紙の山に埋もれた世界
第3話始まります。
俺は佐藤巧。
普通の会社員だ。最近は上司に無茶ばかり言われサービス残業ばかりしていた。
「はぁ。マジでむちゃいうなし・・・。」
口が開けばこればかり言っていた。
私は一部の書類の山を整理し終えたころ、時刻は夜中の3時。丑三つ時。
もちろん電車など走っている時間ではない。
ほかにはタクシーなどで帰るなんてこともできるが、家は遠い。
「寝るか。」
俺は机に伏せるようにして寝ることにした。
目が覚めるとそこは不思議な空間だった。
なんだこれ。
虹のようにきらめくまるでオーロラの中にいるような気分だった。
これは夢か。まさにそう思おうとしたその時だった。
美しい女性の声が聞こえた。
「佐藤巧さん。聞こえますか?あなたは死んだのです。」
「ええ!?」
俺はその声に・・・内容に驚いて声の向くほうへ振り返った。
女神がいた。
「え?ちょちょちょまてよ~。まっさかー、俺の記憶にあるのは大量の紙の束とカッターイ机の感覚だけだぜー?まさか俺が死んだってー?まったまた~冗談を~。」
「はぁー。冗談ではありません!あなたは死にました!」
女神様はため息をついき、いい放った。
「いいですか?あなたは、腕を組みかえた際に腕が書類の山にあたり、およそ5000ともいえる書類の山に埋もれて息ができなくなって窒息死したのです。はぁ・・・ふつうはこれくらいでは死なないんですけどねえ・・・はぁ・・・」
なんと衝撃の事実。
書類の山に埋もれて死ぬなんて。俺はまだDTだったんだぞ!DT!
チェリーボーイだぞ!
死ぬ前にやっておくんだったな・・・・
「俺・・・マジでそんな死にかたしたの・・・?」
「ええ・・・。しました。逆にすごいですよ?ふつうは死にません。」
「でぇーすーよーねぇ!?そんなんで死んでたらきりがないですよ!。」
マジか。俺は落胆した。
「そこで、提案なんですが、別の世界に転生するってのはどうですか?紙の山に埋もれて死ぬなんて、逆にあまりに悲惨なので、今回は特別ですよ?」
女神様は両手を合わせながら困ったように言った。
ん?まてよ?今転生とか・・・
「今、て、てててて転生!?転生!って言いましたよね!?」
「ええ。そのままの意味での転生です。あなたの人生はお金を稼いでも消費する時間もなく、仕事に追われ、さらに仕事の山につぶれて死ぬ。そんな残念過ぎる人生に加えて、仕事の山に圧迫されるのでなくて、物理的につぶされて死ぬなんてありえないですよ・・・。なので今回は特別です。」
女神は[ありえない]を強調し、続けた。
「しかし、一概に転生と言っても確実に人ととして生まれ変われるほどの運命力はあなたにはありません。そもそもそれほどの運命力があるのならば、あなたはあの場所で亡くなってはおりませんからね。逆にすごい。それだけは言えます。」
女神様はくすっと笑った。
でも待てよ?今女神様は[確実に人として生まれ変われるほどの運命力がない]そういったよな・・・・?
「人として生まれないかもしれない・・・ということですか?」
「ええ。そうです。」
「じゃあ、人以外だったら何に生まれ変われるというのですか?」
「そうですね。その世界にあふれるものには一つずつ、魂が宿るといわれております。なので物に転生する可能性もあるし、人に準ずる生物に転生する可能性もありますね。転生の基準は運命力の強さによって、強い方からその世界での最強種、弱いとその辺の雑草とかにまで、さまざまなものになれます。」
「なるほど。俺はどの程度の運命力なのですか?」
「それは転生してからのお楽しみということで。」
なるほど。わかったぞ。
女神は常ににこにこしながら話してはいるがあれは営業スマイルに違いない。
ここから転生者をどんなものに転生するかを見守って遊んでいるに違いない。
「あ、そうそう。過去に転生した人で雑草に転生して踏まれて喜んでる変態がいましたね。まあ、獣に食べられてましたけど。」
「えぇ、それは嫌だなぁ~あはは~。」
乾いた笑みを張り付けた。
まずいぞ。雑草とかになったらまずい。だがしかし、別の世界にも興味があるのだ。
くじ引きでどんなものになるかわからんが、試してみる価値はあるだろう。
「さて、そろそろ私も時間が無くなってきました。転生しますか?」
おっと、ここで女神様の「私時間ないのでどうしますか?」が発動したぞ・・・!
ここで焦らせてYESかNOの二択を選ばせようとする。くっ、憎いぜ!
ここは第三択目をダメもとで選んでみよう。
「なぁ、女神様、転生するのはいいんだが、転生してから無駄に死にたくはない。ここで提案なんだけど、何か神様の加護みたいなのはないのか?」
「ふむ、加護ですか、昔にもねだられたことがありました。私はねだってくる人にはあげますが、心に闇がある人に渡すとその人はたちまち飲み込まれて消滅してしまいます。それでもいい覚悟がおありなら私は授けましょう。」
おっとおおお!ここでまさかの呪い宣言!呪いというか、洗礼だが、俺はほんとにやましい心とかないよな?いや、まてよ、小道にポイ捨てしたり、親に対して無視したりもしたな・・・。あれはどうなんだろうか。ううむ。
これはちょっぴり怖くなってきたぞ・・・。
しかし、よく考えろ。加護もなしにただの社会人だった俺が森に転生でもしてみろ・・・熊とかでてきてやられちゃうんじゃないか?
ここは消滅覚悟で、受け入れたほうがよさそうだ。
よし!覚悟が決まった!俺は受け入れる!一度は死んだ身、失うものはない!
「女神様、私は加護を受け入れます。どうか授けてください。」
「わかりました。その覚悟、しかと受け取りました。」
〈佐藤巧は【女神の寵愛】を手に入れた。〉
おおう?こいつ、直接脳内に・・・!
「女神様、これは・・・?」
「あなたにスキルを差し上げました。この場所では【女神の寵愛】としか、表示されませんが転生したあと、そのスキルは解放されます。【女神の寵愛】が消滅。引き換えに様々なスキルが手に入ることでしょう。スキルの数、質はランダムです。そのあなただけのスキルを手に頑張ってください!」
「なるほど。」
「では、本格的に時間が無くなってまいりました。あなたがこれから飛ぶ世界は、魔物陣営と人類陣営がはっきり二つの世界に隔たれた世界『アカラスリエ』その世界を平和に導くために転生されます。どうか頑張ってください。ステイタス等は自分で思えば見れます。あとは世界の住人などから情報を集めてください。それではいい旅を。そうそう、ついでに面白おかしく暮らしてくださいな。」
話の直後世界から光があふれた。
「え?ちょ、まって、はや!はやいって!あぁー・・・」
光は自分を包み、俺は意識を手放した。
次に目覚めたとき、俺は森の中の広場。
俺は台座にはまっていた。
木々の木洩れ日は少なく、唯一自分に差し込む光があたりを照らしている。
上を見る。空は青い空と黒い空。半分ずつに分かれていた。
太陽を見ると今はおそらく昼間ということがうかがえる。
(う・・・。ここはいったい・・・・?)
いったん整理しよう。
社会人で仕事詰だった俺は紙の山に埋もれ窒息死。そのあと、いきなり神々しい不思議な空間に呼ばれ、女神と話をして今転生されてこの場所にいる。
そして、俺は手足を動かそうとしたが感覚がない。
(手足の感覚がないぞ・・・?どういうことだ?首も曲がらない。視点は首を曲げずに360°確認できる。しかし、見下ろせない。どうなってる・・・・?)
俺は飛ばされる直前、女神に言われた言葉を思い出した。
(ステイタスの確認は思えば見れるといってたか。)
―ステイタス―
種族:武器【杖】
装備箇所 両手
物理攻 24
魔法攻 45
重さ 5
スキル:【女神の寵愛】
【女神の寵愛】:新しい世界に旅立った後実行可能。実行すると、複数のスキルが入手可能。実行後このスキルは消滅する。
(なるほど。俺は杖なのか。ふんふん。)
・・・
(っておいいいい!うごけねえじゃねえかあああ! 某ゲームのゼ○伝みたいなところに設置されてるけどよ!)
俺は焦った。叫んだつもりだが声は音として発せられていないようだった。
(まじか。声も出せないのか。)
仕方ない。俺はスキル【女神の寵愛】を実行することにした。
〈スキル【女神の寵愛】の実行意志を感知しました。実行します。〉
〈スキル【武具成長】【幸運EX】【スキル共有】【成長補助EX】【念力B】を取得しました。〉
ほう?なかなかよさそうなスキルを入したぞ・・・?幸運とかいいんじゃないか?
俺はステイタスを確認する。
―ステイタス―
種族:武器【杖】レベル0 EXP[0/15] 0P
装備箇所 両手
耐久度 100/100
MP 250/250
物理攻 24
魔法攻 45
重さ 5
スキル:【武具成長】【幸運EX】【スキル共有】【成長補助EX】【念力B】
【武具成長】:装備品にレベルという概念が付く。レベルはこのスキルを持っていなければ成長しない。魔石を吸収することにより経験値となる。レベルが上がるとスキルを取得する可能性がある。
【幸運EX】:幸運が訪れる。
【スキル共有】:装備者とスキルの共有ができる。スキル共有可能数はレベルによって変動する。レベルという概念が存在しなければ使用不可。
【成長補助EX】:取得経験値が上昇、魔石吸収時にスキルも選択して吸収可能。選択可能数はスキルのレベル、希少度による。
【念力B】:威力〈中〉の念力が使用可能。
一通りスキルを確認すると、頭の中に声が聞こえた。
〈スキル【スキル共有】による、スキルセットをしますか?〉
俺はとりあえずYESとした。
〈現在スキルセット可能数は0です。〉
なるほど。こうなるわけか。
俺のレベルは0、レベル概念がまだないということだな。
次は念力Bを試してみようと思う。
俺は近くにあった小石に念力を送る。
力は自然と使用可能のようで、小石はふわふわと浮き上がり、自分のもとに寄せようと思った。
しかし、力加減を間違えて吹き飛ばしてしまった。
なかなか難しいな。
だが、このスキルはいい引きなのではないか?
この世界のスキルがどんなのかはわからないが、スキルを吸収できるのはでかいと思う。
いわゆるチートに近いのではないか?
そして自分はふと思い立った行動に出てみる。
自分に念力を使用するのだ。これでどうにか移動ができないかと試してみたところ
バビュン
俺は吹っ飛んだ。
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