幕間二
「ゼロが消えたぁ~っ?」
ロゼからの報告を受け、私は心底嫌そうな顔を浮かべて言った。
私は手錠で手足を拘束されている弟を足蹴にし、ペッと唾を吐き捨てる。
「……あの野郎、誰が面倒みてやってると思ってんのかしらね~……。あん時もそうだったけど、ちょっと自由に動けるようになったからって、すぐ調子にのるんだからさ」
私は弟の首輪のリードを引っ張る。
「アンタさぁ、ゼロがどこ行ったとか見当つく?」
「……へへっ。姉ちゃんよ、オレっちが姉ちゃんに言うと思うか?」
「そりゃまそうか」
リードを手放し、私はゼロの思考をトレースする。
過去のゼロと現在のゼロ。
肉体は変われど、脳は一緒のままだ。
趣味嗜好も、私が知っている範囲のものと予測する。
それにプラスαとして、本来の肉体の持ち主の記憶も考慮し、弾きだした計算によれば――
「――石杖裁也のもとかな?」
導き出した答えは、自分でもビックリするほど、腑に落ちた。
「なるほどなるほど。得心得心。石杖裁也もゼロにだいぶ執着してる方だったけど、ゼロのヤツも、石杖裁也を溺愛してたからね。可能性としては高いか。ねぇ帝人~?」
私はボロ雑巾のように地面に転がっている自分の弟を見やる。
帝人は反抗的な目付きで、私を見上げていた。
「あらぁ、随分と生意気な眼でいらっしゃること。何か言いたい事でもあるのしらねぇ。ほら、言ってごらん。怒んないから」
「……タッチャンを甘く見ない方がいい……。これは、身内としての忠告だ」
「ハン」
私は帝人の戯言を鼻で笑う。
「ミカドォ……。アンタが、この私に意見するようになるなんて、なぁにがあったのかしらぁ~……? んん?」
「姉ちゃんは、二人を甘く見過ぎだよ……」
「二人? 誰の事よ?」
「石杖裁也と――」
帝人が呟いた直後、唐突に巨大な爆発音が響き渡る。
ズズン、と建物全体が揺れ、私たちは地面に倒れ伏した。
何があったのかと慌てて立ち上がると、弟がニヤリと笑いながら、直前の言葉を引き継いだ。
「――オレ達の〝兄貴〟の事を、さ」
「――ッ!?」
緊急事態を告げる警報が室内に響く。
真っ暗だったモニターに、一斉に電源が入り、在る人間達の映像が映し出された。
一人は見知らぬ人間だ。
聞き及んだ情報でしか知らない少年が、建物内を疾走している。
もう一人は既知の人間だ。
私がこの世に生まれ落ちた瞬間から知っている人間だ。
そいつが、モニターの中で黒い外套を羽織り、黒いマスクで顔を被い、変声機で通した声で、高笑いをしている。
『さあ諸君ッ!! 復活祭の始まりだ!! 私を――ゼロの復活を、ともに祝福してくれたまえ!!』
歓喜で興奮するゼロを、私は憎悪を孕んだ瞳で、歯ぎしりしながら見つめた。
推敲しないで投稿してみた。
後悔はしていない。
多分……。




