39話 初のパーティー生配信がPPVなんですけど? ④
「あ〜あ、コレマズいんじゃね?
ちょ、池崎ディレクター!この映像見てんだろ?
アンタの指示で時間潰してたらこのザマだぞ〜!」
魔素や瘴気を測定出来る高性能ドローンが発した避難指示は、PPVを購入した視聴者達にも聞こえただろう。
俺は後から責任を問われないよう、大声でドローンに向かって黒幕の名前をゲロった。
コメント欄は完全にパニック状態である。
《おい、今スタンピードが発生するとか言わなかったか!?》
《は!?ボス部屋の前から動かなかったのって、アルマンのディレクターの指示だったのか!?》
《ウチ、吉祥寺住みなんだけど、どうすんのコレ!》
《ブザーみてえな音も鳴ったし、多分測定器が避難警告をだしたんだ!》
《異常が起きかけてるダンジョンの国定依頼なのに、ボス部屋前で待機させるってディレクター頭おかしいのか!?》
《俺の嫁が出産で吉祥寺の病院に入院してんだぞ!
何かあったら、アルマンの首脳陣ぜってぇ許さねえからな!!》
《クソみてえな指示を出した無能ディレクターは氏ね!》
はぁ…池崎からBOIN通話が来たよ…コイツはマジで…
俺はイラッとしながら通話に出た。
「おい、どーすんだよ池崎ディレクター。
アンタが2時間くらい時間を潰せっつーからボス部屋前でダラダラしてたんだぞ!?」
『ちょ、ちょっと!神城さん!
ドローンが音声拾ってるんですから、俺の名前を出さないで下さいよ!
それから、俺が待機の指示を出したのはこれ以上話さないで下さい!』
「ああ、無理だわ。
スピーカーにしてるから、今のアンタの音声もドローンの好感度マイクが拾ってるぞ。
つーか、ボス部屋から嫌な感じの魔力がビンビン来てっから、俺らはこれから避難用スクロールで地上に戻るわ」
『ま、待ってくれ!
君達が対処しなかったら、12時間後にスタンピードが発生するかも知れないんだぞ!?
俺が責任を取らされるだろうが!』
「馬鹿か?
何で良く知りもしないお前なんかの為に、確実にヤバいのが召喚されるボス部屋に挑まなきゃならんのだ?
幸い俺ん家は吉祥寺から離れてるから、スタンピードが起きても東京を離れるくらいの時間はある。
俺の可愛い桐斗が帰りを待ってるのに、命なんて賭けられるかよ」
マジで自分の保身しか考えてないクソ野郎は、クズ丸出しの事しか言わんな。
どーせ、後追いでPPVを購入している海外層が増えてるから、放送枠を極力引き伸ばそうって腹づもりだったんだろ。
現に同接が2,000万を越えてるし。
《イケメンニキがボスを倒さなかったら、東京は終わりじゃねえか!》
《埼玉や神奈川も終わりだな》
《速攻で関東圏から離れるしかねえ》
《イケメンニキって自分が良ければそれで良いんだな》
《ハイ、東京終了〜!》
《イケメンニキ見損なった》
《俺は沖縄住みだから別にどうでも良いわ》
《ユーキさんを非難するヤツって何なの?
探索者なんて命あってナンボなんだし、変な正義感で死んでりゃ世話ねえわ。
文句言ってるヤツが東京の為にダンジョン凸すりゃあいい》
コメ欄も荒れとる…
此処は池崎に人柱になって貰うしかねえな。
「なぁ、池崎ディレクター。
こんな事になったのはお前の責任だ。
まだ12時間有るんだから、初心者ダンジョンでスライム3匹倒してレベリングして、ここを攻略しろよ」
『ふ、ふざけるなぁ!!
ダンジョン踏破はお前らド低脳探索者の仕事だろーが!!
ボス部屋は目の前…ぐべらぁっ!!!
…
神城君、柊だ』
「会長か。池崎をボコったのか?」
『いや、軽く眠って貰っただけだ。
それより、小森大臣から連絡が入った……
……
国定依頼を途中で降りる事は許さないという事だ…』
柊剛造の言葉を聞き、俺は怒りがマックスに達した。
「なぁアンタ……マジで言ってんのか!?
今も安全な場所で椅子に踏ん反り返ってるクソ野郎の指示に従って、実の娘を死地に送り込もうっつーのかよ!!」
『……
……そうだ。
あ、彩音も私の娘だ…緊急時には命を捨てる覚悟は有る筈だ…』
「ふざけんなよ、この野郎!!
そんなクソみてえな命令に従えるか!
俺は年長者として、雪乃ちゃんを無事に清川さんご夫妻の所に送り届ける責任が有るんだ!!
さぁ、雪乃ちゃん、彩音。避難用スクロールで地上に戻ろう」
『そ、そんな事をすればどうなるか分かっているのか?
『ガチ勢』のメンバーはスタンピードの責任を押し付けられるんだぞ!?
小森大臣の力を甘く見ない方がいい。
国定依頼を降りたら、君らやその家族はまともに生きて行けなくなるだろう』
クソ!この国の連中は何処まで腐ってやがるんだ!!
このクソジジイが探索者を第一に考えていない事がコレでハッキリした。
だが、こんな時に恨み言を言い続けても意味は無い。
相手はバックに国の有力者が付いている。桐斗を攫ってでも俺たちにボス討伐を命じるのは明らかだ。
ここは誰かが犠牲になるしか無いだろう。
「つくづく汚ねえヤツらだな…
雪乃ちゃん、彩音……君達を『ガチ勢』から追放する。
このスクロールは餞別だ。
俺は国定依頼を降りられないみたいなんでな…1人で行ってくるわ」
「そんな…嫌です!
私は絶対にユーキさんと離れないですから!」
「私も絶対に嫌ですわ!
将来の旦那様を見捨てるような真似は絶対に出来ないのですわ!!」
雪乃ちゃんと彩音が目に涙を溜めて俺に縋り付いて来た。
「頼むよ…このまま3人で挑んでも、ボス部屋に居るヤツに勝てる可能性なんて大して上がらない。
雪乃ちゃん、地上に戻ったら桐斗を真っ先に守って欲しい。
こんな事は雪乃ちゃんにしか頼めないんだ。
何…イレギュラーボスなんて俺1人で何とかするさ。
桐斗を残して死ぬつもりは無いし、雪乃ちゃんが大学を卒業したら俺の嫁になって貰いたいし。
こんな所で死ねないよ」
俺の言葉を聞いた2人は泣き崩れた。
俺は2人のそばにスクロールを置いて、1人でボス部屋へと入って行った。




