第二章『皇製薬会社の闇』第二十二話
石杖裁也は憎悪を孕んだ瞳でゼロを睨む。
皇月夜は怒気を滲ませた瞳でゼロを睨む。
月夜はモニターの前に置かれてあるマイクを掴み、ゼロに呼びかけた。
「ちょっとアンタ! 今までどこに行ってたか知らないけど、急に現れて何言ってんのよ!」
『何とは?』
「これは、〝私〟の祭りよ! アンタの祭りじゃないわ!!」
『ハッハッハ! これは異な事を言う。妹の不始末を、兄が引き継いで何がいけない?』
「ぐぎぎっ……! 裏切り者のくせに、偉そうにしやがって!」
『実際、私の方が偉いのだよ月夜。君は偉大なる兄の影に隠れてコソコソとネズミのように這いずり回っている方がお似合いさ』
「……っこの! 誰が! アンタを! 二年前に助けてやったと思ってんだ!! 誰が、アンタを引き立ててやったと思ってんだ!! この私でしょうが!! 覚えてないとは、言わせないわよ!!」
月夜ががなると、モニターの中でゼロがフム、と頷く。
『その事には感謝してるよ。だが妹よ。偉大なる兄は、時には非情になりきらなければならないのだよ。それが王たる〝皇〟の務めだ。その事は、お前もよく認識しているだろ?』
「それは……」
月夜はゼロの言葉に反論しなかった。
〝皇〟の家系に生まれてきた者は、その頂点に立つ責務がある。
優秀な家系だからこそ、血と謀略と騙し合いの中での過酷な競争を強いられ、より優秀な子孫を残す為に、兄妹間で相争う。
月夜はゼロを喰らい尽くそうとした。
だがゼロの方が、月夜より優秀だった。
弱肉強食、自然の摂理の結果。
だからいち早く競争から脱落した帝人は、より上位の人間である月夜に喰われたのだ。
いまボロ雑巾のように転がっている帝人は、自分の不注意で、自らを破滅へと導いたのだ。
月夜は言葉を失い黙りこむと、ゼロは視線を裁也へと移した。
『改めて言おう。久し振りだな、石杖裁也』
「ああ……。そうだな、クソ野郎っ」
裁也はいつもの冷静さもなく、中指を立てゼロを挑発する。
『ハッハッハ! 裁也よ、あの頃のようになったじゃないか! 一緒の高校にいたのが、いま思うととても懐かしいぞ』
「うるせえっ! 人を将棋の駒のように弄びやがって! 全部が全部、お前の盤上で転がせると思うなよ!!」
裁也の脳裏に天皇寺学園に潜入してた時の記憶が再生される。
ゼロが天皇寺学園にいるとの情報を一から教えられ、その正体を探っている最中にゼロと出会った。
初めて自分を理解してくれる人ととも、そこで出逢った。
なのに、コイツは――ゼロは、その時裁也が出逢った大切な人を、嘲笑しながら殺した。
――絶対に、許す事は出来ない!!
ギロリ、と苛烈な視線をゼロに浴びせる裁也。
「……お前が復活したって言うんなら、何度でも殺してやる! 殺して、殺して、殺し尽くしてやるよ!! 二年前のようになあっ!!」
『フン。あの時は、些か予想外の事が起きたからな。だが、今回はあの時のように行かない。花蓮も私に味方してくれている』
「……なっ!?」
――花蓮だと!?
結維の姉である花蓮の名が、何故今出てくる?
「どういう事だ、テメエ!! 花蓮はもういねえだろ!!」
裁也が怒鳴ると、ゼロは高らかに笑った。
『愚か! 愚かな質問だ、裁也よ!! 私が生きているように、花蓮も生きていると何故考えない!!』
「ざけんな!! 花蓮は……花蓮は、あの時、テメエが殺しただろうが!!」
結維が必死に花蓮の手を握っている光景が、昨日のようにリフレインする。
『フッフッフ。彼女は生きているぞ。そこの不肖の妹に救われてな』
「そんな……、そんな……、そんなバカな事があってたまるか!!」
花蓮は紛れも無くタワーの最上階から転落した。しかもゼロよりも先に、だ。
如月花蓮の死は、必然のはずだ。
だが。
だが、モニターに映っているこの男を見ると、彼女も〝もしかしたら〟という可能性に裁也は縋り付いてしまう。
『真偽を確かめたかったら、奥へ来い! そこで嘘か真か判明するはずだ!』
「……言われなくても、行ってやるよ!!」
『フフッ。真実を知った時、君はその重みに耐えられるかな?』
ブツン、と一方的に通信が遮断される。
裁也はワナワナと怒りに打ち震え、駆け出す直前、放心している月夜が視界に映った。
「……先、行くからな」
呟き、裁也は扉に向かう。
燃え盛る室内に月夜は残り、遠くを見つめるように、微動だにしなかった。
裁也が室内から消えた後、機を見計らった様に、動き出す人間がいた。
「………………」
ロゼが感情を失ったマシンの様に、ムクリと起き上がる。
そして決められたプログラムに従い、室内からとある容器を持ち出して、姿を消した。
月夜は半ば放心状態で、ロゼがいなくなった事に気付くことはなかった。
サイコパス新編集版が近々放映されるようだ。
しかも第二期も始まり、終いには劇場版。
好きな作品だったのでwktkな気分です。




