書ける者だけが残った
AI直接使用
# 書ける者だけが残った
## シナリオ脚本・修正版
### 登場人物
三枝 悠斗
小説投稿者。AIと壁打ちしながら物語を作っている。本文は自分で書いているつもり。
白石 真琴
人力作家。最近、読者が減っていた。AI作品に強い違和感を持っている。
瀬戸 玲奈
読者。人力作品だけを安心して読みたい。
久住 航
投稿サイト運営担当。問い合わせ対応と新機能の集計を見ている。
---
## Scene 1 三枝悠斗の部屋
夜。
机の上にノートPC。
画面にはチャット欄と小説本文。
チャット欄。
> 主人公が森に入る理由を、もう少し弱くしてください。
> 塔は最後まで見せなくていいです。
> 最初は白い紙の入口だけでいいです。
悠斗は笑う。
悠斗
「それ、いいな」
本文に戻る。
> 主人公は、森の入口に立っていた。
> 白い紙のような道が、奥へ続いていた。
> 塔は見えなかった。
> けれど、塔があることだけは、なぜか分かった。
悠斗は少し考えて、続きを打つ。
> 彼は、まだ森に入りたくなかった。
> 入りたくないのに、ここまで来てしまった。
悠斗
「うん」
保存する。
画面の端に投稿フォームが開いている。
> AI利用状況を設定してください。
> 未設定のままでは投稿できません。
選択肢。
> AI不使用
> AI一部使用
> AI直接使用
悠斗はそれを見る。
少しだけ迷う。
そのまま、本文に戻る。
---
## Scene 2 瀬戸玲奈の部屋
朝。
玲奈はスマホで新着作品を見ている。
タイトルが並ぶ。
数が多い。
似た言葉が多い。
玲奈は検索設定を開く。
> AI利用作品を表示する
> AI利用作品を表示しない
玲奈は、表示しない、を選ぶ。
画面が更新される。
一覧が短くなる。
玲奈
「うん」
作品をひとつ開く。
冒頭を読む。
玲奈
「こういうのでいい」
ブックマークする。
---
## Scene 3 白石真琴の活動報告
昼。
真琴は活動報告を書いている。
> 自分はAIを使っていません。
> 構想も本文も、自分で書いています。
> これからも、人間の手で書いた作品を投稿します。
真琴は一度、手を止める。
「人間の手で」の部分を見ている。
削除しない。
投稿する。
すぐに通知が来る。
> 安心して読めます。
> こういう作者さんを応援したいです。
> やっぱり人力がいいです。
真琴は画面を更新する。
もう一件、感想が増える。
真琴は、少し笑う。
---
## Scene 4 久住航のデスク
午後。
オフィス。
久住は問い合わせ一覧を見ている。
件名が並ぶ。
> AI利用設定について
> AI作品の表示除外について
> AI一部使用の範囲について
> 人力作品のみ表示の要望
> 設定ミスの通報について
久住は資料を開く。
> 検索条件追加案
> ・AI利用作品を表示しない
> ・AI直接使用作品を除外
> ・AI一部使用作品を含める/含めない
> ・人力作品のみ表示
同僚
「問い合わせ、減りそうですか」
久住
「たぶん」
同僚
「なら、いいですね」
久住
「はい。読者が選べるので」
久住は申請ボタンを押す。
---
## Scene 5 三枝悠斗の感想欄
夜。
悠斗の過去作の感想欄。
短いコメントが並んでいる。
> AI使用なら先に書いてください。
> 一部使用って何を使ったんですか。
> これ、文体がAIっぽいです。
> プロット相談もAI利用ですよね。
> 設定を確認してください。
悠斗は返信欄を開く。
悠斗
「本文は自分で書いています」
そこまで入力する。
止まる。
もう一度、書く。
> ただ、プロットは相談しました。
> タイトル案も見ました。
> あらすじも直してもらいました。
> 最後の台詞は、壁打ちの中で出ました。
悠斗は読み返す。
一行ずつ消す。
最後に残った文だけを見る。
> 本文は自分で書いています。
それも消す。
返信欄を閉じる。
---
## Scene 6 瀬戸玲奈の週末
昼。
玲奈はカフェでスマホを見ている。
検索条件。
> 人力作品のみ
> 完結済み
> 評価順
作品が並ぶ。
玲奈はひとつ開く。
読む。
玲奈
「読みやすい」
スクロールする。
画面の下に、見覚えのある作者名が一瞬出る。
玲奈は指を止める。
前に読んだ作品の作者だった。
設定を見る。
> AI一部使用
玲奈は、戻る。
検索条件を開く。
> AI一部使用作品を含める
チェックを外す。
一覧が更新される。
その作者名は消える。
玲奈は少しだけ画面を見ている。
すぐに、別の作品を開く。
隣の席で、誰かがノートPCを閉じる音がする。
玲奈は気づかない。
---
## Scene 7 久住航の月次報告
翌週。
久住は月次報告を作っている。
> AI利用状況設定後の状況
> ・問い合わせ件数:減少
> ・検索条件利用率:上昇
> ・人力作品のみ表示:利用多数
> ・感想欄トラブル:減少
> ・読者満足度:改善傾向
久住はグラフを貼る。
AI直接使用作品。
減っている。
AI一部使用作品。
もっと減っている。
久住は一瞬、そこを見る。
同僚
「いい数字ですね」
久住
「そうですね」
久住は報告書を保存する。
---
## Scene 8 三枝悠斗の下書き
夜。
悠斗は下書きを開く。
本文。
> 主人公は、森の入口に立っていた。
> 白い紙のような道が、奥へ続いていた。
> 塔は見えなかった。
> けれど、塔があることだけは、なぜか分かった。
> 彼は、まだ森に入りたくなかった。
> 入りたくないのに、ここまで来てしまった。
悠斗は続きを書こうとする。
少し書く。
> 森の中から、誰かの声がした。
止まる。
別タブを開く。
チャット欄。
カーソルが点滅している。
悠斗は何も打たない。
投稿フォームを見る。
> AI利用状況を設定してください。
選択肢。
> AI不使用
> AI一部使用
> AI直接使用
悠斗は、チャット欄を閉じる。
本文に戻る。
> 森の中から、誰かの声がした。
その一行を消す。
保存する。
---
## Scene 9 白石真琴の活動報告
夜。
真琴が新しい活動報告を書いている。
> 最近、場が落ち着いてきた気がします。
> 本当に書きたい人だけが、残ってきたのかもしれません。
真琴は読み返す。
「書きたい人」を消す。
「書ける人」と打つ。
> 本当に書ける人だけが、残ってきたのかもしれません。
真琴は、その文を見る。
しばらく動かない。
また消す。
最初の文に戻す。
> 本当に書きたい人だけが、残ってきたのかもしれません。
真琴は投稿する。
通知が来る。
> その通りだと思います。
> 最近、安心して読めます。
真琴は画面を閉じる。
---
## Scene 10 三枝悠斗の部屋
夜。
悠斗の画面。
下書き一覧。
> 白い紙の入口
> 最終更新:昨日
> 状態:未投稿
悠斗は開く。
白い画面に、数行だけの本文。
> 主人公は、森の入口に立っていた。
> 白い紙のような道が、奥へ続いていた。
> 塔は見えなかった。
> けれど、塔があることだけは、なぜか分かった。
> 彼は、まだ森に入りたくなかった。
> 入りたくないのに、ここまで来てしまった。
悠斗はカーソルを置く。
何も打たない。
画面は明るい。
カーソルだけが点滅している。
---
## Scene 11 久住航の画面
朝。
久住のPC。
公開予定のお知らせ。
> AI利用状況設定機能の改善について
> 皆さまからのご意見を受け、作品検索および表示設定を改善しました。
> 今後も、より快適な投稿・読書環境を提供してまいります。
久住は誤字を確認する。
問題ない。
公開予約を押す。
---
## Scene 12 四つの画面
四分割。
悠斗の画面。
未投稿の下書き。
カーソルが点滅している。
真琴の画面。
新しい感想通知。
玲奈の画面。
人力作品のみランキング。
久住の画面。
改善傾向のグラフ。
音はない。
どの画面も、明るいまま。
AI不使用
デストピアな話を続けているのは、もっと「創作のよろこび」というところに視点を向けたいなと思っているためです。今回の運営側対策としては、うまくいくとおもっています。




