表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペルソナ  作者: ウミネコ
PR
35/77

第二章『皇製薬会社の闇』第十五話

 ――クソッ、クソッ、クソッ、クソッ……!!

 石杖裁也は、胸中で自分を罵倒しながら路地を歩いていた。

 すぐ後ろでは如月結維が心配そうに、付かず離れずついて来ていた。

 裁也の機嫌を窺うようにしているのが丸分かりで、それが裁也にとっては煩わしい。

 ……イライラする。

 この無性に腹立たしい気持ちは、自身の不甲斐なさからくるものだ。

 石杖裁也。

 テメエは、二年前から何も成長していないのか?

 あの頃感じた悔しさは、屈辱は二度と味わないと決めたのではなかったか?

 西尾一と出会い、ヤツと契約した後の最初の仕事で思った事は何だったのか?

『ロスト・クリスマス事件』で〝彼女〟を失った時、〝仮面〟を被ると誓ったのではなかったか?

 彼女を――如月結維を護ると、約束したのではなかったか――――

「――杖君! 石杖君ッ!!」

 結維が怒鳴っていた事にハッと気づき、裁也は彼女に振り向いた。

「……ああ、ゴメン。何か言ったか?」

 裁也は呆けたように呟く。

 死んだ魚のような、黒く濁ったドブ色のような瞳。

 裁也の双眸からは、自分の意志が宿ってるようには見えない。

 結維は、「ム~ッ!」と唸りながら、裁也の頬を両の掌で包み込んだ。

 彼女の顔が近く、裁也はドキッとする。

「な……なんだよっ」

「石杖君。さっきから怖い顔してる。整った顔立ちなんだから、もうちょっと笑いなさい」

「笑えか……。自分を笑うんだったら、もうしてるぞ」

「ていっ!」

 言った直後、裁也の頭上に結維のチョップが下された。

 大して痛くもないのに、やたら痛いと感じた。

「そういう事言ってるんじゃないの! 自分を責めても、何も意味ないでしょ!」

「………………」

 結維の言う通りだ。

 自分を責めても、何も解決しやしない。

 頭では解ってる。だが感情が理解しようとしないのだ。

 裁也は結維を無視し、歩き出す。

 結維はそんな裁也の前に先回りし、彼の進行を止める。

「………………」

 裁也は結維を無視し、彼女を避け歩き出そうとする。

 結維はその気配を察し、裁也の歩みを妨害する。

 イラッとし、裁也は駆け出した。

「あっ! コラッ!」

 結維が逃げた裁也を追いかける。

 元より、結維は置いていくつもりだった。

 裁也が本気になれば、結維を置き去りにする事などたやすい。

 一人で闘いに赴くつもりで、結維を巻き込むつもりは毛頭もなかった。

 そうだ。

 さっさと置いて行ってしまえばいい。

 あの時のように――

「きゃあっ!」

 結維の悲鳴が聞こえ、裁也は足を止めて振り返る。

 地面に倒れ伏して、結維は動かない。

 裁也は慌てて彼女の元に戻ると、ガッと、服を掴まれた。

「……捕まえた」

「――ッ!?」

 ペロッと舌を出す結維に、裁也はカァーッと赤くなる。

「バカッ! 何かあったと思って心配するだろ!」

 怒ると、結維は笑った。

「そう。そう怒ってるほうが石杖君っぽいよ」

「なっ……!」

 裁也は呆れて、ため息を吐いた。

 どうやら裁也を冷静にする為の演技だったようで、怒る気が失せた。

「……君は変わらないな。前もこうやって助けられた」

「『前も』って事は、やっぱり私と石杖君って昔会ってるんだね」

「昔ってほど、前でもないんだけどな」

 結維を立ち上がらせ、二人は歩き出す。

 裁也は結維の真剣な眼差しに気づき、観念したように言う。

「そう。君も察してる通り、君と俺は過去に何度か会ってるんだ」

「……やっぱりね。でも、何で急に話してくれるつもりになったの?」

「話すつもりはない。だけど、事態がそれを許してくれそうになさそうだ。巻き込んで何だが、ある程度事情は知っておいた方がいいだろ」

「ふんだ。偉そうにしちゃってまあ」

 結維が呆れると、裁也が不敵に笑う。

「もうすぐ目的地に着くから、細かい説明は省く。質問は全て片付いてからにしてくれよ」

「解ったわ」

「ならいい。――俺と、君は二年前の『ロスト・クリスマス事件』で遭遇してるんだ」

「――ッ!?」

 結維が息を呑む。

「君はそこでゲリラライブをしていて、俺は仕事でセントパレスチナタワーにやってきていた。事前にゼロが爆破計画を立てている情報を入手しててね。ミカドの事も、その時知ったのか」

「……そうだったんだ」

「だけど運悪く君は事件に巻き込まれ、俺は君と一緒に事件を解決した。終わり」

「終わり――って、え? それだけ?」

「それだけで十分だろ。大事な部分は話したぞ」

「全ッッ然話してないよっ!! 肝心な部分――私が知りたい事、教えてもらってないじゃん!」

「はぁ~……、分かったよ。何が知りたいんだ」

 裁也の、『コイツ、どうしようもないな』という表情とため息に腹立ち、腹パンチを入れる。

「……痛いぞ」

「うるさい! それで、私が知りたいのは、どうしてその時の私の記憶がないのかって事! どうしてよ!」

「それは俺が記憶を消したからだ」

「なら、元に戻して!」

「それは出来ない。一度消した記憶は戻らないんだ」

 首を振る裁也に、結維は激高する。

「そんなご都合主義、あるか!」

「そう言われてもな。俺だって、出来ないものは出来ないんだ」

 ポリポリと、頬を掻く裁也。

 その仕草からは、困った風には全く見えなかった。

「――それに、あの時の記憶なんて戻らない方が君の為だ。あんな辛い過去なんて、思い出すものじゃない」

「それは、私が決める事。石杖君が決める事じゃない」

 結維がそう言うと、不意に裁也が悲しげな顔をした。

 結維は思った。

 石杖裁也は、まだ重大な事を隠していると。

 その事を、彼は明るみに出さないだろう。

 結維が追求しない限り、裁也は自分から切り出すつもりはなさそうだ。

「――石杖君。私はね――」

 過去を訊ねようとすると、裁也がシッ、と指を立てる。

 耳を澄ますと、少し離れた所から大きな地響きと、爆発音が風に乗って聞こえてきた。

 方角は裁也達の目的地である『皇製薬第一研究所』と一致している。

 裁也は結維を置いて、即座に駆け出した。

「あっ! 石杖君! ちょっと! 話はまだ終わってないぞっ! コラ――ッ!! 裁也――ッ!!」

「ゴメン如月さん! 君はそこで待っていてくれ! 後で事情は話すから!」

 疾風の如く駆け去っていく彼を呆然と見送った後、結維は裁也を追いかけ始めた。

 ロスト・クリスマス事件。

 過去に起きた事件の残留が、ゼロを中心にして、再び集い始めた。

連載している好きな漫画が休載だと、テンション低くなります。

どうも、ペルソナ最新話です。

週末あまり書けなかったので、今週末頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ