No.31、詫びれども 傾くこの身の 錆なれば
名前をつける時名指しを考えてから名前をつけるのですが、
今回最後の方に出てくる新規キャラは多分…記憶の限り唯一名前を先につけたキャラです。
あと期末終わったので少しだけ投稿頻度が上がります。
並行で短編も書いてるので定かではないですが。
「それで、これからどうするんですか?鈴音さんの腕輪と刀の問題。」
無則真名を観測できなくなってから10分後、
私と流蓮は今後の動向について話していた。
現在この腕輪のせいで魔法も魔術も使えず、
あろうことか刀も金も住処も無い。
これでは、流蓮の仲間の敵討ちどころではないのだ。
「取り敢えず、冬の国で鍛冶屋とギルドを探そう。」
気がかりなのは、凜の世界で発生した延々雪林の異常気象。
あれが、もし本当に魔族によるものであるならば、
それどころか、魔力の残滓を見せていないため
存在しているだけで気候を変えるとすれば、
神の領域に達している。
とはいえ、動きが無いのならば放置するしかない。
気にはなりつつも、私たちは冬の国に入国した。
外国に行くのは初めてだったが、夏の国防衛団の一員である事を証明できれば、なんてこと無く入国ができた。
冬の国といえば、たしか貿易の国。
観光資源は無いため外国の人は殆ど訪れないらしい。
海沿いにはコンビナートが形成されており、
オイルの匂いがあちこちに充満し
年間平均気温が5℃を下回る地域と同緯度とは思えない程、
辺りは熱気で充満していた。
その光景は貿易の国、と呼ぶより工業の国と呼称するのが正しいと感じる程、夏の国とは違った発展方法をしていた。
工業地区のため全体では定かではないが、
見た感じ人口や家が少なく感じる。
その分夏の国では数の少ない防具や雑貨等、
自国の商品は勿論、輸入品を扱っているのを多く見かける。
最初に冬の国に来たのは正解だった。
その店や工房の並ぶ中、一際小さな店があった。
【刀】とだけ書かれたシンプルな看板を引っ提げた
小屋のような建物だった。
金は無いが、見るだけ見ていきたいという気持ちが競り勝ち、私はその店に入ることにした。
店内は薄暗く、埃が日差しによって光っており、
外観からわかってはいたが、本当に狭かった。
鍛冶屋だとは到底思えない。
そもそも打つ場所が無かったし、店内には一本も刀がない。
「来。用件、迅速。」
フードを深く被った男が話しかけてきた。
おそらく彼がこの店の店主だろう。
何やら特徴的な話し方が気になる。
「刀を見に来たんですが、どうやら揃っていないみたいでしたので、少し時間を空けてからまた来させていただきます。」
立ち去ろうとする私を男が呼び止めた。
「刀、有。」
そう言うと、男の右手には確かに刀が一本握られていた。
「不満。之。」
次は左手に刀を握っている。
どこから取り出したんだ?
亜空は春間家の特有である時空魔法だ。
アイシスさん以外が使う所をみたことがない。
「否…我、其之望、不知。」
男は困ったような顔で、こちらの顔をじっと見ている。
「流蓮、我知得。然、貴名、我不知。」
なんだ?名前を聞かれたのか?
「えっと、凜です。」
男は黙ってゆっくり下を向き、またこちらへ向き直った。
「我想、貴言葉、虚言。故、我欲、真言。」
何故かはわからないが、この人はこちらの嘘を見抜けるようだった。
鑑定眼の類だろうか。
観念して最悪この人だけなら止められると判断し、
私は自分の名を明かすことにした。
「鈴音です。」
「鈴音。不有敬、我名、刀寿。」
「それが名前ですか?」
「是。」
刀寿はまた黙ってしまった。
観察するような其の目はどこかで見たことがある。
そんな気がした。
「お前は、妹に…似ている。」
「えっ!?あぁそう…ですか。」
普通に喋れるんだ…
「目じゃない。顔も違う。声も、何もかもが違う。
種族も…」
種族。私たちの正体がバレているのか、
それとも妹が魔族に成ったのか。
「だが、気に入った。これを持ってけ。」
刀寿は再び手に出現した二本の刀をこちらに差し出した。
「金、不要。」
「ありがとうございます?」
なんとも掴めない人だ。
店を出て貰った刀を少し抜くと、
刀身に其々【白羽鳥】と【愚憎】と書かれていた。
意外と遊び心がある人なのかもしれない。
私は白羽鳥を流蓮に渡し、ギルドを探すことにした。
大凡2km歩くと少しずつ家屋が増えて来ていた。
工業地区で住宅街を囲むように出来ているらしい。
外に出るのは一般人では無く、商人や他国にも支店を構える職人くらいで、
もしかしたら外から人が入るのを阻止するためなのかもしれない。
春間輪回に言い渡された四季国の調査。
彼女は、冬の国に興味を持っているのだろうか。
途中何かの演説…と言うよりは抗議している人が居たが、
呂律が回っていなく、内容を聞き取ることはできなかった。
ギルドに着いたのは、その演説者からまた3km程度歩いた所でだった。
夏の国と同様、城と合併している。
中の構造も近く、私たちは受付に向かおうとしていた。
向かおうとして、ある男に呼び止められた。
「止まれ。」
振り返るとそこには、赤い髪をキレイに後ろでまとめた、若干和を感じるようなデザインのスーツに身を包んだ男性が、私たちを睨んで腰に携えた刀の柄を握ろうとしている。
「お前たちから魔族の気配を感じる。名乗れ、そして目的を言え。」
男は高圧的にこちらへ語りかける。
ここは下手に抵抗しない方が良い。
流蓮もそう思っているようで、特に何かアクションを取ろうとはしていなかった。
「私は凜。こっちの娘は流蓮です。ここへは仕事を探しに来ました。」
さっきの刀寿の件もある。
この嘘が通じるかどうかで、今後の私たちの動向が変わってしまう。
「そうか、凜。剣を抜け。」
男は尚高圧的に言い続ける。
「刀は持ち主の魂だ。貴様の刀が貴様ら自身を何よりも語る。」
魂も何も、1時間程しか携えていないが…
それで許されるのならと、私は大人しく刀を抜いた。
男はその刀に刻まれた文字と刀身を眺め、何か考えている様子だった。
「妖刀愚憎…刀寿さんの刀、か。それも業物だな。」
男はこちらに刀を収める事を促し、小さく頭を下げた。
「失礼。刀寿さんの知り合いならば、こちらが兎や角言う権利は無い。仕事を探しているなら、ここから外れの集落で発生した魔獣の討伐がある。俺の紹介を受けたといえば申請は簡単に通る筈だ。それでは。」
そう言って男は長い赤髪をくるっと回し、出入り口から外へ出ようとした。
「あの、であれば名前を教えて貰えますか?」
「ん?それもそうだな。灰神楽巳速だ。」
ちこっとネタバレのコーナー。
多分皆さん(まだ読者が居ると信じて)ご存知だと思うんですが、私は自分の作品のネタバレを良くする変な人です。
前にも言いましたが、こっから先は新キャラを途中で思いついたりしない限りは予定調和的に進みます。
どっかで言いましたが三章は四つのイベントで構成されていますが、今は夏の国内乱編と次のイベントの繋ぎです。
はい。どうせ直ぐ判明するんで先に伝えときます。
五年間の国外追放と言いましたが別に本当に五年間の変遷を追う。なんて事しないので安心してください。
私が読み返し易くする為と、読者の為に(前者の理由が大半)徹底的に無駄は省くので。
復刻次回予告のコーナー。
次回番外2、半田棘の贖罪。




