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「あんたさ、最近まで冬の国に居たらしいね。あの時、冬の国が壊滅したとき、あんた何処で何してたの?」
半田刀寿は黙って棘を見つめる。焦りも諦めも何もない表情で彼は愛刀である鳴日雀を鞘に収め、ようやっと口を開いた。
「それは俺の口からは答えられない。お前が俺に何か大きな事を隠しているように。」
「誤魔化さないで。夢幻が撤退するような怪物がアソコには居て、あんたもそこに居たはず。本当に死んでないって言うなら何が起きたのか教えて。」
「とある人物に出会った。それ以上は話せない。それ程気になるのならその眼を使えばいい。」
間髪入れず淡白に刀寿は質問に答える。そして話を切り上げるかのように再度刀身を抜いた。それに並行して棘は真実の神トゥラーの眼を開眼させる。物や者の真実を見通す力によって彼女が知りえた真実は、何もなかった。
「やはり何も見通せないか。」
初めての事態に隠し切れなかった動揺がいとも容易く看破される。最早今の半田棘の思考はそれまで脳裏に過り続けていた過去ではなく、刀寿が何を知っているのか、何故神の眼が通有しないのか、それだけに向いていた。
「棘、お前には役割がある。俺にはそれが何かわからないがお前なら分かるはずだ。その眼を用いずとも、彼女の言ったことが真であるならばお前にならな。」
「私の役割…」
勿論棘にはその心当たりがある。真実の神の眼により半田棘はすべての真実を見通す。それがこの世界そのものであってもそれは同様であり故に彼女は今自身が存在する世界に並行する存在を知覚し、したがって彼女は如何なる時間軸に於いても如何なる世界線に於いても同一の存在となる。無則真名によって超越者と名付けられた彼らには、世界の均衡を保つ役割と、それを意図的に崩す役割が与えられている。
「只、今のお前ではその役割を正しく果たせないだろう。だから俺が世界を傾かせてやる。」
数刻の後、これより遠い遠い夏の国と春の国の境目で春の国王国騎士団の一人神雷が、続いて先ほどまで兄妹水入らずの会話をしていた半田刀寿が死亡した。彼らがその異常に気づいたのは春夏戦争も終盤、世界がもし何かしらのケーブルにつながった電化製品なのであればそれが切断されたかのように、先ず音が消えた。続いて色が消え、個が消えた。インテグラルで同じ数値間を統合させたような矛盾。無がそこには有った。




