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転生したら病弱少女だったけど、看護師スキルで異世界の医療を改革します!2  作者: 櫻木サヱ
暁の約束

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崩れゆく祈り

風が、夜の森を裂くように吹き抜けた。

診療所の窓がカタカタと震え、灯したランプの炎が不安げに揺れる。


「また、風……強くなってきたね」

リナが呟くと、カイは無言でカーテンを引き、外を見た。

森の向こう――遠くで、黒い霧が渦を巻いている。


「これはただの天候じゃない。封印が……緩んでる」

カイの声に、レオが顔を上げた。

「まさか、あの噂……“森の主”が?」


空気が一瞬にして重くなる。

ミナが不安げにリナの腕を掴んだ。

「ねぇ、どうするの? 避難したほうが――」


リナは首を横に振った。

「この村を見捨てるわけにはいかない。

 ここには、助けを待ってる人がいるの」


その声は震えていなかった。

むしろ、静かで、強い。

あの日――もうひとりの“リナ”に言われた言葉が胸の奥で響いていた。


『誰かを救いたいという願いが、あなたを導いたの』


彼女は診療所の奥の棚を開け、包帯と薬をかき集める。

「レオ、物資を。ミナは子どもたちを安全な場所へ。

 カイは……外の様子を見てきて」


「危険だ。お前こそ――」

「わかってる。でも、行かなきゃ」


リナの目に宿る決意を見て、カイはそれ以上何も言わなかった。

ただ短くうなずき、剣を握りしめて外へ出る。


*


嵐が吹き荒れる中、リナは村人たちを診療所に避難させていた。

泣きじゃくる子ども、怯える老人。

その一人ひとりの手を取りながら、リナは笑顔を作った。


「大丈夫。ここにいる限り、安全だから」

――ほんとうは、自分だって怖い。

けれど、誰かの痛みに触れた瞬間、恐怖は小さくなっていく。


そのとき、ドアが激しく叩かれた。

「リナ! 開けろ!」

カイの声だった。

扉を開くと、全身泥まみれのカイが倒れ込むように入ってくる。


「カイ!?」

「……来る、奴が……封印が、完全に……」


言葉を言い終える前に、地響きが鳴った。

診療所の窓が粉々に砕け、冷たい風とともに“闇”が吹き込む。


外には、巨大な黒い影。

その中央に――仮面をつけた人影が立っていた。


「……やはり、お前たちだったか」

低く響く声に、リナは息をのむ。

仮面の下から覗く目。どこかで見たことがある。


「あなた……まさか……!」


仮面の人物はゆっくりと笑った。

「リナ。君がこの世界に来た理由――それを知りたくはないか?」


その瞬間、リナの胸の奥で“オルゴールの旋律”が鳴った。

断片だった記憶が、ひとつに繋がり始める。


視界が揺れ、過去と現在が重なり合う――。


風が止み、世界が静止した。

カイがリナを抱き寄せ、震える声で言う。


「リナ、忘れるな。俺たちは……一人じゃない」


その言葉に、リナの瞳が揺れる。

彼の腕の中で、彼女は小さく頷いた。

そして、心の奥で誓う。


「もう逃げない。今度こそ、誰かを救うために」


外では、仮面の影が微笑んでいた。

夜明け前――祈りの鐘が、崩れ落ちる音がした。


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