フィアー
私があの氷下市街に落ちた日から約二か月がたった。山さんたちが削っていた氷は下の空間まで貫通した箇所ができたので、そこから穴を広げる作業に入った。
私はいつもの仕事場で、いつもとは少し違う仕事をしている。割れ目を入れた氷を少しずつハンマーで叩いて穴を広げていく作業だ。氷は五十センチくらいの厚さで、思いっきりハンマーを打ち付けても返って自分に痛みが来そうだが、以前それをして氷が割れてしまい、落下による死者が出たこともあり、それ以来この作業はこうして神経質に行われている。
かつかつと、聞き飽きた音だけがなる。すると突然その中にいちだんと大きなガツーンという音が響いた。見ると一人の若い人が氷に思い切った一撃を放っていた。
「おい!何やってる!」
山さんが声をあげた。
「何って、こんなちまちました作業やってられますかい。一気にズドーンと景気良くいった方が早いでしょうに。」
「お前、前にそんなことをして
下に落ちて死人が出たのをしらんのか!」
山さんが珍しく激怒している。まぁ、そりゃ怒るだろう。ここの管轄をしているのは山さんだ。そんな自分の管轄で死人が出たとかなったら、それはちゃんと周りを見ていなかったお前のせいだと言われかねない。
「いやー、でもこの氷めちゃくちゃ硬いしゴツいっすよ?そんな簡単に穴なんか……」
若者の言葉はそこで途切れた。若者の姿もいきなり消えた。
「ーーーーーーーーーーー!!??」
と若者の叫び声のようなのと共にバリバリ、ゴロゴロ、となにかが崩れるような音がする。
何が崩れているのかなど言うまでもないのだが。周りの、作業をしていた人達がそれに気づいたのか逃げ惑っているのが見える。
「アゲちゃんっ!早く逃げろっ!」
山さんの声が後ろから聞こえる。そうだ、私も逃げなければいけない。じゃないとさっきの若者みたいに落ちてしまう。しかし……
……私の足はびくとも動かない。まるで靴裏が地面とつながってしまったかのように、膝だけがガクガクするだけだ。
そうしていると、いよいよ自分の足下も裂けてくる。0.1秒ごとにこちらに迫ってくる死の恐怖に、視界や聴覚がぼやけてくる。
そしてついに、足元が裂けた。
意識は闇に吸い込まれる。
書く時間が無いのでそろそろ完結したいですね。




