第二章『皇製薬会社の闇』第五話
「さて……、何から話そうか」
西尾一と名乗る少年は、結維の前に座り裁也が淹れた紅茶を飲む。
「おっ、相変わらず裁也が淹れたお茶は美味いね! また腕を上げた?」
「それはどうも。で、一。俺より、如月さんにちゃんと話してやれ」
一は裁也に注意され、そうだったそうだったと言い、結維に向き合った。
「いやぁゴメンゴメン! 裁也には色んな事で注意されるんだ! コイツ、色々とうるさくない? 迷惑かけてるようだったら、後から裁也に謝らせるから!」
「え……いや……あの、そんな事ないですけど」
「そうなの? そっか! じゃあ良かった良かった!」
はしゃぐ彼に、結維は戸惑った様子で裁也に視線を流すも、彼は肩を竦めるだけだった。
「あの……」
「ん? 何だい?」
「貴方が、本当に社長さん? 私に、用事があるんですか?」
ジッと、疑わしげに男の子を見つめる。
すると彼はショックを受けたようで、裁也に泣きついた。
「ひ、ひどい! ひどいよ、裁也! 今まであんな事言われた事無かったのに!」
裁也は少年の態度に辟易した様子で、
「いや、そんな事はなかったぞ」
と言った。
「え……?」
「時折、俺に直接お前に対してのクレームを貰った事がある。『彼が社長さん? 君じゃなくてか?』って」
「で、でもでも、僕は直接言われた事ないよ!」
「それはお前、言い難かっただけだろ。色んな意味でな」
「ガーンッ! そうだったのか……」
一はショックを受けたように、うなだれた。
結維は何か悪いことをしたような心境になる。
「うう~……、裁也、この娘は悪魔だよ! 僕はハッキリ言って傷ついた! 僕はもう、この娘に関与しない!」
初対面なのに、酷い言われようだ。
子どもだからといって、何を言ってもいいわけじゃない。
怒りを感じムッとする結維。
だが裁也が一に拳骨を落とす。
「悪魔はお前だ。馬鹿な事言ってないで、本題を話してやれ。……俺だって、お前が何を思って彼女を呼びつけたのか、理由を知らないんだからな」
え、そうなの? と結維は裁也を見る。
彼は結維の視線の意味に気づき、頷く。
一は大袈裟に、頭を擦った後、
「そうだったね!」
と、一変して明るく言った。
コロコロと表情が変わる彼は、まるで百面相のようだった。
そして、今までにない冷たい表情で一は呟いた。
「――如月結維。君、近いうちに殺されるから気をつけて」
空気が凍りつく。
無慈悲な死神が、結維の寿命を問答無用で宣言した瞬間だった…………。
ちょいと休憩します。ストックなくなりました。
また執筆開始します。




