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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍&コミックス1~2巻発売中!】   作者: K1you
消えた大魔導士編

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世界の真理 その一部 1

 芙蓉舞衣(わたし)に扮した何者かが見せる夢の中にいると思っていたら、仕掛け人はノーラだった……、いや、いろいろと訳が分からない。


 これまでの夢も実はノーラだった?

 流石にそれはないと思う。

 これまでも悪意の類は感じられなかったけれど、それに加えてノーラにはそんな事をする理由がない。


 今なら、行方不明になった私と連絡を取るためと言う大義名分がある。だからと言ってどうやって? とは思うものの、親友の声は聞き間違えない。

 私が知らない間に何か新しい特殊能力に目覚めた?

 それともずっと前から超常能力者だった?

 把握していた魔眼の能力が一部だっただけ?


 ――落ち着いてください、スカーレット様。わたくしも全てを把握できている訳ではありませんが、できる限りで説明させていただきますわ。


 あ、うん、ごめん。

 青天の霹靂も同然で随分と混乱しているらしい。ノーラに諫められてしまった。


 ええと、とりあえず私は今、一体どういう状態なの?

 そこを明らかにしておかないと何となく落ち着かない。私の認識的には無防備な状態で温泉に浸かっている訳だし。


 ――わたくしはスカーレット様の記憶を読み取っているだけですので、スカーレット様に直接何かをした訳ではありませんわ。ディルガーム……ですか? スカーレット様はそこのアスアードと言う方のお屋敷でお休みになっていると思います。わたくしが干渉できるのはスカーレット様が外界との接触を断っている時だけですから。


 記憶? 読み取る? 外界との接触? 私が説明もしていない情報がまた伝わっているあたり、とんでもない事してない?

 ノーラは何をしているの?


 ――今、わたくしは聖地デルヌーベンにいます。そこでスカーレット様の行方を追ったのですわ。


 え? は? デルヌーベンからディルガームを?

 どういう状況かまるで理解が及ばない。

 それでもノーラの声は白い東屋の向こうから聞こえてくる。その事実から考えれば、彼女はデルヌーベンにいると納得するしかない……のかな?


 まるで話についていけない私へノーラが順を追って語ってくれた内容はかなり衝撃的だった。城から姿を消した後、私は世界から消失したものと見做されていたらしい。

 行方不明扱いはともかく、神様の御許へ旅立ったと思われていたとは頭が痛い。

 しかも、割と好意的に受け取られて王都ではお祝いムードなのだとか。戦時下だよね?


 いや、分からない話でもないかもしれない。

 転移魔法の実在が立証されていない以上、人が消えたなら超常的な干渉を疑うのは無理のない流れと言える。神様の誘いの伝承があるから尚更に。


 ――それにしても召喚魔法ですか。条件が限定されるとは言え、転移を実現できる遺跡の存在は意外でしたわね。


 過去にそれが必要なほどの事態が起きたんじゃないかな。

 考えてみれば、南大陸では無し人の存在が意外なほど受け入れられていた。神様の誘いに巻き込まれた人々、或いはその一部は南大陸へ喚ばれたとも考えられる。


 伝承にしか残らない現象だからこそ、身近で起こったなら大騒ぎになる事にも納得はできた。でもそれ、私が帰ると失望されない?

 その空気の中で、南大陸へ行っていただけですと報告するのは気が重い。

 もう少しこちらへ避難しておこうかな……。


 ――スカーレットさま゛ぁ~……


 いや、帰らないって選択肢はないから。

 そこで涙声になるのはズルいと思う。


 ――オーレリア様やウォージス様は、西と東の大陸でスカーレット様の目撃情報がないものか探っておられました。


 気を取り直してノーラが語ってくれた内容によると、東西で手掛かりが得られなかった皆は南大陸へ調査に向かう準備を進めていると言う。

 それは助かる。


 ――それでも万が一神様からの干渉を受けていた場合に備えて、わたくしはデルヌーベンでの調査を続けていたのです。


 そうして説明されれば、彼女が聖地にいる理由も分かった。神様の関与が否定しきれない以上、その場合の手掛かりはそこにしかない。

 信仰の総本山とされる大神殿は初代聖女生誕の地でしかないから。


 それで、どうやって夢の中の私と交信しているの?


 ――交信と言いますか、わたくしはスカーレット様の記憶を読み取って一部にわたくしからの伝言を上書きしているだけですわ。夢と認識しているのは、スカーレット様側で情報を整理した結果だと思います。


 はい?

 ちょっと理解が難しい。


 ――聖地に魔漿液で満たされた湖があったのを覚えておられますか?


 それは確かに。

 目の前にある白い東屋が浮いていたのも記憶にある。……と言うかこれ、聖地にあった実物じゃなくてノーラが語り掛けてくる象徴として(ゆめ)が作り出したもの?


 ――その理解でよろしいかと。フランさんに聞きましたが、スカーレット様は聖地に滞在する夢を何度も見ていらっしゃったのですわよね?


 あ、聖地に手掛かりを求めた起因は彼女だった訳だね。

 聖地の夢を繰り返し見ていたものだから、そこと私に何らかの繋がりが生まれたのだと考えたのかもしれない。


 ――はい、切っ掛けはそれでした。スカーレット様に接触した者の正体は分かりません。ですが、聖地とスカーレット様の間に繋がりができたのなら、逆にここからスカーレット様について探れると思ったのですわ。


 無茶だとは思う。発想が飛躍し過ぎだと指摘できなくもない。

 けれど、そんな細い糸を追うしかなかった気持ちも理解できた。神様の誘いだと世間が寿ぐ中で、そうではないと暗中模索する日々は精神的な負担が大きかったろうと想像できる。

 神様の御許へ招かれた者にメッセージを送る。

 普通に考えて実現できそうに思えない。手が届く筈がない、そう諦める者が圧倒的に多いと思う。薄情なのでなく、当然な事だとも。


 それでも、ノーラはやり遂げた。

 私は神様の御許へ向かったのではなく南大陸へ召喚されただけだとしても、海を越えた情報交換を実現した。聖地デルヌーベンから個人の夢へアクセスする方法を見出した。


 私には、どんな方法を辿ったものかも想像できない。

 おそらくは魔眼を利用して聖地の謎を紐解いたのだろうと思う。けれど彼女は、自分の知らない理論まで鑑定できない。魔道具で使役する竜を集めるために聖地を経由した際には、白くて眩しくて何も分からない場所と表現していた覚えがある。


 なのに、その一端を解き明かした。

 それはつまり、この世界を構成する根幹の現象を部分的に理解したという事でもある。


 そこまでの労力を思えば頭が下がる。その執念には心から感服する。

 魔眼があったとしても、世界の真理へ迫る道程が平坦だった筈もない。僅かな手掛かりから丁寧に情報と推論を組み立てて、その補助に必要な魔道具も自作し、足りない知見を埋めながら自身の魔法を進化させ、遂には奇跡へと辿り着いた。

 ……本当に凄い研究者になったね。


 ――ズ、ズカーレットざま゛ぁ~、ぐす……。


 ごめん、ここで泣かないで。

 ノーラにそこまでさせておいて、心配はしているだろうけど時間を掛ければ帰れるから、まあいいかな……と軽く考えていた私はどんな顔をすればいいのか分からなくなるから。

 気が付いてすぐに南大陸だと判明したから、そこまで深刻な状況だと思えていなかったんだよね。割と観光気分も抜けていないし。


 とりあえず、私を探すために皆が死力を尽くしてくれていたのは思い知った。

 ノーラが成し遂げた事については、何かとんでもない手段に到達したってくらいの理解でしかないけど。


 ――も、申し訳ありません……。とにかく調査した結果、あの湖は膨大な情報の集積体だと分かったのですわ。


 はい?

 情報?

 魔漿液の湖に?


 また新事実が飛び出して、頭がこんがらがりそうになる。

 でも落ち着いて考えてみれば、有り得ない話じゃないのかな。


 判明している事実として、魔漿液には魔法が溶けた。

 あれも一種の情報と言える。魔力を一緒に溶解させるから魔法が発動するだけで、待機している状態は魔法の設計図のようなものでしかない。そう言うものだと認識すれば、魔漿液に情報が溶けていたって話も受け入れる他なかった。


 それ以前にこうしてノーラと話せているのは歴とした現実なので、彼女の言い分を疑う余地は残っていない。


 そして何処から情報を得ているのかと考えれば、世界を魔漿液が満たしているからとしか結論付けられなかった。

 魔漿液は水とほとんど同じ性質を持っている。不可分である以上、スライムや魔物に限らずあらゆる物体に宿っていると思っていい。


 更にディルガームにいる私とデルヌーベンのノーラが会話できている事実から導き出せる答えは……魔漿液に記録された情報は空間を超える?

いつもお読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価をいただけるとやる気が漲ってきます。是非、応援いただければと思います。

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アカシック・レコードktkr?
最後に赴くことになろうかと思っていた聖地が鍵に!?
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