表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍&コミックス1~2巻発売中!】   作者: K1you
消えた大魔導士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

733/745

逆恨みの襲撃と闖入者

 狩人協会を出た後、私達は食事へ向かった。宿でも食事は出るのだけれど、ファイサルさんと合流するついでに外食する予定だった。偏向主義者達に煩わされたくないので、宿の女将さんにお勧めも聞いてある。


「……つけられていますわね」

「逆恨みかな?」

「獅子人である事に歪んだ誇りを持っているなら、虚仮にされたと思っていても無理ありませんわ」


 喧嘩を売ったのはこちらからじゃないのにね。

 受付でのひと悶着以外に心当たりもないので、ビロ……? とか呼ばれていた人物とその一味と見て間違いなかった。

 狩人協会への道中からジュートが待ち受けていた面倒事でもある。


「六……七人かな。お姉ちゃん、どうするの?」

「大通りにいる間は放っておいて問題ないと思うよ。人前で堂々と襲うような度胸はないだろうし」


 人数的にも脅威だと思えないので、ファイサルさんとの合流場所へ向かう。今日一日随分と頭を使ったから、栄養補給の方が優先度が高い。


 狩人協会は魔物や獲物を持ち込む関係上、町の入り口近くに立地する。買い取った肉や素材は市場へ卸すのだけれど、中には直接買い付けに来る商人もいるので、不便な場所は選べない。魔物の脅威を伝えるにしても、分かりやすい場所の方が都合が良かった。

 なので、町へ入ってすぐのメインストリートに建てるのが一般的となる。

 狩人が出入りするからその周辺には武具店や道具屋が多く、大儲けした狩人は財布の紐が緩むのもあって居酒屋や食堂が繁盛する。おしゃれに気を使う狩人は少ないものの、血で汚れたり穴が開いたりした衣服は買い替えなければならない。公衆浴場なんかも割と人気だった。要するに、狩人協会を起点に町の中心部まで商店街が続く。


 狩人が常駐しているも同然だから、治安もいい。

 こんなところで揉め事を起こそうとする間抜けは、余程の命知らずか、酔っ払いくらいしかいない。襲撃の可能性は無視して、予定の店へ急いだ。


 合流したファイサルさんも、不審な気配に首を傾げこそしたものの、警戒するタイミングではないと察して言及はしなかった。先に到着してたっぷり匂いを嗅いでいたのもあって、彼の関心も食事へ向いている。


 立ち寄ったのは鉄板焼きのお店だった。

 注文したお肉を豪快に焼いてくれる。今日は私もお肉の気分だったので、オーク肉のステーキとガーリックライスを頼む。このパーティーで口臭なんて、今更気にしない。


「政務館の方でも答えは同じでしたか」

「ああ、獅子人が指導者になれるのでなければ協力しない。その一点張りだった」


 分厚いレア肉に齧り付きながら、ファイサルさんが面白くなさそうに報告してくれる。エルフ打倒に関心はあっても、指導者の座を望む答えは同じだったらしい。


 これを無駄だとは思わない。

 少なくとも二か所で同じ見解を得られたって事は、大きな説得力がなければ進展しない。アル・サウル基地陥落の話をしても心が揺れ動かなかったのだから、理屈ではないのかもしれなかった。


「能力も分からず、信頼関係も築かず、指導者を任せられる訳もない。だと言うのに、指導者の確約がなければ協力できないの一点張りだ! 新政府の重要役職も提案してみたが、まるで聞き入れようとせん。まったく、どれだけ強欲なのだか……」


 ファイサルさんとしても、色よい返事がもらえて当然と考えていた。それが真逆の展開となったせいで、山盛りのステーキが次々と消えていく。せめてお腹いっぱいに食べるくらいでないと、腹の虫が治まらない様子だった。


「多分、個人的な要求ではないと思いますよ」

「うん? と、言うと……?」

「次期指導者が獅子獣人でなければ受け入れられない。そう言った空気が獅子人全体にあるのでしょう。住人の感情がそうである以上、有力者としても無視できないのではないかと」

「それは、獅子人至上主義とどう違うのだ?」


 そこを完全に分けて考えられないのが面倒なところではある。

 私達とファイサルさんの情報に差があった。サーリアさんと違って、裏事情までは教えてくれなかったらしい。


「お姉ちゃんの魔法を見せれば、皆を納得させられない?」

「うーん、どうだろ? 脅迫と捉えて反発する人も出るんじゃないかな。穏便には運ばないかも」


 それこそ、獅子人至上主義が邪魔になる。

 獅子獣人が最も優れていると言う思い込みが、現実から目を逸らせて頑なに私を否定する。ディルガーム軍にも一定数の至上主義者がいるって話なので、そんな信用できない軍隊なら要らない。


「ユーシアメイルからは往来が難しく、エルフと関わりが薄いのも難点ですわね。コートスォロのように、敵愾心を煽ると言う訳にもいきませんもの」


 ジュートの言う通りだった。

 だからこそ、利益を示さなければいけないとは思うものの、それで指導者の椅子は極端が過ぎる。


 さっきの今で良い考えも浮かばないので、とりあえずは食事に集中する。かと言って考えない訳にもいかないと、自然と口数は少なくなっていった。


 たまのオーク肉も美味しいのだけれど、私には少し脂っこい。だから早々に食事を切り上げ、熱いお茶で後味を洗い流す事にした。ミントティーの爽やかさに柚子と薔薇を加えた芳醇な香りを心ゆくまで楽しむ――筈だったのに、ジュートに急かされてほどほどのところで店を出る羽目となった……。


 そうでないと折角の襲撃者達が諦めてしまうと言われてしまえば、従う他ない。

 締め上げれば有力者とは異なる視点の情報を吐かせられるし、ストレスを溜めたジュートを傍に置いておくのもゾッとしない。

 そもそも、彼女はこれを期待して狩人協会までついてきたのだから、我慢させるって選択肢ははじめからなかった。そのために泳がしておいたと言ってもいい。


 幸い、私達の食事待ちに焦れて解散した様子はない。尾行している頭数は八人、むしろ増えているくらいだった。

 シャハブ曰く、足音を隠す気配はないと言う。ジュートによると、足運びが素人っぽいのだとか。同行者が狩人である可能性は低い。

 彼等は危機意識が強いので、二日続けて協会で揉め事を起こした私達には決して近づかない。当然、姿を現す前から練度の低さを露呈させるような真似もしない。お金で雇ったゴロツキの可能性が高かった。


「おい、待てよ」


 強面のファイサルさんと別れて表通りを逸れると、すぐに八人組は姿を現した。

 精悍なシャハブも、この国では目立たない。獅子人が一人くらい混じっていても、他が女性二人なら簡単に勝てると思ったのかもしれない。


 オーク十八頭を売りに来た現実は既に忘れたのか、大勢で狩ったものだと都合よく解釈したのか、人手集めの参考にはならなかったらしい。彼はその残念な頭の分、ジュートの拳をもらう事になる。


「よくも大勢の前で恥をかかせてくれたな! おかげで協会をクビになって、散々だ!」

「それだけ、協会にとって要らない人材だったという事ではありませんの?」

「き、貴様……っ!」


 大声を出せば恐れると思っていたのか、恨み言を並べようとした元職員をジュートが挑発する。彼の言い分などに興味はなく、さっさと殴り倒したいと思っているのは間違いなかった。


「あっはっは、ビラールさんよ、完全に舐められてんじゃねーか」

「狩人にも兵士にもなれず、町で弱い者いじめしかできない意気地なしを何人連れてきたところで、まるで相手になりませんわよ? 痛い目に遭いたくないなら、尻尾を巻いてお逃げになったらいかが?」

「俺たちゃ、良い子の狩人と違って手加減なんてできねぇぞ。粋がって後悔するなよ」

「あら、手加減する余裕があると思っていますの? おめでたい頭をしているのですね。流石、魔物が怖いからと町に引き篭もっているだけはありますわ」

「手前ぇ……、……っ!」


 仲間意識ゼロで笑っていたゴロツキ達も、ジュートに煽られて一瞬で頭が沸騰する。返り討ちにする気満々の暴力系貴族に気付かないまま、臨戦体勢となった。


 ここからは一方的な蹂躙が始まる――


「待て! 貴様等、大勢で女性を囲んで何をしている!」


 ――筈が、その前に乱入者があった。


「ア、アスラン様⁉」


 狩人協会で受付をしていた男は知っている顔らしい。

 大柄の獅子人で、身に着けた革鎧を使い込んであって貫禄がある。一方で腰に下げた剣の装飾や服からは高級感が隠せておらず、狩人としては異色に見えた。

 その人物がゴロツキ達を睨み、威圧感を漂わせている。

 暴漢達を許してはいけない。

 か弱い女性は守らなければならない。

 そう言った気概が溢れているようにも思えた。


「ま、待ってください、アスラン様。これは、違うんです。こいつ等が俺に……」

「言い訳など聞きたくないっ!」


 ……殴った。

 自分を敬称付きで呼び、弁明しようとする瘦身の男を問答無用で。


 対する闖入者はしっかり鍛えた丸太のような腕だから、荒事なんて自分では経験した事がなさそうな元協会職員は、紙のように飛んで行った。当然、白目を剥いてそのまま動かなくなる。


 この人、ジュートの同類かな?

いつもお読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価をいただけるとやる気が漲ってきます。是非、応援いただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コイツが獅子人主導主義の原因だったりして
問答無用すぎるだろw
スカーレットは、か弱い淑女のふりをして事情を話せばいいだけでは? ゴロツキたちの罪状が増えるだけなのだし(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ