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第十七話 騎士候補生との決闘 前

 翌日、俺とロズは決闘合意書にサインを交わした。

 立会人はシュラインガー魔法学園の教員が立てられ、場所も学園内の魔法訓練場を使用できることになった。

 こうして決闘の準備は整った。


 そして更に翌日、俺とロズは決闘を行うことになった。



「ルールの確認を行う。武器・魔法の使用は共に許可、勝敗はどちらかが戦闘不能になるまでだ」


 前回のリンゼとの決闘のように殺害は禁止要項に入っていない。

 つまり、戦闘不能と言うのは……相手の息の根を止めるということでも成立する。


「逃げずに来たことだけは褒めてやるよ。てめぇはこれから死ぬ、最後に遺言でも言ってみるかぁ?」


 下種な笑みを見せながら、ロズは俺を見た。


「……ねぇよ。それよりも早くやろうぜ」


 それに臆することなく、俺は奴を睨み付ける。


「けっ!! まだ口が減らねぇみたいな……!! いいか、今回勝敗による誓約は無しだ!! その意味が分かるよなぁ……? はは、てめぇを殺しちまうからだよ!! 死人に何を頼んでも意味がねぇからなぁ!! せいぜい樹木の栄養になるのがせいぜいだからよぉ!!」

「……」


 やはり、ロズは俺を殺す気だ。

 今の発言がそれを確信に変えた。


「双方、それ以上の会話は慎め」


 立会人が、ロズに制止を掛ける。彼はふんと鼻を鳴らし、指定された立ち位置に付く。

 俺も自身が指定された位置に足を乗せた。


「これよりロズ・チェンバーとスパーダによる決闘を執り行う……構え!」


 立会人の言葉に反応するように、俺とロズは武器を抜く。

 ロズは腰の剣を、俺は背中の魔剣を。


「……」

「……」


 対峙するロズとの視線が交錯。

 沈黙が流れ……互いの剣を握る手に力が籠る。


 立会人が放つ次の一言まで、緊迫した状態が続いた。

 ――――そして、


「始め!!」

「「っ!!」」


 立会人の開始によって俺とロズは互いに一呼吸を吐き、激突する。

 剣と剣がぶつかり合い、激しい金切り音が発生した。


「はっ!! 何だこれ、大したこと無ぇなぁ!!」

「っ!?」


 ニヤリと笑うロズはそう言うと、剣を握る腕力のみで俺の剣を圧し返した。


 くっそ……!! 何だよこの力……!!


 俺は負けじと腕に力を籠めるが、俺の剣が奴の剣を圧し返すことは叶わなかった。


「はっ!! 任命式のプレート番号は騎士候補生の強さを示す!! 番号が若ければ若いほど強い!! てめぇが俺に勝てるワケねぇだろうが!!」

「番号……てことは……」


 言いながら、俺は任命式でエリーザの指名の時に司会が呼んだプレート番号を思い出す。


「お前候補生の中で一番強いのかよ……!!」

「そういうことだ!! いくぜ……!! こっからが本番だ!!」

「っ!!」


 剣を圧し返す力が更に増す。

 間違いない、腕力に加えロズは強化魔法を発動したのだ。


 このままではコイツの刃が俺に届く。こちらも力を以て応戦しなければ、られてしまう。


 いくぜ、ゼノ!!

 

 俺は相棒に声を掛ける。

 ――――が、


「あれ……? おい、おい!?」


 俺がいくら呼び掛けても、魔剣に憑いているはずのゼノから声が返ってくることは無かった。


「何ブツブツ言ってんだてめぇ!!」

「くっそ!!」


 ゼノの反応が無いが、ロズは絶え間無い攻撃を俺に浴びせる。

 俺は純粋な身体能力だけで、紙一重ながらそれらを避ける。


「勝てぇ!! スパーダ!!」

「頑張れぇ!!」


 訓練場は周囲に上部に観客席があり、円形にこの訓練場を囲っている。

 そこから俺を鼓舞する聞き慣れた声がした。


 フライト、カレン……。


 俺を応援してくれている『友』……そして。


「……」


 その隣で体育座りをして死んだ目をしているゼノがいた。


「何してんだァァァァァァァァァ!!!???」


 堪らず、俺は叫んだ。いや叫ばずにはいられなかった。


「おい決闘に集中しろスパーダ!! 何をしているんだ!!」

「い、いや!! ちょ、ちょっと……あのぉ……!!」


 言えねぇ……!! この状況でゼノに問い詰めるられるワケがねぇ……!!


 思わず頭を抱えそうになる。


「さっきから何を……!! 舐めてんのかてめぇぇぇ!!」

「ああもう……!!」


 この状況でやるしかねぇのかよ……!!


 俺は魔剣の力を解放した。

 ゼノディーヴァの力である身体強化と回復能力は鞘から剣を抜いて発動する。

 この前の一件で魔剣を制御できるようになった俺は、剣を抜いてからその発動を任意で決めることができるのだが……一つだけ懸念点がある。


 それは、ゼノが近くにいないと万全な力を発揮できないということだ。

 これは後で分かったことなのだが、ゼノとの距離が離れれば離れるほど俺が使用できる魔剣の力が制限される。

 更に、それはゼノの魔力についても言えることでありアイツとの距離が離れれば離れるほど、ゼノの魔力を使用する際にラグ――――すなわち遅延が発生する。


 ゼノが魔剣に憑りついた状態では一秒にも満たない時間で体内にゼノの魔力が循環するのだが、十メートルも離れれば、その循環は五秒以上掛かる。

 つまり、今の俺は力を満足に行使できない状態というワケだ。


「くっそ……!!」


 ゼノディーヴァの力を解放し、俺は自身の身体能力を向上させる。


「らぁ!!」


 地面を抉るようなロズの斬撃を上空へと跳躍することで回避した俺はそのまま奴に斬り掛かった。

 ロズは剣を横に構え、それを防いだ。


「ってめぇ……!!」


 先程とは違う、圧倒的な重みを携えた一撃にロズは顔を歪ませる。


「ぐ、おおぉぉぉぉぉぉ!!」


 肉体を以て、身体強化を以て俺は魔剣の柄を握りしめた。

 刀身に体重を掛け、ロズの受け身の防御姿勢を崩す――――それが目的だった。


上昇風舞ライジング・ウィンド!!」

「っ!?」


 だが、それは不発に終わった。

 ロズが発動した、風の魔力特性を使用した魔法。

 まるで上昇気流のような風が遅い、俺は上空へと吹き飛ばされるのを余儀なくされた。


「らぁ!!」


 その隙を逃すことなく、ロズは跳躍して俺に斬り掛かった。

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◇◇◇

小話:

なろう小説によくいる噛ませのような性格をしているロズですが本作では強い部類です。

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