サイコパス探偵
「あーもう無理!」
俊太がさじを投げた。
「グランドピアノかなーとか考えてたけど。」
「校舎内で入れるところにグランドピアノなんてないからなー。」
この学校はグランドピアノが音楽室にあるのだが、今日は関係者以外立ち入り禁止になっている。
「あー!誠介君や!」
「ん?」
そこには、真紀ともう一人真紀より少し背が低い女性がいた。
「あ、久しぶりです。」
「邦海君と星梨奈ちゃんは?」
「星梨奈は分かんないです。邦海は隣にいます。」
「え。」
真紀は驚いた。無理もない、誠介の隣にはあの美少女しかいないのだから。
「え。え、え?」
「真紀えしか言ってない。」
「つまり…どゆこと?」
「…女装。」
「おーあたりやで!隣の姉ちゃん。」
邦海が手をたたきながら言った。
「え、噓。声は邦海君や。」
「違和感半端ないな。」
そういうと、その女性はボディバッグの中身を探っていた。
「真紀さん。その人って…。」
「あ、えっとね。相馬紗夏衣っていうの。高木君と同じ事務所で探偵やってるの。」
「まだまだだけどね。まあ、あいつよりは出来る。」
会釈しながら紗夏衣は言った。
「へー。高木さんは今日来てないの?」
「来てるよ。今推理ゲームに没頭してる。」
「あ、俺達もやっててさ。」
というと、誠介は暗号を2人に渡した。
「ん?」
「…グランドピアノかアップライトピアノじゃないの?」
紗夏衣は即答した。
「いや、俺達もそう思ったんだけど。」
「グランドピアノって音楽室にしか無いからさー。」
「…アップライトピアノって何?」
「ま、とりあえず第一ホールに行ってみたら?アップライトピアノはそこにあったから。」
「ほー。んじゃ行こうか。」
誠介が立ち上がると、付けていた腕時計を見た邦海が叫んだ。
「あー!俺確か佐久間に呼ばれてたんや!」
「そーなのか。んじゃ行ってこい。」
「おう。また後で合流しような。」
そう言って邦海が走りだそうとすると、紗夏衣に止められた。
「ふぇ?」
「これ。喉に付けたら声が変わるやつ。」
「へー。チョーカーみたいやな。こうか?」
と言って、邦海は自分の首にチョーカーを付けた。
「そうそう。で、真ん中にあるボタンを押してみて。」
「え、えっと…(ポチッ)あーーー。」
「え、スゲー!変わった。」
「完全に女子になったな。」
「え、スゲー!ありがとうさなさん!んじゃ行ってくるわ!」
「…さなさん?」
「あー。邦海って年上の女性を下の名前で呼ぶ癖があるんすよ。」
「クラスの女子は苗字読みのくせにな。」
邦海よ…今はまだ11時10分だぞ。何をそんなに急いでいるんだ…。