40話 初のパーティー生配信がPPVなんですけど? ⑤
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「さて、俺はさっさとダンジョンコアを売っ払って、桐斗と姉貴夫婦と雪乃ちゃんと清川ご夫妻と一緒に、この腐った国からおさらばするんだ!
さっさと姿を現しやがれ!!」
俺は虹色の光を放つ召喚魔法陣に向かって声を張り上げた。
程なくして光が収まると、金属製のマネキンのようなモノが現れた。
《あれって…4年前にメキシコを壊滅させたヒュポポニムスじゃねえか!?》
《マジかよ…イケメンニキ!ソイツは肉弾戦オンリーだが、めちゃくちゃヤベエ!》
《パンチも蹴りも危険だ!どうにか逃げた方がいい!》
《ヒュポポニムスは海水に沈めないとダメだったはず》
《スクロールで逃げろ!》
《いや、スタンピードになったらメキシコの時みたいに、あのバケモンが外に出て来るんだろ?
ニキに倒して貰うしか方法は無いだろ!》
《アメリカとカナダのSSランククランの中でも精鋭パーティーが合同で戦って、何とか海に沈めたヤツだぞ!》
ヒュポポニムス…あのニュースは知っている。
SSランクパーティー連合の精鋭達も6人が殺されてる筈。
確かにコイツはめちゃくちゃヤベエが…魔物には珍しくキックボクシングをするんだよなぁ…
パンチも蹴りも絶対ガードしちゃダメなくらい超威力なんだが……一格闘家としては、キックボクシングでヤりたくなっちゃうんだよなぁ……。
「コイツならまだマシな方かもな…。
あ、今の内に言っとくが、コイツを倒したら俺は自分の家族と雪乃ちゃんと雪乃ちゃんのご家族を連れてアメリカに行く。
小森のようなクズがダンジョン管理省の大臣として権力を振り翳すような国に、俺は残るつもりは無い。
あと、JSAの柊剛造が会長というのも反吐がでるしな」
《マジかよ!イケメンニキが居なくなったら、日本はどうなるんだよ!?》
《ちょっと俺、小森をボコボコにして来るわ》
《小森マジで氏ね!》
《イケメンニキ、小森と柊56して来るから日本に居てくれ!》
《“素晴らしい!ユーキとユキノがアメリカに来てくれるなら大歓迎だ!”》
《ふざけんなよ小森と柊!!マジ許さねえ》
《そもそも国定依頼は対応困難な異常が有った場合、任務を放棄しても罰則が無いんだよなぁ。一大臣の権力で法を捻じ曲げるとか、大問題だろ》
《“アメリカは優秀な探索者を優遇するから、是非アメリカに来てくれ!!”》
《ニキがヒュポポニムスを討伐してる間に、都民全員で小森と柊56しに行こうぜ!》
良し、これで大きな社会問題になる筈だ。
一応犯罪を煽らないように釘を刺すか…
「ああ、コメ欄にあるように小森や柊を殺したりボコすのは止めろよ。
だが、アイツが全ての権力を失い、柊剛造がJSAから居なくなれば、日本に留まっても良い。
さて、あちらさんの準備も整ったみたいなんで、討伐して来ますわ」
召喚魔法陣が消えた事を確認した所で、俺は全力でヒュポポニムスに接近した。
今回は出し惜しみはしない。
【ジャイアント・キリング】発動!【魔闘戦鬼】スキル全開!!
【ジャイアント・キリング】は格上との戦闘時にのみ発動可能なスキルで、相手との戦力差が開く程、ステータスが爆上がる。
SSランクのコイツが相手なら、俺のステータスは今50倍以上になっている筈…
バギャァァアン!!
俺がヤツの射程に入った瞬間、凄まじくキレのある左ローキックがヒュポポニムスから放たれた。
ヤツの初動を見て反射的にカットをしたが、めちゃくちゃ痛え!!
左脚がもげたかと思うほど痛え!
だが、蹴ったヤツの脚の方もヤバいな……脛の辺りに若干ヒビが入っている。
ブボオォッ!!
体制不十分で無理矢理打って来たヤツの右ストレートは、余裕を持ってサイドステップで躱す。
だが、ローを食らった左脚が少し痛んで、ほんの僅かだが反応が遅れてしまう。
その一瞬の遅れをヒュポポニムスは見逃さなかった。
シュゴォォォオン!!
ヤツから続け様に放たれた左フックによる衝撃波によって、俺の身体は切り刻まれながら吹き飛ばされた。
直後、ボス部屋の超硬質な壁に背中を強く打ち付けられ、一瞬で肺の中の空気が外へと押し出される。
「かはぁっ!!……はっ……はっ……
……はっ……ま、マズい……な……」
ヒュポポニムスはその場で次々とコンビネーションを放っている。
衝撃波を飛ばせるヤツは、距離を詰める必要は無い。
繰り出された全ての打撃から凄まじい衝撃波が発生し、壁にめり込んだ俺の方へと押し寄せて来る。
ズドドドドドドドメキャァァァアッ!!!
全身を押し潰すような圧と共に、体表を無数の鋭い刃で切り付けられるような感覚に襲われる。
《ニキーーーー!!》
《あああああ!!雄貴サマぁぁぁあ!!》
《マジかよ、クソ!!》
《嘘だろ》
《小森と柊のせいでイケメンニキが死んじまった》
《終わりだ……関東一帯はもう終わった……》
《“何て事だ!日本はメキシコと同じ道を辿るのか!!”》
《待て、ニキが立ち上がるぞ?》
《お、おい、あちこちから流血してるのに無理するな》
《もうスクロールで逃げてくれ!》
「……ふ……ふざけんな……
……あんなヤツから……逃げるだと?
あの程度のヤツから逃げるような父親が、桐斗の誇りになれる訳ねえだろうがぁぁあ!!」
コメ欄に目をやった俺は思わずブチギレて叫んでしまった。
決して強がりじゃない。
【ジャイアント・キリング】で一気にステータスが爆上がりしたので、身体がまだ莫大な力に慣れていなくて攻撃を受けてしまっただけだ。
身体のあちこちに切り傷は有るが、こんなモノは擦り傷程度。
衝撃波は見た目が派手な反面、どうしても威力は分散される。
俺が壁に打ち付けられた時に距離を詰めて、力が集約した打撃を直接打ち込んで来なかったのがヤツのマズ過ぎた点である。
それに、ヤツがあの場でシャドウボクシング的に手足をぶん回してくれたおかげで、ヤツの攻撃のパターンや初動のクセはある程度把握出来た。
身体の方も随分と爆上がりしたステータスに慣れたし、此処からは一気にギアを上げさせて貰うぜ!!
俺は絶え間無く放たれる衝撃波を直撃しない程度に躱しつつ、ヒュポポニムスの方へと距離を詰める。
「此処からは俺のターンだ!【モード:ブースト】!!」
俺は戦闘スキル【モードセレクター】の中で、物理攻撃の出力を大幅に上げるモードを使用すると、俺の急接近に慌てた感じのヒュポポニムスが放った右のオーバーハンドブローをサイドステップで躱す。
ドメキャァァアッ!!!
リターンの右ローが、ヤツの亀裂が入った左脚をへし折った。
ヤツは左フックのモーション。
大きくダッキングして躱す。
リターンの右ボディアッパー。
ヤツがバランスを崩した。
右ローで追撃。
コンビネーションに繋げる。
足位置スイッチから左ストレート。
右フック。
左ローでヤツの奥脚を潰す。
ヤツはがむしゃらに腕を振るだけ。
反射的にサイドへステップ。
ヤツは空ぶって体勢を崩した。
死角から耳裏(ヤツに耳は無いがその辺り)に右フック。
前のめりに倒れる所で再びヤツの前に回り込む。
ヒビが入った顔面に左の膝蹴り。
《おいおいおいぃぃぃい!!》
《マジかよ!マジかよ!マジかよ!》
《イケメンニキ最強!イケメンニキ最高!イケメンニキ至高!》
《“信じられない!単騎でヒュポポニムスを圧倒している!!”》
《感謝します!感謝します!感謝します!感謝します!感謝します!感謝します!感謝します!感謝します!》
《“アイツ一体にファッ◯されたメキシコの立場は…”》
《これで、心置き無く小森と柊を56しに行けるぜぇぇえ!》
《私をユーキ様の肉◯器にして下さい!》
ドローンに固定したスマホの画面には次々とコメントが流れて行く。
まぁ、他の奴らが何を思ってるか知らんが、さっさとコイツを片付けよう。
それにしても、コイツが魔法や特殊なスキルを使わないイレギュラーボスで助かった…。
ステータスが鬼高いだけの強打撃ブン回し野郎だからこそ、【ジャイアント・キリング】で優位に立てただけだ。
もし、ケルベロスの上位互換的なヤツだったら、ガチで危なかったかも知れない。
俺は左脚がボロボロになり、身体のあちこちに亀裂が入った金属マネキンが、腕力だけで繰り出した棒立ち右ストレートをヒラリとサイドに躱した。
前に蹌踉けるヒュポポニムスの無防備な後頭部に、既に充分な体勢を整えている俺はノーモーションで最速最強の一撃を叩き込む。
「桐斗、雪乃ちゃん、見てるか〜!!
超魔力ラビットパンチ!!!」
ズギャアアアアアアン!!!
俺が放った渾身の右ストレートが後頭部に着弾すると、ヒュポポニムスの金属製の頭部は爆散した。
ドロップアイテムはめちゃくちゃ高そうな金属のインゴット20本と大きな魔石、そして金色のスクロール……所謂『スキルスクロール』だ。
これらは絶対に高額なヤツだ……
俺はドロップアイテムを速攻で【アイテムボックス】に収納した。
《パンチじゃなくて最早大砲www》
《BRAVOOOOOOOOOO!!》
《最後は反則技で草wwww》
《ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!》
《神城雄貴様、あなたのお陰で東京は救われました。本当にありがとうございます》
《小森と柊は四んだ?》
《間違いなく世界最高の探索者!!》
《スパチャが贈れないのがもどかしい!!!》
《イケメンニキは今世の勇者で間違い無い!》
「ハイ。討伐完了!
おっ!アレがダンジョンコアか。アレを持ってアメリカに行くぜ!
日本の皆んな、達者でな〜!!」
俺は手短に締めの挨拶をしてボス部屋奥に現れたどデカいダンジョンコアを台座から外すと、部屋の中央に現れた地上への帰還用魔法陣でさっさとズラかったのだった。




