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リリー・フリティラリアの日記  作者: 夏梅 結香
第一部 コランダム・ラトラナジュ編
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プロローグ

 都市の貧民街に佇む小さな花屋。そこは、都市の治安を維持する刑事、コランダム・ラトラナジュにとって癒しの場所だった。ゆっくりと店の扉を押すと、呼び鈴がチリリンと鳴り響いた。そして数分、彼はその場に立ち尽くした。

「あら、いらしていたのね。刑事さん」

そう言って、店の奥の部屋から店主のリリーが出てきて柔らかく微笑むような気がしたのだ。しかし、店にはもう誰もいない。コランダムの前に現れる店主、リリーもここにはいない。店主がいないことを再度認識したコランダムは、目を伏せて赤い瞳を僅かに揺らした。店内の静寂が彼自身を責め立てているように感じた。少し重くなった足を引きずるように店の奥へと進めた。店の奥の部屋の扉を開くと、一本の黒百合が挿された花瓶がコランダムを出迎えた。

「どうして……君が……」

黒百合に話しかけるようにコランダムは呟いた。黒百合は、コランダムに微笑みかけるように揺れている。ふぅっと息を吐いたコランダムは、黒百合の花瓶から視点をずらし、部屋を見渡した。手入れ用のハサミ、花束用のリボンとラッピングペーパーなどがあり、特にこれといった変化は無かった。

「……これは」

コランダムは、ラッピング用の作業台に置かれた一冊の黒革の日記を見つけた。誘い込まれるように、コランダムは日記を手に取り、一枚、また一枚とページを捲った。まるで今までの出来事を振り返るように。彼女との日々を思い出すように……。

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