【第三話】2冊目のノート:新しい場所
4月15日23:40就寝
あれから、3ヶ月以上が過ぎた。このノートも、見つけ出すのに少し時間がかかってしまった。この日、久しぶりに夢を見た。そこは、あまりにも巨大なショッピングセンターの駐車場だった。そのショッピングセンターは4階建てで、端がよく見えない程の大きさの建物だ。それに、この辺りは車社会らしく、それはもう広大な駐車場に、所狭しと車が並んでいる。それに加えて背後には立体駐車場まで存在するというのだから、果てしない規模である事は間違い無い。
さて、今はちょうど駐車場の中の通路として整備されている長い廊下の中央に立っている訳だが、建物までの道も遠いので、そこにかなり時間を使ってしまった。ようやく入り口に到着すると、2重の自動ドアがあった。そこを抜けると、ついにショッピングセンターの中を見る事が出来た。とは言っても、ここからでは店のほんの一部分しか見えない。ひとまず、ここから一番近い右側の店が気になり、そこに入る事にした。
そこに売られている商品はペン、ノート、本、帽子、皿、瓦、なべ、掃除機、ろうそく等、コンセプトがまるで見えない物の組み合わせであったが、店では大勢の人が商品を眺めており、問題無く繁盛しているように見えた。
4月16日22:55就寝
その次の日も、同じショッピングセンターの夢を見た。同じ、と判断した根拠は、廊下の雰囲気が完全に一致していたからだ。そういう訳で、今日も一番近い店に、吸い込まれるようにして入っていった。ここは、書店のように見える。いくつもの雰囲気の異なる書店が無理矢理合体したような印象を受ける。しかも、その中に吸収されたいくつかの書店には、かすかに見覚えがある。そう、中学1年生の時の夢で見た書店と完全に一致している。バラバラで統一されていない雰囲気も、妙に興味をそそられる本の並びも、全てがあの時と同じだった。懐かしい思いと共に、少しだけ不気味な感じがした。
しばらく店内を探索していると、少しずつ異常な部分が見えてきた。天井へと進み先のない階段、ドアノブのない扉、明らかに高さが高すぎる本棚、通れないほど狭い通路、矛盾した矢印案内、などがある。いくつもの書店を無理矢理、物理的に統合したからこそ、これらの不都合が可視化されているのだろう。とにかく上下左右前後どれも異常に大きな書店、それは4階建ての外観では説明がつかない大きさだった。
4月17日23:00就寝
また、そのショッピングセンターの夢だ。しかし、今回は今までとは少し雰囲気が違う。まず、廊下の先が少し暗くなっている気がする。またしても自分の意思とは関係無く廊下を進んでいく。その廊下の先には、黒い垂れ幕で覆われた映画館があった。正確には、大きな円形の吹き抜けの部屋の上側から下にのぞき込んで発見した形だ。円形に設置された階段を降りて映画館の入り口に辿り着くと、いくつかの映画が上映されている事が分かった。
映画の内容は、主に自分の経験を元にしたものから、好きなテーマの映画、見たこともないような映画、逆にどこかで見たような映画、そんな感じのラインナップが用意されていた。それらの映画は、無料で見る事が出来るらしい。だが、必ず1人で見なければならないとの事だった。何故そのようなルールが定められているのかはよく分からないが、とにかく1人で行動している今は、何も問題無いように見える。映画を見始めようと思い、上映会場に向かうと、そこは外からの景色とは比べ物にならないほど大きかった。いくつもの座席が縦横に配置されており、かなりの人数が集まっていた。CMの内容から本編にいたるまで、「好きな映画」を具現化したような映画だった。見ているうちに、自然と夢から覚めてしまったが、起きた後でも映画の内容はハッキリと覚えていたらしい。しかし、どこにも映画の内容に関するメモが残っていないので何も書けない。
4月18日23:10就寝
今日も、ショッピングセンターの夢。今回は、お化け屋敷を見る事になるらしい。自然と足が動き、そのお化け屋敷の中を歩く。お化け屋敷とは言っても、じんわり怖い雰囲気が続くだけで、突然驚かされる事はなかった。また、複数のお化け屋敷が強引に接続されたように、そのテーマは場所毎にバラバラで、ハロウィンから病院、墓と続き、最後に月明かりの中で果てしない道を進む、そんな感じの構成だった。さらに、道中では分岐があり、いくつかの出口が存在するようだった。とにかく、この日の夢日記は極端に短かった。そのくらいショボかった、あるいは怖すぎて記録に残さなかったのか、それは分からない。
4月19日23:45就寝
ショッピングセンターにて。今日は、特段どこかの店に入る事はなかった。ただ、廊下を歩いて探索するだけだった。建物の隅から隅まで、とても長い距離を歩いたが、不思議と全く疲れる気配はなかった。さらに、そうこうしているうちに、出入り口の一つに辿り着いた。そこは、立体駐車場だった。そこに着くと、すぐに目が覚めてしまった。長かったようで、あっけなく終わってしまった。根拠はないが、次の日は立体駐車場から始まる予感がする。そして、もっと大きな何かに惹かれるような……そんな気分だった。




