杖との出会い
「部屋を移動しない?」
私は提案した。しかし、彼らは拒否した。
「リム様、私どもは魔王さまと、リム様、そして魔王の城を守ることにございます。」
「私たちは外の敵を迎撃しなければいけません。リム様はご自分の部屋にお戻りください。」
「ん・・・わかった。」
私は、一つだけいつもと違う風景を目にしつつ立ち去る。そう。シークの胸に突き刺さる銀の剣だ。
本人は無理して笑顔を作っているが、私にはできることはない。
探せばあるのだろうけど私がいては邪魔だ。私はおとなしく部屋に戻ることにする。
部屋に戻って、数時間・・・いや、数日は立ったかもしれない。
音がやんだ。
私は恐る恐る、考えることをやめていた脳に考えるという事を再開した。
私はドアを開けようと踏ん張るが、あかない。
首をかしげつつさらに強く押す。
扉から見えたものは、赤くてらてらと光に反射する液体で染まった壁に天井、そして床には大量の血の海と大量の死体。
私はつい手で口を覆った。
死体はバラバラになっているものもあり、焦げていたりするものもあった。
死体の中では敵だと思われる鎧を付けている人に、こちら側の魔族だと思われる死体。
私の部屋の扉からは山のように見えた。
扉が重かった理由は死体が邪魔していたからだ。
無理やり押して開けると、死体の山が崩れたのか開きやすくなった。
多分私の部屋を守っていた者達だと思う。
「お父様・・・。」
私はお父様が心配になり、声を出したが喉からは枯れた声が絞りでるような音しか出なかった。
私はとにかく謁見の間に走った。
謁見の間は・・・地獄。そう地獄としか言いようのない地獄だった。
頭が半分で脳みそがどろりと出ている死体。
肩から腰にかけて真っ二つになっている死体。
炎で燃やされたのか、皮膚が焼けただれ、切り傷も目立つ死体。
私は目を逸らしたくなった。
その他には、冒険者とみられる服装をしているものもあり、雷に打たれたような跡があったり、切り裂かれて内臓が出たりしているものもたくさんあった。
しかし私は一番見たくなかったものが、そこにはあった。
そう。父親の首なし死体がそこにあった。
無残にも、首から上がすっぱり無くなっており、体の部分はところどころ焼けていたり切れていたりしている。
「おとう・・・さま・・・・うっ・・・」
私はそこで膝から力が抜けるのを感じた。
私は信じていた。お父様が負けるわけがないと。
そして私は、突然後頭部に走る衝撃により目の前が真っ白になった。
「・・・きろ!おい!おきろ!ってんだよ!」
バシャ。
私は目が覚めると、布の服ともいえないような布を着せられ、羽をぼろぼろにされ、揺れる木の牢獄のようなところにいた。
「やっと目が覚めたか。」
「・・・。」
私は疲れていた。そして、心は落ち込んでいた。平和だった魔王様の支配していた城が壊され、首を取られた魔王様の死体を見てから・・・。
「なに・・・?」
私の声は相変わらず枯れている。
「おいおい、こいつなにっって言ってんぞ。大丈夫なのかこいつ?」
「ヘヘッ、知らねえよ。魔王の城にいて魔王に向かってお父様って言ってたから、殺さずにつれてきただけなんだからな!」
「それにしてもひでえな。ぼろぼろじゃねえか。」
目の前の初めて見る冒険者に言われて自分が何をされてつれてきたのか鮮明に思い出す。
私は。奴隷に売られるのだ・・・。
目覚めたときはよく分からなかったが、時間が経つにつれ謁見の間で後頭部に何かを強く打ち付けられたようなことを思い出した。
思い出した直後は、復讐しようと思った。
しかし、私にはそれを実行するほどの気力がなかった。
何もかもが抜け落ちたような、そんな感覚。
そんな私の前で、冒険者のような人達が話を続ける。
「にしてもかわいい顔してるよなぁ?ヤッたのか?」
「ンなわけあるかよ。傷物にしたら高く売れねえじゃねえか。」
「早くこんな魔界から抜けようぜ。あと1時間くらいか?」
「ああ。そうだな。太陽が黒くて、瘴気が立ち上るこんな世界にいられるかよ。」
そうか。初めての外・・・でも今はどうでもいいや。
どうせ私に自由はない。
私は魔王城で学んでいたときから、私は力がなかった。そう。最弱なのだ。
私が何をしたところで檻ひとつ壊せず、魔法も使えない。ダメな子なのだ。
私はそんなことを考えながら目をつぶる・・・
目をつぶると、思考が途切れていく。
「お、そろそろ魔界の門じゃねえか。やっと帰れるぜ。」
「よし、そろそろあれの・・・」
そんな声を聞いた時、私は意識を手放した。
そして、私は目を覚ました。
異常な揺れが私を揺さぶったからだ。
まるで転がり落ちるような感覚、上が下になり、下が横になりどっちがしたか分からないまま重力に従い落ちていく。
しばらく目を回したような感覚が続き、視点が定まった。
木?木がたくさん・・・
私は周りを見渡した。
周りは木がたくさんあった。
それだけだ。冒険者はおらず、私だけがそこにいた。
ガルルル・・・
ふと後ろを見ると、そこには体長3mを越えようかと言う二足歩行のような恐竜のような見た目をした者がいた。
これは・・・私を食べようとしてるのかな?
でも・・・もういいや。
私は動かなかった。
そのままへたりこむように座った。
私はその時を目を瞑り、静かに待った。
しかし、いつまで待っても終わりの時が来ず、不意に迫り来るであろう頭がある位置へと目線を上げた。
私は疑問に思った。なぜ杖が頭に刺さっているのだろうと。
これが私と杖の出会いだった。
第2話お読み頂きありがとうございます。
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さて、ここから始まりですね。




