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11,帰りたい場所

新しい仲間たちとの仲も深まったところで、なぜ自分たちが死なずに生き残っているのかを、ラピカたちから聞くことができた3人、

そんなとき、唐突にラピカが「見せたいものがある」という、

果たしてそれはどんなものなのか?


「私たち8人は…5年前に地球のヴァイスクラウド帝国からこの『惑星X』へと転送された、」

ラピカはやはりヴァイスクラウド帝国の人間だったようだ。


他の7人も帝国の人間ということは、やはり軍が度々、兵士をこの「惑星X」へ送っているという噂は本当だったようだ。

(ん?待てよ、ラピカが兵士ではなく皇族なら、なぜこの星に送られているんだ?)

アレンは疑問に思い、ラピカに尋ねた。


「なあラピカ、君はヴァイスクラウド帝国の元皇族だったのか?」


「やはり気づいていたか、そうだ。私はヴァイスクラウド帝国の元皇族、父は皇帝だ。お前たちも帝国を知っているということは、やはりあの国から転送されたということだな。」


「あの帝国…、まだそんなことをしていたんだな…失望しちまうよ。」


ソラリアはそういうと、徐に話を始めた。

「あたしたちがここに転送されたのは5年前、そのころヴァイスクラウド帝国は、隣国に軍事侵攻をしたことが国際問題になっちまって、軍縮を命じられたんだ。そこで余った兵士1万人を、あろうことかこの『惑星X』に転送したんだ。」

(ん?待てよ、ラピカが兵士ではなく皇族なら、なぜこの星に送られているんだ?)


疑問に思ったアレンはラピカに尋ねた、

「ちょっと待って、兵士が『惑星X』へ転送されるのはわかるんだ、僕たち3人も向こうでは国防軍の兵士だったから…、でも皇族のラピカまで転送されることなんてあるのか…?」


「私は少し別の事情があってな、1万人とは別に送られたんだ、その時になったら話そう…。」


「ねえ、1万人も兵士が送られたのに、私たちここに来てから、まだあなたたちしか人間を見ていないわよ…?他の兵士はいったいどこに行ってしまったの?」

メイがそう聞くと、アレックスが暗い声で話す――


「ほかの兵たちは…死にました…、」

「えっ…?」

思ってもみなかった答えに、3人は驚いてほとんど声が出なかった。


「死因、なんだと思う?」

さっきまで眠そうにしていたノアが3人に問いかける、

答えられるものなら答えたかったが、まだ動揺が収まっていない。


「これだよ、」


ノアはそういうと、どこからか透明な瓶を取り出し、中身の透明な気体を力いっぱい吸ってから話した。


「これ、毒ガス、ちょっとでも吸うと息ができなくなるくらい強いよ…」


                は?


「おいおい、お前死にてえのか? なに毒ガス吸ってからのんきに説明してんだよ!」

ルイはノアの持っている瓶を取り上げた、


「いや、僕はなんともないよ…?」

ノアはそういった、確かにいつもと何ら変わりはない、毒ガスを吸ったのに??


「なんでお前は死なないんだよ?毒ガスじゃないのか…?」

ルイがそういうと、ラピカが淡々と語り始める、


「それは、私たちが『適応者』だからだ。適応者は毒ガスに耐性があるんだ。」


「適応者…?」


3人はまだいまいち理解ができていない。


「5年前に1万人の兵がこの星に転送された時、1万人のうち9920人は毒ガスで即死したんだ。」

ラピカが説明しているが、全く話が入ってこない。


毒ガスで即死? 残りの73人は? そもそも私たちも「適応者」なの?


「この惑星の大気には大量の毒ガスが含まれているらしい。80人、私を含めて81人は適応者だから生き残ったんだ。」


そうか、「惑星X」からの生還者がいないのはその毒ガスのせいだったのか!

点と点が線でつながった。やっとこの星のことが少しわかった気がした――


「そして君たち3人も、生き残っているってことは、『適応者』ってことだね!」

アレックスがそういうと、


「確かにそのようだな、お前たち3人は、なかなかの豪運みたいだな」

ラピカは微笑みながらそう言った。


気づけばもう外はわずかに明るくなり始めていた。


「流石にそろそろ腹が減ったな、何か作ってくるから待ってろ!」

ジンはそういうと、部屋を出て行った。


「俺らも仕事があるから先に失礼するぜ!」

みな続々と会議室を後にして、部屋に残っているのはラピカと3人だけになっていた。


なあ、ちょっと見せたいものがあるんだ…、ついてきてくれないか?


「見せたいものって?」

アレンがそういうと、


「この星についてもっと知ってもらいたいんだ。」

それだけ言うと、ラピカは部屋を出て行った。


よくわからないが、3人はとりあえずついて行ってみることにした。

 


4人が辿り着いた場所、そう、それは基地の屋上だった――


「ここだ、私が君たちに見せたいものがある場所。」


「ここ? 基地の屋上に何か特別なものがあるの?」

メイがそういうと、ラピカが少し微笑んでから答えた。


「振り返って、後ろを見てみろ――」


「後ろ?」

まだ何があるのかわかっていない3人は、戸惑いながらも後ろを振り向く。



――それは日の出だった。


あけぼの色に染まる雲一つない空の中、ひとすじの紅色の光がこちらに手を差し伸べている……


廃墟と化した高層ビルの割れたガラスは、その輝きをを少しだけ、しかし鮮明にうつし出す。


遠くに見える平原は、抗うこともなく微風に揺れている。


この都市も、あと千年もすれば、あの平原のように緑に還るのだろうか?


4人はしばらく景色に見とれていた。

静寂は5分ほど続いただろうか? ラピカが徐に語り始める。


「私は…この星が好きだ。こういう静かな場所が好きなんだ。帝国のような、人でにぎわう、活気ある場所も好きだ。しかし人間は、裏切り、争い、破壊する。当たり前のように環境を破壊して、自然を、星を支配しているのは自分たちだという。しかし、そんな世界はいつか滅びる。そして再び自然が支配するんだ。そう、この星のように。自然に抗うものは淘汰されて当然だ。それが美しくて儚いのだから。」


確かに、この星は美しい、そして儚い。

悲しくも、悔しくも、苦しくもないのに、メイの頬を涙がつたう。


しばらく間をおいてから、ラピカが話し始めた。


「でも、私は父と約束したんだ。『必ず帰る』って。ずっとここにはいられない。だから手伝ってほしいんだ。お前たちにも、『帰る場所』があるはずだから。」


帰る場所…

国には騙され、そして裏切られた。

だけど……愛する家族、会いたい友達がいる。


そういえば、まだ「行ってきます」すらいえてなかったな…。


よし、帰ろう。帰ってやろう。あの星に…

3人はそう決心した。

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