暁に差す光
朝の光が、霧の森を優しく染める。
冷たく湿った空気に混ざる光が、リナの肩にそっと降り注ぐ。
「……今日から、すべてが始まるんだ」
リナは小さく呟き、胸の奥で小さな決意を灯す。
カイがそっと横に立ち、手を握る。
「一緒だよ。怖がらなくていい」
森の奥では、黒い霧がまだ形を変えながら迫っていた。
仮面の影――彼の存在が、じわりと不安を胸に忍ばせる。
リナは診療所に残る仲間たちを見回す。
ミナは包帯を整え、レオは剣を握りしめ、全員が互いを見つめあう。
「大丈夫。みんなの力で、きっと……」
その声は震えていたけれど、どこか希望に満ちていた。
朝露に光る草を踏みしめ、リナは一歩を踏み出す。
胸の奥で、誰かを守りたい想いが、ひそやかに、けれど確かに燃えていた。
カイがそっと囁く。
「リナ……どんなことがあっても、俺たちは一緒だ」
リナは小さく微笑み、頷いた。
その瞬間、霧の向こうに淡い光が差し込む――
希望の光と、覚悟の光が、森をそっと照らしていた。
森の奥で、黒い影が静かに動く。
けれど今は、二人の心の中で、優しい光が確かに輝いていた――。




