No.29end、雨東風と時雨
文字におこすのって、やっぱ難しいですね。
因みに前回のは番外であり例外なので、カウントしなくていいですよ。今は意味わからないと思いますが、私の想定通りなら間違いなくもう一度三章の途中か終わった後にここを見る筈なので、その時に役立てば。
鈴音が風鳴風雅から距離を取ってから、優に5分以上経っていた。
魔力量はそこまで無いのか、風雅は距離を取られてからは全く攻撃をしてこない。
いや、全くではない。ついさっき夏の国と逆側に動こうとしたときだけ、過敏に反応してきた。
それ以外は動こうとしない。
大きな溜めがいる攻撃の可能性も有るが、それにしては風雅の付近に特別大きな魔力の反応はない。
やはり、距離を取る必要が有るが、あちらからは攻められない。何か理由がある筈だ。
それを知るには、こちらからアクションを起こす以外に道はない。
気になるのは、夏の国方向で突如発生した膨大な魔力。
夢幻さんはあり得ない。とはいえ、アイシスさんがそこまでの魔力量と威力のある魔法が使える筈もない。
一番あり得るのはノートさんだ。
彼女が戦うとすれば、それこそアイシスさんぐらいで、それを許す夢幻さんじゃない。
棘さんも遥夏さんも、どちらも戦うより先に契約で解決するタイプだ。
なら春間輪回と?
それも違う。
後は…綾命か?
とするならば、風雅の目的は綾命と合流すること?
つまり、私はこのまま待っていればノートさんがこっちに来てくれると言う事か?
しかし、実力は歴然としているが、相性で見れば綾命は有利に立ち回れる。
脚に傷を与え、行動を塞いでいるかもしれない。
生憎と、ノートさんは攻撃魔法以外はさっぱりだ。
考えても結局分からない。
やはりこちらから仕掛けるか。
「舞十技一番鳥の舞、飛燕!」
地面と平行になるほど体を倒し、一歩目の力だけで風の抵抗を減らし直進する。
「風見鶏。」
風の槍がこちらへ向かって飛んでくる。
この感じは、あまり魔法の種類は多くないらしい。
「千鳥!」
風の槍の纏う風すらも利用し、高速で身体を拗らせ槍と槍の隙間を抜ける。
速度もやはりそこまで速くない。
これなら行ける。
「舞十技九番龍の舞、濁龍。」
斬りかかる方に体重をかけ、その勢いを利用して加速して進む。
距離はもう、踏み込めば刃が届きそうな程近い。
「舞十技八番雪の舞、氷柱針。」
舞十技で鉄頭鉄尾とは別の、数少ない突き技。氷属性の魔力によって一部の熱運動を小さくし、生じた空気の抵抗の少ない隙間を刺す技。
使用者によっては音速すらも超える。
コンマ1秒にも満たない時間。
筋肉が動き、その瞬間には剣先は風雅の喉元に迫っていた。
「フー!」
風雅がそう叫ぶと、剣先が触れられない壁に触れたような不思議な感触を与えられ、
次に身体が捉えた感覚は、地面に叩きつけられた衝撃だった。
(なんだ…?突然剣が弾かれて、何かに上から押さえつけられた。)
兎に角、今は離れなければ…
「風渡。」
幸運な事に、只高圧な風を当てられただけで特に攻撃は受けなかった。
草を服に纏わせながら後方に転がっていく。
また距離を作られてしまった。
なんだって言うんだ?綾命がここに来る可能性は限りなく低い。ノートさんも同様だ。
ここまで時間を稼ぐ必要があるのは何故だ?
「随分悠長な戦い方するね。」
そう問うと、また何処からともなく声がした。
「貴女も付き合ってくれるみたいだしね。」
どうやらまともに取り合う気はないらしい。
今わかった事は、彼女はやはり近距離を嫌っている。
だが何故かは分からないが、近距離攻撃を無効化する力が有る。
遠距離では攻撃力の高い風見鶏、
近距離では範囲と風圧の強い風渡
この2つを使い分けている。
気になるのは逆の方がより有用に使えるという事だ。
そして、近距離に近づいた途端発動した謎の上から押さえつける力。
これらを攻略しない限り、私が風雅に勝つ事は不可能。
一番あり得る線は、これら全てが名指しであるというもの。
精霊魔法を使うとすれば、その名指しに加えて精霊の力も使っている筈だ。
どれが風雅の名指しで、どれが精霊の能力か。
これさえ分かれば、後は魔力の流れを見れば対応可能。
「まだまだこっからって事ね。」
居合を発動し、辛うじて風雅を捉える。
魔力は右腕とその横の空間に集まっていた。
右腕に魔力回路、右側に精霊が居る筈だ。
何が風雅の名指しなのか。
それを今から確かめに行こう。
鈴音は刀を鞘に収めたまま、左回りに風雅めがけて走り出した。
現在位置は風雅から25mだが、まだこの位置では風見鶏を使うらしく、さっきから鈴音の残像めがけて風の槍が飛んできていた。
魔力は、右側の空間。恐らく精霊が居る場所に集まっている。
そのまま加速し、風雅との距離が15m近くなった時、突然風雅が後ろに吹き飛ばされた。
つまり、風見鶏は精霊魔法。
使う条件は敵との距離が15m以上。
という事だ。
風渡を自分に向けて打つことで距離を取ったのだろう。
ならば高速で近づけば反応はできない筈だ。
あと気をつける事は、あの謎の防御と圧力。
てっとり早く、虚の太刀で斬るか?
いや、そもそも刃が弾かれる時点で近くの空気は切れない。それに、風属性の魔法が使えるならそれも難しいだろう。
どうやっても決め手に欠けてしまう。
それでも虚の太刀が有効である。という一縷の望みにかけて鈴音は再び駆け出した。
「舞十技四番雷の舞、閃火雷電!」
「風見鶏。」
五本の風の槍がこちらへ迫ってくる。
「舞十技二番水の舞、高波!」
風と斬撃とがぶつかり合い、衝撃波によって辺りの草が揺れる。
二人の距離が再び15mになり、風雅の近くに魔力が集まっていった。
本来なら再び閃火雷電で追いかけ、虚の太刀で倒す。
そんな予定だった。
ただ、一つ。いや一人を鈴音は凛は思い出したのだ。
だから鈴音は加速する為に地につけた両足を、
少し後方へ戻した。
「風渡!」
再び風雅が自らへ風圧を与えようとするが、
今回は、風雅の体はピクリとも動かなかった。
動揺している中、鈴音は風雅との距離を詰める。
「舞十技六番月の舞、三日突!」
刃を三日月の形を作るようにカーブさせながら風雅へと突き出す。
鉄頭鉄尾や氷柱針ではなく、三日突きを選んだのは
先程の刀を弾かれた防御を突破するためだった。
「フー!!!」
同じように風雅はその名前のような物を叫ぶが、
「がぁっ!?」
刀身は彼女を纏っていた風を裂き、風渡で逃げるよりも力強くその華奢な身体を吹き飛ばした。
「な…んで…なん…で…なんで…」
歩み寄ると、風雅は肺に空気が入り切っていない話し方でひたすらそう呟いていた。
「考えれば簡単だったよ。君の名指しは風雅じゃなくて遁走だったんだ。」
同音異義語を持ってきたのは、アイシスさんのユーモアだろう。
「君の名指しは遁走と追走。逃げと繰り返しだ。」
精霊魔法は進化しない。19年前にウィンドさんが産まれてから、人間の風属性魔法は進化した。
風圧を異常に変化させるものから、
風を起こすものへと変わった。
それさえ覚えていれば、風雅の能力は全て説明できる。
距離を取りたかったのは、風を受けるこちら側。
つまり低気圧の方で、上昇気流によって酸素濃度を下げ、ゆっくりと私を弱体化する為だった。
15mの距離の制限は、魔力有効範囲。
だから槍として形を作るのではなく、風に魔力を纏わせて動かしていた。
上から抑えられたのは、風上側。高気圧による下降気流。
刀が謎の壁にあたったように感じたのは、
上昇気流と下降気流の間を精霊の力で局所的にしたから。
名前を呼んでいたのはそういう理由だろう。
風雅は名指しによって精霊の魔法を追走し、
タネを悟られないように、生み出した気流を私達から遁走させていた。
魔法を分割して使用するのは、名指しによるものだろう。
遁走曲というものは、後から合流してくるのだから、恐らくあのまま時間が経てば、風雅は自分の持つ能力全てをフルで使えていたのだろう。
「決して強い能力じゃない。魔力量だって、私よりも。
何故ここまでやる必要があった?とても一人で戦えるとは思えない。」
むしろその力は、誰かと協力する時に活かす力だ。
問いかけるも、風雅はずっと何かを呟いている。
呻くように、延々と声に成りきらない言葉を紡いでいた。
「私が…奪ったから。私がアイシスさんから…仲間を…」
風雅が何歳なのか私は知らないが、5〜6年間を失ったように、彼女は泣いていた。小さな子どものように。
「だから…私が…証明しないと…」
強く、風雅が自らの手を握りしめる。
「アイシスさんが、五騎を捨ててまで拾った私に、価値が有るって!!!!」
風雅の魔力が身体中を駆け巡り、魔力回路が破裂しそうなほど脈を打つ。
「馬鹿っ!?」
「羅生…」
風雅がその言葉を言い切る前に、パシッと乾いた音がした。
「そこまでする必要は無い。羅生より、凱旋のが相応しいだろ?」
突如目の前に現れた、灰色の一見特徴のない男が風雅の手首を掴んでいた。
「うちの風雅が世話になったみたいで。久しぶりかな?鈴音。」
昨日も会ったはずのアイシスは、そんな事を言っていた。
なんてことのないように見えるのに、
その朝の水面のように静かな男から、隠しきれない波打つ殺意が垣間見えていた。
「綾命に合流してもらう予定だったが、すまない。俺のミスだ。」
「そんな事…」
「有る。俺のせいで無理をさせた。後は任せてくれ。無駄にはしない。」
アイシスはそう言って風雅の額に指を当てた。
魔酔だろう。風雅はそのまま寝てしまった。
「夢幻さんとノートさんが居るはずですが、二人は…どうしたんですか?」
ここにアイシス・ハルマが来るなど、微塵も考えていなかった。
灰神楽夢幻とノート・キーパーに勝てる者など、この世界に存在するとも思えなかった。
「夢幻からは逃げてきた。あいつは案外優しくてね、逃げる途中で怪我をしたフリをすれば、勝手に油断してくれる。ノートは綾命のおかげで動けなくなっていた。」
アイシスは淡々とそう言うが、灰神楽夢幻から逃げるという、そんな神話的な手段を彼はいとも容易くやってのけたと言うのだ。
それは鈴音にとって、衝撃的だなんて言葉では表せないものであった。
「分かっていると思うが、無駄な抵抗は辞めておけ。
当たり所が悪くなる。」
最早鈴音に選択肢はなかった。
今は只、一刻も早く夢幻がここへ来る事を願っていた。
「亜空。」
アイシスが、春間家特有の空間魔法によって、虚空から弓矢を取り出す。
「じゃあな。」
軽い別れの言葉と共に、アイシスは矢を放った。
逃げなくてはと思っていても、鈴音は動けなかった。
意識とは別で、反射的に刃を振るう。
真っ直ぐ飛んで来るただの矢に、刃を合わせる。
普段なら失敗のしようの無い行為だった。
「機能低減、悪魔の証明。」
あたかも矢が世界から消えたように、刃をすり抜け、鈴音に刺さった。
ドクンドクンと、心臓が鳴った。
えー、はい。そうですね。なんというか、
サボったわけではないです。
それと、なろうとは全く関係なく、
部活で別の小説書く事になったのでまたまた更新が遅くなります。
因みに今回は本当にどうやって戦闘シーンを文字にしようか悩んだ挙げ句、結局深夜テンションに任せることになっただけです。
No.7の前書きにちゃんと書いた筈です。
バトルはメインであり、メインでないと。
なんでこうなったかなぁ…?
構想はもうこれ以上変わることは多分ないので、細かい調節に喘ぎながらゆっくり書いていきます。
因みに最後の矢の言葉回しは、私がジョジョの2部が好きなだけです。




