第11話 「それぞれの辿り(Part.9(終))」
少し短めです。
Part自体は終わりです( ˘ω˘ )
寮を出た不知火真夏、静の二人は父である
鬼原健一のいるであろう駐車場へと足を運んでいた。
よく聞かれそうだからと真夏は父、健一の話を思い出す。
『ん?苗字?』
『うん。どうしてお父さんはお母さんと
同じ苗字じゃないのかなってさ。
別に鬼原真夏でも鬼原静でも良かったわけじゃん?』
真夏と静は今は亡き母である結愛の苗字、"不知火"である。
父、健一だけが鬼原という苗字であるということに疑問を感じたのだ。
すると健一は嫌な顔はしなかったものの微妙な顔をして呟く。
『確かにな…鬼原結愛でも良いわけだし…。
でも当時な。結愛と俺が結婚したのはお互いの両親との
連絡なしに行ったんだよ。
……正確には連絡することができなかったんだがな?
それで名前を変えようかとかお互い悩んでたんだが
結愛が面倒くさいから良いって言いだしてな。
まあでもお前らが産まれるときは名前に
"鬼"だなんて不吉だしって俺がやめさせたんだ。』
そう笑って語ってくれたが結愛
……お母さんにはだいぶ怒られたらしい。
"なら結婚したときから私は鬼と結婚したのか"
と。
私もそれはお父さんが悪いと批判したが
それは普段からツンデレ(?)なお父さんなりの優しさなのだ、
と真夏は思いながらくすっと笑い
すると歩きながら静が不思議そうに下から姉の顔を伺う。
「どうしたの?」
「んん~?いやあ…ちょっと思い出してね。
お父さんの可愛い優しさってやつ?」
「ああ、たまにあるよね」
と静は同じくクスクスと笑い
真夏と一緒に噴き出し大笑いをする。
ひーひーと息を切らしていると
車で待つお父さんを見つける。
何故か笑いこけそうになってる二人を見て
健一は一人、?マークを浮かべていた。
・
「…ではでは二人の無事を祈って!乾杯!!!」
乾杯!!と差し出すコップに注がれた
各々の飲み物をカツンと鳴らす。
静、真夏の無事入学を記念としたお祝いパーティーを
白羅木さん(以降、悠と略します)が提案、実行したのだった。
今現在様々な事情で悠さんは休暇を戴いているのだとか。
様々な事情は本人もお父さんも言ってくれなかったが、
休暇中はこの不知火家にいるのだとか。
何はともあれハクラギさんとも会えたし、
と真夏は静と共に盛り上がる。
その後は静が真夏とゲームをしたり
悠さんを交えトランプで遊んだり。
ケーキやご馳走を食べたところで腹も眠気も膨れ
いつの間にやら姉妹そろって寝るのであった。
寝た二人に悠は布団をかけると鬼原とベランダで話す。
それは今後についてと…。
「娘さんいなくなるから寂しいんですか?」
虚を突かれた鬼原は煙草を吸うこともなく
片手にお酒を注いだガラスコップを飲む。
そしてああ、とだけ呟きそれ以上は何も言わなかった。
それを見て悠は穏やかな笑みで茶化すのだった。
今後の行き先を案ずるようなことも何も言わず
鬼原のどこか寂しいような目に目線を向けた。
短く切った理由は次話から、男女両方の主人公パートになるので切ったという次第です。