15.僕にとっての普通は、あなた達にとっての異常だから。
「アリバイがあるって…」
容疑者の数998/0
「それじゃ他に犯人が?」
容疑者の数9
「た、大変だ!」
「どうした!?」
容疑者の数99
「ひ、」
「大変です!」
「今度はなんだ!?」
容疑者の数999
「「人が死んでいます!!」」
「なんだと」
「っち」
――いや、それじゃ――
シンの脳裏に前の記憶が蘇ってくる―――
――あ、どうも
――いやあぁぁぁ
――ポーチ忘れちゃった
――〇〇〇ちゃん
――なにしてるの?
――あれ、明かりついてる
――眩しい、な
――ええええええええええええ
――お、おそようございます…
――すみません、アラタさんですか?
――先着がいたんだ
――あ、君がそうだったのか――
容疑者の数1000/1
夜が明け火星が反射する太陽の光に照らされた船内の三階カフェテリアに26名が集結する。
――――――残り0日
ピンポンパンポーン
『当船体は火星に到着しました。当船体は火星に到着しました。
30年の渡航、お疲れさまでした。
残り少ない着陸期間もどうぞ船内をごつろぎください。
30年の渡航、お疲れさまでした。
残り少ない着陸期間もどうぞ船内をごつろぎください。』
渡航期間を終えて船体ノアは着陸のために船体の速度を上げ、火星をぐるりと一周する軌道を取り始めた。
その影響で船内は15分くらい東側に引っ張られていた。
集結した全渡航者が不満の声を次々と漏らしていく。
「ほかに犯人がいたのか…」
「ミナ…くそっ……」
「地球に残ってればよかったんだっ!かぁさん!」
昨日まで楽しげに宴をしていたカメラの前とは一転し、空気は張り付き皆が緊張状態になっている姿を映していた。
その渡航者集団の中に伊織、シン、咲の三人でまとまっていた。
その中へと事情を知るためにアラタが近寄ってくるので今までの経緯を説明する。
「犯人が違った!?」
「声がでかい!」
「あぁごめん、というかじゃぁ別の犯人を見つけたのか」
「今村上さんにボードを下から持ってくるようお願いしてて、」
「それじゃ村上が危ないじゃないか」
「大丈夫」
「どうして?」
「もう咲ちゃんとシンちゃんが犯人を見つけたんだって」
伊織が言った通り無事にボードを持ってきた村上さんが渡航者全員が見える位置にボードを置き、その前に伊織が出ていく。
「なんで私だけなのよ!」
「だってリーダーはいおりんだろ?それに俺は状況がまだ分かってないんだ」
「なんで?」
「寝起きだからだ、逆によく寝起きに状況を早く理解できるよな」
「そりゃ当然でしょ」
皆の前に立ちスピーチを開始する一方でアラタもシンから貰った資料に目を通し、状況の理解と犯人を考える。
「まず、この様な悲惨な結果を阻止できなかったことを特別護衛団第1機担当の代表としてお詫びします。申し訳ございませんでした。」
「こんな可愛らしい子に謝らせてしまうなんて……」
「なんで俺たちがこんな目に…」
「そう思うなら早く犯人を、危険から俺たちを守ってくれ!」
伊織の謝罪を聞いていろんな意見を飛び交わせる渡航者達だが、皆の胸の思いは「安全に暮らしたい」これだけだった。
「それではまず彼が犯人ではない理由をお伝えします。」
そういうと一つの手のひらサイズの機械を持ったマサトシが伊織の方へと近づいて行った。
「お、おい!危ないぞ!」
「あいつの他に犯人がいるんだろ!?」
「ありがとうマサトシ」
「犯人を捕まえてください」
マサトシから渡された機械の電源を入れると空中に大きなモニターが映し出され、その中にはたくさんのファイルアプリが並べられていた。
機会を床に置き、専用のリモコンでモニターを操作する。
「まず初めに、彼のこれまでの行動と今までの事件を比較しながら説明していきます。まず最初の15年前の事件。被害者は丘野アロガン男性、かれは消灯時間に殺害されましたがその時マサトシはすでに部屋に入っていることが分かっています。」
モニターにマップを映しその上からアイコンを置いて渡航者に分かりやすく説明していく。
「根拠はあるのか!?」
「15年前だろ!」
「アイコンだけって信用できるか!」
「根拠はあります!」
そういいながら別のファイルを開くとそこにはすべての部屋番とその部屋で生活する人の名前、それから不規則にONかOFFに割り当てられているファイルを開いた。
「これは…」
「皆さんが何時に部屋の鍵をかけたか、もしくはかかったかを記録しているファイルです。もちろん鍵は中からか、もしくは我々従業員が身に着けているスマートウォッチでしか開くことはできません。」
「まだ、私たちを監視していたの!?」
「監視カメラの事件の時にこういうのはすべて取り外すって言ったよな!??」
「申し訳ございません。ですがこういった記録は残さないといけないんです。なぜなら私たちは船体第1機{ノア}はもとより実験対象なのですから」
「は、どういうことだよ!」
「聞いてないわよ?」
「言ってませんし言うわけには行きませんでした!我々の1機~10機はすべて後世の人たちを安全に火星に届けるための実験プログラムです」
「人体実験てことじゃねぇか…」
「嘘、実験?」
宇宙船{ノア}の事実を聞き呆然とする渡航者だがそれに構わずにどんどんとマサトシの機密情報を開示しながらアリバイを説明していく。
「これの根拠は更衣室の監視カメラ」
「カメラが…」
「これはトイレの使用してるかどうかの記録から」
「まじかよ」
「これは購入履歴が――
「あれは――
「このことより――
すべての犯行時刻とマサトシのアリバイを説明し終わるころには渡航者は絶句していたがアラタが一つの疑問を提示する。
「なんでマサトシがどれも使っていると分かるんだ?その資料には使用中とかしか書いていないだろ?」
「皆さんにはあらかじめチップが埋め込まれています。それがセンサーに反応すると名前は開示されずとも部屋番は開示されます。それにより見分けています。」
「プライバシーの欠片も無いじゃない…」
すべての機密情報を開示したのち本題に入る。
「続いてだが――
「待ってくれ、一旦休憩させてくれないか?」
長時間のスピーチと受け入れがたい事実を聞いて疲労困憊になる渡航者達。
「そうですね、一旦休憩しますか」
二人だけになったカフェテリア。
「アラタ?」
「シンか、どうした?」
「犯人分かった?」
「いや、まったくだ」
「あなたでも犯人は分からないのね」
「?」
「とりあえずなにか飲んだら?」
「たしかにのどか湧いたし、コーヒーを頼むミルクと砂糖マシマシで」
「分かったわ」
シンがアラタに頼まれコーヒーを入れるがその中に白い薬も同時に入れる。
その場面を先に帰ってきた渡航者に見つかってしまった。
「おい!お前何してんだ!」
「どうした!?」
「聞いてくれ村上さんあいつが!」
「犯人がいたのか!?シン!俺から離れるな!」
「止まれ!」
「どこだ!?どこにいる!?」
アラタが辺りを見回しても渡航者の指さす方を見ても誰もいなかった。
「動くな!アラタ、手に持ってるものを置くんだ」
「は?」
自分の両手も見ると鋭利なガラスの破片とロープを持っていた。
「アラタ」
「シン?俺はお前を?」
「もうわかってたんじゃない?」
心の中で今までの記憶と先ほど開示された資料を考え比べながら答えにたどり着く。
アリバイの有無
被害者への怒り
殺されかけた以前の記憶
――ぼくはずっと、裏切った真人が――
――俺はずっと、アロさんと俺を馬鹿にする渡航者が――
「憎かったのか」
「皆寝ているときに別人格が出てきたりしないわ」
【ブラックに限るな】グビッ
【ミルクと砂糖マシマシで】
「そうか、おれはまた間違えたのか」




