はじまりの日
精霊と呼ばれる者たちが一般社会に認知されるようになって一世紀の時が過ぎた地球。
今や世界各地に精霊と人間の共学学校が建てられている。
また、精霊の協力もあり現代では『魔法』を使うことのできる人間が世界人口の七割にまで増加していた。各国家軍は戦車や戦闘機など質量兵器の開発よりも魔法をどの程度、軍事利用できるかの実験や検証作業を重点的に行っている。そのためか現在、世界のどこの地域を見ても戦争や紛争は起こっていない。
しかし、戦争は起きなくてもテロは起きている。二十年前にロンドン、サンフランシスコ、東京で同時多発テロが起きた。規模は大きくなかったももの、人々の心に恐怖をもたらした。そのせいもあってか日本の首都は東京から新潟へと移った。新潟になった理由としては、大阪や神奈川などの大都市ではまたテロの標的になると予測したためである。新潟に首都が移ったことを知っているのはアメリカ、中国、朝韓国(北朝鮮と韓国は五十三年前に協定を結び一国家となった)のトップとその大臣だけである。
その新首都新潟にある国立新潟精霊人間高校に入学のシーズンが訪れる。
今年の入学生は人間が百七十四名、精霊が百七十六名で合計が三百五十名。
どのようなドラマがあるかは誰にも予測できない・・・・・・
「入学した諸君、まずはおめでとうと言う言葉を送ろう」
この学校の校長が祝辞を述べ始める。
この祝辞が長いんだ、と少年は過去九回の経験上からそう推測する。
少年がいるのは国立精霊人間高校の講堂兼第一体育館だ。そこのステージから十メートルほど前に椅子をステージに向けて座っている。
この講堂兼体育館は百二十メートル×百二十メートルという講堂にしても体育館にしても大きすぎる場所である。
今ここには入学する生徒が三百四十九人(一人欠席)、二年生が三百四十人、三年生が三百三十人の生徒が集まっている。無論、この入学式のためだ。
「諸君らの成長を私は期待する」
校長の祝辞が終わる。
(意外と早かったな)
と、少年は返礼をしながら思う。どうやらここの校長は長い話はしないらしい。すばらしい校長だ、と少年は思った。
その後式は順調に進み、ほどなく教室に入ることになった。
教室では自己紹介が各クラスで行われていた。クラスの人数はは一組から九組までが三十二人、十組と十一組が三十一人となっている。
少年がいる九組でも自己紹介が行われていた。
この学校の自己紹介はこの学校ならではの方法で、名前を言った後に自分が精霊か人間かを述べる。
なぜ精霊か人間かを述べる必要があるかというと、精霊も人間と同じ形をしているためである(名札にも精霊か人間かが書いてある)。趣味などわざわざ言う必要は無いのだが、
「えー、私の名前は北原由里です。人間で趣味は読書です。よろしくお願いします」
と、趣味や得意技を言っている人や精霊も少なくないのだ。
趣味などを言うべきかな~でも俺の趣味て何だ? とか思っている内に順番が回って来たので、とりあえず名前と人間とだけ言えばいいやと思い、席を立って自己紹介する。
「私の名前は人間の広崎海人です。よろしくお願いします」
と定型的な自己紹介をして腰を下ろす。私、と言ったのは断じてオネエなのではなく、高校生にもなって僕というのはちょっと幼いかなと思った結果である。
腰を下ろした途端、ひそひそと話し声が耳に入る。
「広崎ってもしかして・・・・・・」
「会長の弟?」
「同じ苗字てこともありえるぞ」
「いや、でもやっぱり・・・・・・」
海人は、後で質問攻めをくらうなと、ため息をつきたくなった。
その後、このクラスの担任の暁恵美先生(人間の女の先生)、副担任のグリス・サーペント先生(精霊の男の先生)の自己紹介も終わり、新入生オリエンテーション前の四十分という長い休み時間(主に入学生同士が交流するための時間)に入った。
「ねぇ、広崎君て広崎達也会長の弟?」
そう聞いてきてのは自己紹介で「趣味は読書です」と言っていた由里だった。周りの人(精霊)達は知らん振りをしているようだが、聞き逃すまいと耳を立てていた。
「ああ、そうだが」
特に隠すことも無いので普通に答える。
途端、人(精霊)の波が来るということは無かったが周りの視線が一瞬、海人に集まった。
「へぇー、会長ってカッコいいよな」
と前の席にいた男子生徒が声をかけてきた。名前はサモン・アルベン(精霊)だったか。精霊にも住んでいる地域によって言葉が違うが、日本のあたりに住んでいる精霊は日本語は読めないが日本の言葉は意味まで分かるし発音もできるらしい。
「そうだな。お前らから見ればカッコいいんだろうな」
この学校の会長は特別な方法選ばれている訳ではない。候補者の中から選挙によって選ばれている。
普通ならば「生徒会長の弟」程度、話題になることはない。へぇ~それで、程度だ。だが今年はそうはならなかった。
現生徒会長である広崎達也は成績トップ、運動はそれなり、容姿はバツグンだ。その程度ならば他の学校でもゴロゴロいるがそれに加えて達也はこの学校のさまざま制度を見直し、より良い制度を作ったという実績もある。しかも、もとあった制度でも必要ないと判断すればその制度を改善、撤廃している。初めは「この学校、無法地帯になるんじゃないか?」と教師陣は思っていたが、そのほとんどが学校にプラスに働いたため教師陣からも絶大な信頼を得ている。また、自分の意見ばかりを通すのではなく意見ボックスを校内に配置して学年かかわらずさまざま意見を集めているので同学年だけでなく他学年の信頼も厚い。実際、意見ボックスからの意見を採用しこともあるらしい。
そのような話をどこで聞いたかは分からないが入学生のほとんどが知っているのだからどれほどすごいかが分かるだろう。もっとも、海人はこのクラスのことしか知らないが。
「お前から見たらどうなんだ?」
海人が答えるとサモンが次の質問をしてきた。海人は少し考えた後、答えを出した。
「どう、って言われてもな。面倒見のいい兄貴だとは思うが」
本当はよくゲームをして遊んでいるとは口にできなっかた。
「そっかー。家でもいい人なんだね」
「やっぱり、会長はすごい人だ」
由里は目を輝かせ、サモンは腕を組んでうなずいている。大げさなやつらだと海人は思った。
「北里さんとアルベンは兄貴の妹か弟になりたかったのか?」
「答えはYesよ。あと北里じゃなくて由里でいいから。さん、もいらないわよ」
「俺もYesだぜ。ところで俺はいきなり呼び捨てか?」
「悪い。男にさん付けは慣れてなくてな」
「別にいいけどな。俺のこともサモンでいいぜ」
「なら二人とも俺ことは海人って呼んでくれ」
と質問の返答も入れて呼び名の確認(設定?)をした三人は休み時間の間、お互いの趣味や最近ニュースなどを話あっていた。
休み時間が終わり、恵美とグリスが教室に来てオリエンテーションが始まった。
オリエンテーションでは授業内容、部活動紹介(同好会含む)、生徒会、この学校の校訓や施設などが紹介された。
授業は、人間と精霊の共通科目である情、数、社に加え、魔法、精音、人音、精画、人画の五つの選択授業内二つを選び授業をするというものだった。
部活動は、陸上男女、サッカー、バスケ男女、野球、テニス男女、卓球男女、バレーボール男女、剣道男女、柔道男女、フェンシンゲ男女、バドミントン男女、水泳男女、美術、文芸、演劇、吹奏楽、軽音、書道、科学、家庭・手芸の三十種類(男女込み)。
同好会は、ボクシング、バレエ、ダンス、ゲーム、海の男(?)の五種類。
生徒会については役員の説明。説明された役職は会長、副会長男女、書記長、応援団長、部活総長の六役。これらの役職はすべて選挙で決めるらしい。
最後の校訓や施設については大まかなことは入学要項に書いてあったので細かな説明を受けた。
それを最後にオリエンテ-ションは終わり、続けて部活動と同好会を見学する時間が設けられている。
海人は水泳部を除く運動系の部活動とゲーム同好会を見て回ることにした。由里は水泳部に入ることを決めていたらしく水泳部を見学しに行くと言っていた。サモンは海の男同好会に興味があるらしく、まずそこに行くと言っていた。彼らは一旦別れ、それぞれの部活と同好会を見学しに行った。
海人は陸上部の見学に来ていた。
他の見学したい場所はすべて見学し終わっていた。今までの部活動(同好会)見学の感想は「こんなもんか」である。他の運動部は中学校の時とそれほど変わった様子は無かった。その部活に入ればいろいろと変わるだろうが表面上の変化は特に無かった。練習の内容が多少きつくなった程度だと思う。
ゲーム同好会もトランプや将棋など定番のものしかなかった。自分達で作ったゲームは無かったんだろうか。
いろいろ渡り歩いて最後に来たのが陸上部である。海人は中学のころ陸上部に所属していたが、海人は「一度経験したし、別のものをやりたいな」と思っていた。
しばらく、見学をしたがやはり変わったところはなかった。
そこで海人は思う。
(俺はどんな変化を求めていたんだ?)
練習のメニューなどは中学とは違う。違うのに海人は変わらないと思ったのだ。
なぜ、違うのに変わらないと思ったのか・・・・・・
考えに意識を奪われる前に、胸のポッケトに入れてある携帯端末がなる。部活動見学終了の合図だ。
海人は考えるのを先送りして教室に戻っていった。
教室に戻ると明日の予定を簡単に説明されて下校となった。
特に荷物も無いのでさっさと帰ろうと海人も他の生徒と同じように席を立つ。
と、そこへ座ったままのサモンが声をかける。
「このあと予定あるか?」
「特に無いけど」
「ならさ帰った後、親睦会ってことでどこか行こうぜ」
「いいね、賛成!」
由里も話に加わり、これからどこへ行くか話しながら彼らは帰ることにした。
「で、サモンは魔法体験場に行きたいが場所がよくわからないと?」
「そうゆうことだ」
どうゆうことだ、と海人はツッコミたくなった。
ここは校門近くのバス停。彼らは駅行きのバスを待っていた。左からサモン、海人、由里の順で待合室の長椅子に腰掛けていた。
彼らはサモンが言った魔法体験場に行くことにして待ち合わせはどこにしようか、という話をしようとしたとき、サモンが「魔法体験場ってどこにあるんだ?」と言ったので話がもつれてきたのだ。
魔法体験場とは文字どうり魔法を体験できる場所のことである。ただし高校生以上の人(精霊)しか体験できず、自身が高校生以上だと証明できるものを持っていかなければ魔法を体験することができない。
サモンがこの場所を選んだのも高校生になったし、せっかくだから行こうと思ったからだろう。
「自分の行きたい場所ぐらい、自分で調べたらどうなんだ」
「俺、調べ物は苦手で」
「私も知らないけど、海人は知ってるの?」
「まあな。兄貴と一緒によく行ったことがあるんだ」
海人は普通に答えたが他の二人は目を丸くしていた。
「会長って、何でもできるんだな・・・・・・」
「会長・・・ますますカッコいい!」
サモンが敬意を通り越して呆れ声になっていた。由里は敬意が好意に変わっていた。
「二人とも大げさだって。最近になってようやく標的の的に当てられるようになったから。そんなにうまいほうじゃないよ。普通なら三週間でできるのを五週間かかったから」
「的に当てるのはどのくらい難しいんだ?」
海人の発言に対してサモンが質問をしてくる。
「やったことが無いからわかるわけ無いじゃないか」
「そりゃそうだ」
そうこうしている内にバスがやってきた。バスに乗っている時間はそう多くはない。バスに乗り、腰を下ろしたところで海人が待ち合わせについて問う。すなわち、
「どこに集合する?」
と言葉を発する。
「駅でいいんじゃない?」
由里が提案する。
「俺も駅が言いと思うぞ。駅から案外近いからな」
海人も賛成の意見。
「じゃあ、駅で決まりだ。駅のどこにいればいい? 海人なら体験場がどこにあるか知ってんだろ?」
サモンが決定を含む質問をする。
「南口の前にビックリ屋があるだろ? その前でどうだ?」
「OK! じゃあ、一時半集合でどう?」
由里が時間を聞く。
「俺は特に問題は無い」
「俺もバッチリOKだ」
海人、サモンも返事を返したことで予定が決まる。
四月十日、午後一時三十分。
海人、由里、サモンの三人は魔法体験場に行くことになった。
初めまして、キュリオです。
私は素人です。素人がいきなり連載かと思われるかもしれませんが、読んで頂けると私個人としてはうれしいです。
なお、テーマは魔法と超能力ですが有名なあの本とは無関係です。
月に二回は更新したいですが、私のやる気のアップダウンによるので事実上、不定期更新です。読んでくださる方には申し訳ありませんが気長に待っていただけると幸いです。




