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後編

 休んでしまった体育祭の放課後。

 真紀ちゃんたちが、お見舞いに寄ってくれた。

 ジャージ姿の彼女たちは、後片付けでくたびれたんだろう、部屋に入るやいなやベッタリと床に座り込んだ。パタパタ、と赤組のうちわで胸元を扇ぎながら、真紀ちゃんは目を丸くした。


 「まだしんどそうだね。……っていうか、風邪ってホントだったんだ。後であいつにメールしとかなきゃ」

 「へ? なにが?」


 よろよろとベッドの上で体を起こした私に手を貸し、すかさず朋絵ちゃんが近くにあったクッションを背中に当ててくれた。野球部でいつもお世話をしているからか、こういう時の朋絵ちゃんは本当に頼りになる。コンビニで買ってきてくれたらしいイオン飲料で唇を湿らせ、私はふうと息を吐いた。二人に風邪をうつすといけないので、枕元に置いてあったマスクをつけて、窓を指さした。


 「ごめん、暑いでしょ。窓開けていいよ」

 「でも美弥が寒いといけないし」

 「いいの、換気したかったから」


 そんなやり取りを交わしつつ、部屋の二つの窓を網戸にしてもらう。

 夕方の涼しい風が、汗ばんだ肌にちょうど良かった。


 「いや、今日さー。すっごい寺島が苛ついてて」

 「あ、やっぱり? 私も思ってた。橋本さん達まで見事に追っ払われてて、ざまあと思ったけどね!」


 実行委員として最後まで彼女達に振り回されたらしい朋ちゃんは、カラカラと笑っていたけど、真紀ちゃんは心配そうに私を見つめた。


 「……なんか、あった? 美弥」

 「えっと。……私が調子に乗ってたんだよね」

 「は?」


 真紀ちゃんと朋ちゃんが目を見開いて、おんなじ表情でこちらを見つめてきた。

 私はペットボトルを抱き抱えるようにしながら、一部始終を打ち明けた。

 皓稀くんを好きだったことまで、全部。


 「そっかー。うーん。見事にすれ違ってるというか何というか」


 真紀ちゃんは謎めいた台詞をつぶやいたきり、考え込むように首を捻っている。

 朋ちゃんは顔を顰めて「田村くんに賛成! 寺島皓稀だよ? ねえ、あの女ったらしなチャラ男だよ? 美弥、気をしっかり持ってよ!!」とプリプリ怒っていた。

 その言い方につい笑ってしまった。

 『女ったらしのチャラ男』って言葉が、私の知ってる皓稀くんと全然結びつかない。

 

 笑いながらも、胸が痛かった。

 自分で思ってた以上に、昨日のやり取りにショックを受けてたんだな、って改めて気が付く。

 皓稀くんの名前を耳にするだけで、こんなに胸がじくじく痛むなんて――。


 そんな私の傷に塩を塗り込むように、真紀ちゃんは皓稀くんの今日の活躍を語ってくれた。


 「リレーのアンカーだったんだけど、ぶっちぎりでさあ。まあ、キャアキャア女子が煩いのなんのって! 精神状態悪くても、やることはやるってとこ、私は見直したけどなあ」

 「陸上部いんのに、何差し置いて出てんの? って私は思ったけどね。寺島だけじゃなくて、井上も!」

 「えー、足早い子が出る方がいいじゃん。おかげで、優勝は赤組だったし」

 「あれは、美弥の立て看が応援部門で一位取ったからでしょ!」


 ぎゃあぎゃあ言い合ってる二人を見てると、気が紛れて楽だった。悪化するといけないから、と早々に立ち去ってしまった真紀ちゃんたちをベッドの上で見送り、私はもう一度お布団の中にもぐり込んだ。


 リレー、見たかったな。

 走ってる皓稀くんをまぶたに焼き付けて、描いてみたかったな。


 未練がましい自分に、また涙が出た。




 薬を飲んでひと眠りして、夜には熱も下がってきた。

 喉、渇いた。

 一日中横になっていたせいか、くらくらする頭を抱えてベッドから足を下ろす。

 ふと机の上に置きっぱなしになっているスマホを見てみると、お知らせランプが点滅してた。


 メール?

 何の気なしに開いてみて、件名に目が釘付けになる。


 【件名:コウキです】


 目の錯覚かと疑って、思わず二度見してしまった。

 慌てて画面を触って、本文を開く。


 【本文:いきなりメールすまん。風邪引いたって? 大丈夫か? 体育祭お前の作った看板一位なったぞ。流石画家の卵】


 画家の卵、という恐れ多い褒め言葉に頬が熱くなる。そんな大層なものじゃないのに、と思いながら、何度もメールを読み返した。

 立て看の話は、真紀ちゃんたちから聞いて知ってたけど、皓稀くんも気にかけてくれてたんだと思うと、飛び上がりたいほど嬉しかった。


 返信、しなきゃだよね。

 男の子に事務的な用事以外でメールするのって初めてだから、なんて打てば不自然じゃないのか分からない。


 【件名:桜井です 本文:こんばんは。メール、ひょっとして真紀ちゃんから聞いた? 今日お見舞いに来てくれたんだけど、様子が変だったから。熱が出ちゃって、でももう今はだいぶいいみたい。メールありがとう。コウキくんもリレーで一位になったみたいだね。見たかったな】


 このくらいなら、大丈夫かな。

 橋本さんのことを好きな皓稀くんだけど、私のことはまだ友達くらいには思ってくれてるのかもしれない。嫌われたんじゃない。それだけで涙が出そうになるくらい安心した。


 【無理すんなよ。メアドは晴人から教えてもらった。あいつらなんか企んでたのかな。明日問い詰めるわ。リレー、俺も桜井に見て欲しかったわ。まぁ、俺の前の晴人のトコですでにトップだったけどな(笑)】



 送ってすぐに返信が来た。

 スマホが震える音に、私の心も震える。

 どうしよう、嬉しい。

 

 その時ふと、皓稀くんの腕にしがみついてた橋本さんの顔が浮かんできた。

 こうやってメールしてること、橋本さんは知ってるのかな。

 トキメキとは違う心音の高鳴りに、手のひらが汗ばんだ。


 【私とメールしてて、大丈夫?】


 思い切って、そう送ってみる。

 返信までに、少し間があった。

 いつも女の子たちに騒がれている皓稀くんだけど、いい加減に恋人を扱う人であって欲しくない、と思った。田村くんや朋絵ちゃんが噂するような、そんな人じゃない、よね?

 

 もし私が橋本さんだったら、きっとこんな他愛もないメールでも嫌だから。他の女の子を気にかける皓稀くんに、きっと、苦しくなっちゃうから。


 【どういう意味?】



 返信はたった一行だった。

 怒らせてしまったのかな、と不安になる。

 でも、ここまできたら後には引けない。


 【橋本さんにヤキモチ焼かれちゃうよ?】



 冗談めかした絵文字をつけて、えいっと送信した。

 どんな返信が来ても、平気なように深呼吸を繰り返す。


 【電話で話したい。番号教えて】


 

 で、電話で!?

 私はいったんスマホを置いて、机の上に母さんが置いといてくれたお茶で喉を潤した。ついでに、タオルで汗を拭いて、新しいパジャマに着替える。

 誰も見てないのに前髪を手でまっすぐに直し、了承のメールを送った。



 すごく長い時間な気がしたけど、たぶん時間にすると5秒もなかったと思う。

 スマホが震えるのと同時に表示された通話ボタンを押した。


 「……もしもし」

 「あ、桜井?」


 低音の優しい声がスマホ越しに聞こえてくる。


 「メール、ありがとう」


 とりあえず、最初のメールに対してのお礼を述べてみる。


 「御免な、風邪引いてるのに」


 電話越しだからか、いつもよりハッキリと皓稀くんの声が聞こえた。まるで耳元で囁かれているみたいで、急に恥ずかしくなる。



 「とりあえず、千尋の言ってたことは気にすんな。あれ、嘘だから」

 「……うそ?」

 「付き合ってもねえし、俺があいつのこと好きとか、そんなことも全部千尋が勝手に言ってたことだから」


 そうだったのか。

 私は予想外の皓稀くんの言葉に、呆然としてしまった。

 その後、なぜか分からないけど哀しくなった。

 どうしてそんな嘘をついたのか、橋本さんの気持ちが分かる気がして、思わず私は言ってしまった。


 「……よくないと思う」

 「え?」

 「嘘ついた橋本さんも悪いけど、そうさせた皓稀くんも、よくないよ」


 私は唇を噛みしめた。

 言いがかりかもしれない。

 でも、ここをはっきりさせないと友達にも戻れない気がした。


 「桜井……」


 途方に暮れたような彼の声に胸が締め付けられる。

 私が真面目すぎるんだよね。

 潔癖すぎると思われても、でもどうしても嫌だった。


 「なんつーか……うん、そうだよな。千尋がどこまで本気で俺を好きだと言ってるのか判らないけど、違うなら違うって、俺がはっきりしないのが一番悪ぃな、たしかに」

 「好きって事、簡単には言えない、と思う。思いが強ければ、もっと」

 「そうだよな。明日千尋には謝っとくわ」

 「わ、私の方こそ、偉そうにごめんね。折角電話してもらったのに」


 素直にそう言ってくれた皓稀くんに、私はぶんぶんと首を振った。

 受話器越しに、クスと笑い声がする。


 「強気なのか、弱気なのか、わっかんねー奴」

 「……弱気でお願いします」


 皓稀くんはははっと笑った。

 私もつられて笑って、笑ったらちょっと咳が出た。


 「悪い。もう切るわ。また、学校でな」

 「うん、おやすみなさい」


 彼のおやすみ、という優しい声が、いつまでも耳に残った。

 ボスンとベッドに倒れ込み、両手で頬を押さえる。

 真っ赤になった頬は、熱のせいだけじゃない気がした。





 次の日、まだ体育祭の余韻が残ってるクラスでひっそりと一日を過ごした。

 橋本さんに休んだことで何か言われるかな、とびくびくしたけど、彼女は私の方を全く見ようとしなかった。皓稀くんはお休みみたい。休み時間、ぽっかりと空いた席を見るともはなしに見ていると、井上くんに話しかけられた。


 「美祢ちゃん、おっす」


 み、美祢ちゃん!?

 私は馬鹿みたいに動転して、机の上に出していた辞書を落としてしまった。


 「ご、ごめん!」

 「なんで謝んの。つか、ビビり過ぎでしょ」


 俺、そんな怖くないよー、と井上くんは笑った。

 皓稀くんとはまた違うタイプのお洒落な子だ。

 今まで遠目で見てたからよく分からなかっただけで、モテるのも分かる、と納得してしまう柔らかな物腰だった。


 「コウキ、たぶん放課後になったら来ると思うから、んな不安そうな顔しないでやって?」

 「え? あ、はい」


 何と答えていいか分からず、ただ首を縦に振る。

 そこに真紀ちゃんがやってきて、井上くんに顔を顰めた。


 「なに美弥にちょっかい出してんの」

 「は? どこをどうやったらそう見えんの?」

 「本当に節操なしだね、あんた。美弥は、寺島の」

 「はい、ストップー!!」


 井上くんに口をふさがれ、真紀ちゃんはずるずると廊下へと拉致されていった。

 な、なんだったんだろ。

 それから放課後まで、私は物言いたげな真紀ちゃんと不機嫌さを隠そうともしない朋ちゃんの顔色を窺いながら過ごす羽目になった。

 なんで寄りにもよってアイツなわけ? と朋ちゃんはぶつぶつボヤキながら、ノートにシャーペンを突き刺していた。




 「あれ、今日は先生お休み?」

 「うん。昨日、職員リレーで全力疾走したら、筋肉痛で無理だって。さっさと帰っていったよ」


 放課後、部室に顔を出すと、田村くんが一人でスケッチブックに向かっていた。

 中央に置いてある、作り物の果物かごをスケッチしているらしい。

 静物をあらゆる角度から正確にスケッチするのって、すごく大事な練習なんだよね。


 「私も一緒にやってもいい?」

 「どうぞ」


 中央の丸いテーブルを挟んで、向かいに座って私も鉛筆を握った。

 紙をすべる鉛筆の音だけが、静かな美術室に響く。


 「昨日、休んだのって、アイツのせい?」

 「……え?」


 しばらく進んだところで、田村くんが手をとめ私に聞いてきた。

 アイツ、というのが皓稀くんを指してることに気づいて、ううん、と否定する。


 「熱が出て、休んだの。母さんには『いい年してずる休みじゃないでしょうね!』って疑われちゃったんだよ。ひどくない?」


 運動が不得意な私のことを知ってる田村くんなら笑ってくれると思ったのに、彼は俯いたままだった。スケッチブックを指でなぞりながら、田村くんは呟いた。


 「嫌だったら、桜井からあいつにちゃんと伝えた方がいいよ。変にかきまわされるの、困るだろ」

 「うん。でも、好きなんだ」


 気が付いたら、言葉になっていた。

 田村くんは顔を上げびっくりしたような表情を浮かべた。


 「……桜井は人がいいから、寺島にいいようにされてるのかと思ってた」

 「田村くんはきっと心配して、色々忠告してくれてるんだろうなあって思ってたよ」

 「でも、まあ。余計なおせっかいだったみたいだな」


 田村くんは、恥ずかしそうに眼鏡のつるを触って押し上げた。


 美術部の三年は、私と田村くんだけ。

 お互い自分の絵に夢中になってて、個人的な話とかあんまりしたことないんだけど、やっぱりそれでも私は彼をともに夢を追う「仲間」だと思ってきた。田村くんも彼なりに私を大事に思っててくれたのが分かって、胸が暖かくなった。


 「それ、あいつにはもう言ったの?」

 「えっと……それは、まだ」

 「早く言ってやれば」


 田村くんは、何故か廊下側のすり板ガラスの窓に視線をやり、肩をすくめた。

 それから無言で荷物を片づけ、さっさと部室から出ていこうとする。


 「え? もう帰るの?」

 「今日は家でやる」


 田村くんが扉を引くと、そこには皓稀くんが立っていた。


 「悪いな」

 「いや、この間、俺も言い過ぎたから」


 田村くんは皓稀くんと何か一言二言話し、そのまま振り返らずに行ってしまった。


 「今、平気?」

 「え……ああ、うん。大丈夫」


 慌てて立ち上がろうとすると、彼は「いいよ、そのままで」と言ってくれた。

 そして、田村くんが座ってた椅子に腰を下ろし、珍しそうに部室を眺め回した。


 「美術室の隣って、こうなってたんだな」

 「うん。殺風景でしょ。絵具の匂いとか溶具材の匂いとかスゴイし」


 何か言わなくちゃと焦って、一生懸命言葉を探す私を見て、皓稀くんはフッと笑った。それから意を決したように、拳をぎゅっと握って。


 「ずっと言いたかったっちゃけど、俺、桜井の絵、好きやけん……」

 「ちゃ……? え……?」


 聞き慣れない言葉より先に、『好き』という言葉が耳に飛び込んできた。

 耳まで赤く染めた皓稀くんは、まっすぐ私を見つめていた。

 一生懸命な表情に、胸がきゅっと苦しくなる。


 「あ、いや、その、俺に無い、夢真っ直ぐでキラキラしているーー美祢の絵が好きだっつー事、なんだけどさ。……あーマジ最悪、ぐだぐだじゃん」 

 「そんなことない!」


 目元を大きな手で覆ってしまった皓稀くんに、私は慌てて反論した。

 きっと私も真っ赤な顔になっちゃってると思う。

 でも、まっすぐに気持ちを伝えてくれた皓稀くんに、私も勇気を出さなきゃ! って思えた。


 「勉強もスポーツも出来て、友達も多くって、カッコよくて……私なんかよりうんとキラキラ輝いてるのが、皓稀くんだよ」

 「それは買い被りだろ。俺が持っているものなんかなんもねぇし」


 苦笑した彼に私は何とか分かってもらおうと必死になった。


 「あるよ。……あの絵。賞を取った絵、覚えてる?」


 私の憧れをいっぱいに詰め込んで描いた絵。

 満開の桜の下、自転車を押して歩く男女の絵。


 「覚えてる」

 「……あの絵、皓稀くんをイメージして描いたんだよ」

 「……え?」


 訳が分からない、という表情を浮かべて、皓稀くんは私を凝視した。

 引かれちゃうかな。

 話し始めたことを一瞬後悔しそうになったけど、そんなことで私をバカにするような人じゃないって今は分かってる。

 私は、思い切って今までのことを打ち明けた。



 「一年の時、屋上で私皓稀くんに助けてもらったんだよ」

 「屋上?」

 「一年の時、友達も居なくて屋上でお弁当を食べてたの、私。それで、その日屋上に行ったら、同じクラスの女子グループが居て」


 彼はようやく思い当った、というように目を丸くした。

 私はスカートを握りしめて、なけなしの勇気をかき集めた。


 「皓稀くんが助けてくれたんだよ。些細な事かもしれないけれど、私は救われたんだよ。皓稀くんはキラキラしたもの、持ってるよ。だから、あの絵。あんな風になれたら良いなって。そう思って。その」


 ああ、私、何言ってるんだろ。

 どんどん声が小さくなっていく。


 皓稀くんは、そんな私を優しい眼差しで見ていてくれた。

 ゆっくりでいいよ。

 そんな風に励まされてる気がして、私は気持ちが楽になった。


 「うまく言えないけど、私、ずっと皓稀くんのこと憧れてたよ」


 言った。

 言ってしまった。

 恐る恐る彼を見上げると、晴れ晴れとした顔で嬉しそうに笑っていた。


 「俺ら、すれ違いって奴かな? これって」


 お互いに憧れてたのに、全然それが伝わってなかった。

 お見舞いに来てくれた時の真紀ちゃんの台詞が、耳に蘇ってくる。


 「そうなのかも。真紀ちゃんも同じようなこと、言ってた」


 皓稀くんと二人で顔を見合わせて笑うと、心が羽みたいに軽くなった。

 しばらくしてから、彼がぽつり、と口を開く。


 「なあ、美弥。俺の噂だけど、さ」


 美弥、と呼び捨てにされたことで、体温が急上昇した気がした。

 そういえば、さっきのと合わせて二回目かも……。

 

 ええ、なにこれ、すごく恥ずかしい!


 「えっ、なに?」


 はっきり言って、後半部分は聞き取れてなかった。

 美弥、という皓稀くんの甘い声が、脳内でエンドレスリピートされている。


 「俺が恋していたのは、美祢、お前だ」


 ぼーっとしていた私に、さらに皓稀くんは追い打ちをかけてきた。

 

 そういえば、橋本さんが言ってたな。

 皓稀くんに好きな人がいるっていう噂があって……それで。えっと、今、びっくりするようなこと言われた気がする。


 「……聞こえた?」


 初めて見る皓稀くんの恥ずかしそうな顔が可愛すぎて、不安そうな掠れた低い声がカッコ良すぎて、私はただ頷くことしか出来なかった。

 頭に浮かんだのは、一緒に見たシャガールの「誕生日」。

 私もこのままフワフワ浮かんでしまいそうだな、と思った。





後日、番外編(晴人くんと真紀ちゃん)のお話を予定してますが、いつの投稿になるか分からないので、一旦ここで完結させて頂きます。

またお会いできますように。

最後までお付き合い、ありがとうございました!

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