3話 不敵な巨漢・ゴードンEX
アルティメット田中と黒宮が通う高校、『地獄高校』。そこはヤンキーだらけの魔窟である。
強さがものを言う世界。男も女も、基本的に強い者しかいない。
だが黒宮はびっくりするぐらいか弱かった。田中は黒宮を守るためにその日は一緒に帰ったのだが、下駄箱のとこの段差(伝われ)でこけそうになって「うわあっ」とか言っていた。すごい弱い。
「そんな弱いのにどうやってこの学校で生きてきたんだ……?」
「分かんないです。」
黒宮はそもそもあんまり危険だと思ってないようだ。
「ヒャハアァアアッッ!」
そのとき、二人の横をすんごい速度で原付が通りすぎてった。地獄高校のヤンキーで、北斗の拳の悪役みたいな格好でイキっている。
「あれ見ろ。どう考えたって危険やろ。」
「そうなんですか……? 誰にも嫌なことされたことないので、危険だなんて思ったことありませんでした。」
ここで田中は分かった。多分黒宮は綺麗すぎるから、ヤンキーが手を出そうにも高貴すぎて手が出せないんだ。
(こんなに綺麗だからね仕方ないね。)
「それはそうと、私のことについて話しておきましょうか。」
黒宮は、なぜふなっしー軍団こと、謎の組織『スート』に追われているのかを、わかりやすく箇条書きで話してくれた。
・まず、スートとは地獄高校の学生で構成された麻薬密売グループ。
・黒宮はスートにメンバーとして加入するように勧誘された。その美しさを使って一気に麻薬を広めようとしたいらしい。
・それを断ったら追われるハメになった☆
「なるほど、完全に大体分かった。」
「そんなことで追われてるんです。なんとか田中さんが守ってくれて、諦めてくれればいいんですが……」
「っ!」
田中は気づいてしまった。
スートのやつらが黒宮を諦めれば、田中はボディガードの必要がなくなる。
つまり、そのまま関係が断たれてしまうかもしれないッッッッ!!!
(コイツぁヤベェことになったやで……どうしよ。)
少し考えて、田中は一つの答えを出した。
スートとかいう組織をぶっ潰せば、黒宮さんとの関係は続くッッ!
ボディガードの役目は結局無くなるが、どうせなら全部潰した方が「きゃーアルティメット田中かっこいいー」ってなる可能性があるッッ!
「ようし分かった。そのスートとかいう組織、許せんなぁ……許せんなぁ!」
と言って、田中は急に走り出した。
「えっ!? ちょ、ちょっと!?」
急に奇妙な行動に出る田中に、黒宮は困惑する。
田中の速度は時速100キロを超え、先ほど走っていった原付に一瞬で追いついた。
「うわっ! な、なんだお前!?」
「シネェエェエエッッッ! 『豪烈唯大弾』ッッ!」
田中は原付を破壊し、ヤンキーを無理やり下ろした。
「さて、この学校で有名な強いヤンキーを教えてもらおうか。」
田中はヤンキーにそう聞いた。今朝のスートのメンバーは拳法使いだったから、強いやつはスートのメンバーかもしれないのだ。
「えぇ……?」
「早く答えろ! さもなくばムッコロス!」
「えぇっと、とりあえず最近有名な強いやつは……」
アルティメット田中は、強いやつの情報を掴んだのだった。
「なるほど、確かに強そうな名前やで……!」
その名前とはッ!
「ゴードンEX、か……」
*
「……ボス、怪しいやつがナワバリに侵入してきました。」
とある工場の跡地、怪しいヤンキーたち(やっぱり北斗の拳みたいな格好)が十数人集まっていた。
「ほう、この俺、ゴードンEXがいると知っての愚行か。」
「それが、ソイツはボスと戦いたがってるようで。」
「ほう……」
そのとき、工場の外から悲鳴が聞こえてきた。
それと同時に、アルティメット田中と黒宮が工場に姿を現した。
「ようやく見つけたでぇ! ゴードンEXッッ!」
「ねぇ、やっぱりやめましょうよ……」
黒宮が田中の制服の裾をぎゅってする(語彙力)
田中のテンションが上がった!(ドラクエ方式)
だが黒宮は本当に怯えていた。なぜなら……
「この俺に勝負を挑むとはな。その威勢は褒めてやろう。」
ゴードンEXは、怪しげな仮面をつけたノースリーブのタンクトップの二メートル越えの巨漢だったのだ。