……ずっと昔から、貴方をお慕いしておりました。もしよろしければ、私と付き合っていただけませんか?」


 ……会場にいた全員が息を呑んだ。

婚約破棄されたばかりの令嬢が、その足で隣国の皇太子に愛の告白をしたのだ。


「え……あ、え……っ!?」


 ユリウス殿下の顔が、みるみる赤くなっていく。

普段の冷静な皇太子からは、想像もつかない姿だった。


 彼は天井を少し見上げた後、私の両手を握りしめる。

「よ、喜んで!! ……というか、私から申し込みに行きたかった! ずっと……ずっと君が好きだった!!」


「まあ……! ありがとうございます、ユリウス様」


「エレナ……っ!」


 婚約破棄から、わずか数十秒。

 見事なスピード感でカップルが成立。



「ん〜〜〜〜〜っっっ!?!?!」

 背後から、血の気が引いたような、あるいは怒りで頭のネジが弾け飛んだような声が聞こえた。


 振り返ると、顔を真っ赤にしてブルブルと震えるミゼル王子が、怒脈を浮かべて指をさしていた。


「な、ななな何なんだその展開は!? 認めん!認めんぞっ! 誰もそんな事やれとは言っておらん!!」


「……何を仰っているのですか。私は貴方のご希望通り、婚約破棄を受け入れただけですが?」


「黙れ、撤回だ! 今さっきの『婚約破棄』は撤回する!! 婚約破棄を破棄するっ、分かったな!!」



 自分から捨てたはずの女が、自分以上の男にあっさり拾われて愛されている。


 その事実がプライドを激しく打ち砕いたらしい。

愚かな元婚約者は、あまりに身勝手な叫び声を響かせるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。