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母が王太子妃になりまして。  作者: もっちりワーるど
2/12

母が輿入れするもので


住みなれた♪我が家を♪花の香りをそおえて~♪

っとどこかのCMソングが少し頭を掠りましたが…笑


今まで住んでいた場所を離れるって、感傷的になりますよね。



「さてと、こんなもんかな!」


私は、真っ黒になった雑巾を片手に、花屋の店内を見渡した。


毎日、その日仕入れた花を入れたバケツたちも、今は重ねられて店の隅に置いてある。

ハサミやラッピングのテープ、包装紙等が綺麗に並んでいた棚も、今はもぬけの空。

床もモップで綺麗にしたし、窓も今拭いてピカピカになった。

花屋だった店内は、がらんと殺風景になっていた。


そう。私達母娘は、今日からお城にお引越しするのだ。

“お輿入れ”ってやつだ。


『すったもんだあったけど…。どうにかなるもんなのねー。』

私は、2週間前の事を思い出し、頭を力なく振った。



~2週間前~



王太子様の求婚の後、私達はお城に行くと、王様とお妃様はそれはそれは困惑していた。

まさか息子が、庶民。しかも15も年の離れた母を本当に連れてくるとは思わなかったらしい。

しかし、息子に「頑張れ」なんて言っちゃった手前、今更反対することも出来ず、お2人は泣く泣く、母たちの結婚を了解したのだった。

貴族の中には、この婚姻に異議を唱える者が多かったとか。まぁ当然ですわな。

でも、ここまで立派な王太子に成長したのは、母テリーゼのお陰と言う王太子の言葉に、他貴族も口を開かなくなった。

王太子フレデリクは、母と私に出会う前、国内外で知らぬものはいない、不良だったのだ。


庶民の私も、一応商売なんてしていたから人の噂は聞こえてくる。うちの国は、王太子様が即位したらアウトだって。

だから日々お金を蓄えて、よその国へ移るのもアリかな~と考えていたぐらいだ。

そんな噂話も、数ある噂話の一つとしてしか認識していなかった時のことだ。

彼は現れた。

まさか、そのアウト(不良)が、目の前の彼(王太子:フレデリク様)だとは。誰か教えておいて欲しい。

王族の写真なんてこの世界にはないし。図書館の本にも、幼い頃の王族の絵しか描かれていないんだもん。

絵で、同一人物だって鑑定できたら、あたしは花屋を辞めて鑑定士になっていたね絶対。

と、まぁ冗談はおいておいて。


王太子とは知らずに、母と私、アメとムチで、恐れ多くも王太子様を教育したのだ。

最初は尖っていたフレデリクだったが、少しずつ少しずつ彼は変わりはじめた。

季節が2つすぎた頃、街で腫れもののような扱いを受けていた彼が、人々に受け入れられていき、好青年と変化した。

その時には、彼は母に恋をしていた。

ようは、母に惚れたから、好かれる自分に変わったってだけのような気がする。

母もまんざらじゃないみたいで、2人の距離は徐々に縮まっていき、今回の再婚となったのだ。


結果的に、彼の過去の悪行があったから、母との出会いになったわけで、運命の赤い糸というのは何ともやっかいな代物のようだ。


と、そこまで人の(実の母の)恋路を思い返していると、店だった入り口に思い返していたフレデリクが、立っていた。


「片付けは終わった?片付けは、城から人員を送るっていったのに、断って…。大変だっただろ?」


これだから権力者は。私は、汚くなった雑巾を床に置いてある掃除用バケツの淵に置くと、両手を腰に当て、胸を張った。


「いいえ。ここは私達のお店だったのよ。お世話になった場所を、見ず知らずの人にお願いするわけにいかないわ。最後まで、自分たちの手で“さようなら”をするのが、一番よ。」


「…君は、本当に15歳か?」


私の言い分に、フレディが呆れた顔をするので、私はくるっと身体の向きを変え掃除用バケツを持った。

そして、彼に振り返り笑う。


「貴方は本当に20歳ですか?お父さん。」


そう言い残し、私は部屋の奥にある勝手口へ移動し、バケツの中の水を捨てた。

空っぽの店に残されたフレディは、「お、お、お…お父さん!!!」とか、喜びの歓声が聞こえたのは、きっと気のせいじゃない。


「あら、フレデリク。いらっしゃい。」


そんな声が聞こえたところで、母が2階の部屋から降りてきてフレディと会っていた。

私は、勝手口の扉を閉めたが店には戻らず、入り口のところからそっと見守ることにした。


「テリーゼ!今!今、イヴに、“お父さん”って言われたよ!!」


と、どさくさに紛れて、母に抱き着くフレディ。

あたしの「お父さん」攻撃ってそんなに嬉しいか?

いや、この抱擁はあたしの件を出汁に使って、お母さんを抱きしめているだけな気がする。


「ふふ、良かったわね、あなた。」


「俺…いや、僕は嬉しい。」


両親になる2人を見て、少し切なくなった。


今まで、母と2人。抱きしめるのも抱きしめられるのも、母だけだったのに。

母の腕には、これから父になるフレディがいる。

前世での親子間は、結構ドライだったのに。生まれ変わると、感情も少し異なるらしい。

まぁ、同じ人間じゃないわけだし、そうだよね。


私は、2人を見るのが、寂しくなり、背を向けて勝手口から外に出た。


見上げる青空は、どこまでも青く。

私達母娘の門出を祝福しているように見えた。


後一話は、今日中に書いてしまいたい!!

頑張れ、私!!

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