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ペルソナ  作者: ウミネコ
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最終章『Zero・dark・hour』第七話

 皇花蓮。

 ドヤ顔で宣言する月夜は、確かにそう言った。

「……つまり、如月花蓮の身体に零の兄貴と花蓮さんの人格、その二つが宿ってるんスか?」

「平たく言えばそうね!」

 ……事実を確認しただけなのに、更なる強い目眩が帝人を襲う。

「……多重人格障害とかの可能性はないんスか?」

「まあ似たようなものね。一人の人間が別の人格を演じる、なんて事もあるけど、目の前のソレとコレは完全に別次元ね。

 別人格の交代は、大抵記憶を別個にしてるけど、アレは違う。互いが互いの記憶を共有しているもの。

 アレは如月花蓮であると同時に、皇零でもある。つまり、合体して皇花蓮よ!」

 なんて安直な。

 帝人は実の姉に対してそう思ったが、黙っている事にした。

 そんな事にツッコんでいるよりも、他に聞きたい事がある。

「じゃ、じゃあ何で花蓮姐さんが実の妹である結維の姐さんを攻撃するんスか? 二人は仲良しのはずなのに……」

 帝人がそう言うと、高らかな笑い声が響く。

「……何がオカシイんスか?」

 帝人は花蓮を睨む。

「……ッフ、だって、私と結維が仲良しだなんて言うんだもの。こんな面白い勘違いを堪える方が難しいわ。アハハッ!」

「……なん……だと?」

 帝人は耳を疑う。

 過去に読んだ資料や監視した結果で、姉妹の仲は良好だとあったのに……。

 自問自答している帝人をよそに、花蓮は茫然としている結維に近づく。

 結維の髪の毛を掴み上げ、彼女の頬を思いっきり、ひっぱ叩く。

「……ッ――ゥ」

 結維の唇が裂け、血がツゥー、と垂れた。

 なおも叩こうとする花蓮に、帝人は飛びかかった。

「ヤメロォォッッ!!」

 殴るも、軽くかわされ帝人は地面にすっ転ぶ。

「無様ね」

 花蓮は足で、帝人を踏みつける。

「貴方は昔から陰でコソコソとしている子供だった。裏方の支援が貴方を輝かせる場所。皇の家系らしくない貴方を、私は買っていたのにね」

「あ……ぐぅ……ッッ!! クソオッ!!」

 ジタバタともがく帝人を、花蓮は鼻で笑う。

「まるで羽虫ね。羽を無くした惨めな虫。本来の場所を離れると、人はこうも愚かになるのかしら?」

 それもそれで興味深いけどね、と花蓮は言う。

「さて、話を戻すけど、私が結維と仲良しさんだっけかしら? ――ハッ、笑わせないで」

 花蓮は結維に向き直る。

「私が結維と仲良しぃ? そんなの、客観的に見ただけで、周囲が勝手に決めていただけ。つまり思い込みよ。本当の私は、他の誰よりも結維を疎ましいと思っていた」

 花蓮に睨みつけられ、結維はビクッと震えた。

「……あの子は、毎日毎日『お姉ちゃん』といって私に纏わりついてきていた。初めは私も、そんな結維を可愛いと思っていたけどね。だけど――そう、それも長くは続かなかった」

 花蓮はスーツのポケットから、白い仮面を取り出し放り投げる。

 カランカラン、と乾いた音が反響する。

「あれは……」

「そう、結維が『YUI』として活動する時の仮面。あの子、アレをつけて歌ってるんでしょ?」

 無言の帝人を見て、花蓮は満足気に頷く。

「やっぱりね。貴方の反応で確信に至ったわ」

「――ッ! だから何だ! それが何だって言うんスか!? そんな仮面一つと、結維の姐さんと何の関わりがあるって言うんスか!?」

「そうね。仮面自体は何の変哲もないただの仮面。だけど、あの仮面がきっかけで、私は全てを失う事になった」

「……どういう事っスか?」

 気遣わしげな帝人に、花蓮は自嘲して応える。

「なぁに、簡単なお話よ。高校の演劇で使っていたあの仮面を結維がライブで使った。そしてそれを目撃した裁也が、私をゼロの共謀者と結びつけた。裁也が学校にいる時は、あの子の前じゃ、絶対に見せなかったんだけどね……」

 それは過去の話。

 花蓮が、零の右腕として活動していた時期。

 そういえば、と帝人は思い返す。

 ゼロの側には、常に白い仮面をつけた奴がいた。

 正体は知らなかったし、当時はさして帝人も興味を持たなかった。

 まさかそれが花蓮だとは……。

「……家に持って帰っていた私は、まさか結維が持ち出すとは思わなかったわ。服を貸し借りしても、まさか仮面を使うとは思わないもの。そしてそれが、破滅に繋がるともね……」

「………………」

 帝人は何も言えず、ただ黙る。

 気遣わしげな視線で花蓮を見た。

「まあそれも所詮は結果論ね。どの道、裁也には遅かれ早かれバレてただろうしね」

「――なら!」

「それでもっ!」

 帝人の言葉に畳み掛けるように、花蓮は言う。

「それでも、私の全てを奪ったこの子を、私は、許せないのよ……」

 ナイフを取り出し、花蓮は妹に接近していく。

 餓死寸前の獣が、やっと見つけた餌にありつくような目付きで。

 親を殺した人間を見つけた、復讐する子供のような目付きで。

 花蓮は、結維に近づいていく。

「あっ……ああっ、イヤ……イヤッ!!」

 後ずさりしながら、結維は後退していく。

 だが恐怖で身体を支配されてるようで、足がまともに動いていない。

 ――あれじゃ殺されちまう!

「月夜姉さん!!」

 帝人が叫ぶと、月夜はキョトンとしている。

「何よ帝人?」

「頼む! 結維の姐さんを護ってくれ!」

「嫌よ。私、戦闘力ないもの。私が殺されちゃうわ」

「この役立たず!」

 お前は別に殺されてもいいのに!!

 何か他に助けがないか、と周囲を見渡す。

 だが裁也は未だ悪夢に囚われている状態で、帝人は身体が動かなかった。

 クソッ!

 帝人は下唇を思いっきり噛む。

 このまま結維が殺されるのを待つしかないのか!

 そんなのは嫌だ、と全神経を総動員して命令を下す。

 だが、立ち上がる事すらもままならない。

「結維ネエ――ッ!! 逃げろ! 逃げてくれ――ッ!!」

 帝人が叫ぶも既に時遅く、花蓮が振り上げたナイフは、いま正に振り下ろされる瞬間だった。

「じゃあね、結維。来世でも、また貴女と姉妹になりたいわ」

「おねえ……ちゃん……」

 怯える結維に、花蓮は微笑みながら刃を振り下ろす。

 ナイフは、結維ではなく花蓮に深く突き刺さった。

フェイトのスピンオフ作品fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤが面白すぎて困っている。

大人観賞してるが、時間がなくなっていく。だが面白い。

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