いろいろな告白
「悪い!ちょっと遅れたかもしれへん。」
「大丈夫。10分早い。」
邦海は仮楽屋に駆け込んだ。そこには、純白のドレスを着た佐久間が立っていた。
「ほへー。ドレス綺麗やな。」
「…声変わってるけどどうしたの?」
「ん?あぁ。」
邦海はチョーカーのボタンを押した。
「こういう仕組み。」
「うん。スイッチ入れといて。」
佐久間は、満面の笑みで言った。
「お、おう…。(カチッ)」
「にしても…本当に来てくれるとは思ってなかったなー。」
「いや、まあ、来いって言ったしな。」
彼女は笑っていた。
「?…あ、せや。これ、差し入れみたいな。」
というと、邦海は佐久間にコーラーを渡した。
「相変わらずだね。」
「まあな。」
佐久間はキャップをあけて、コーラーを飲んだ。しばらく沈黙が続いていた。
「ねぇ。」
「ん?」
「私が今から殺されるって言ったら信じる?」
「…はぁ?」
邦海は訳が分からないというふうに首を傾げた。
「冗談よ。今のは忘れて。」
そういうと、佐久間は邦海に赤い封筒を渡した。
「ん?」
「それさ、もし…だよ?もし、私が集合の時間になっても来なかったら封を開けて中を読んで。」
「お、おう…。」
「ごめん。朝呼んだのはこれを渡すためだったんだ。誰も見ていないところで。そう、それだけ。」
「…」
佐久間が何か言いたげなのは分かったが、何が言いたいのかは分からなかった。
「何かしんみりしちゃったね…私の演奏でも聞く?」
「聞く。」
邦海は真顔で即答した。佐久間は、軽く笑うと、悪魔のトリルを弾き始めた。その音色は、邦海が聞いてきた音楽の中で、一番美しく聞こえた。
「どう?」
「完璧。すごいな。俺こんなん弾けへんわ。」
「いや完璧に弾けたら凄いから。私だってさっき何回もミスってたし。」
「…そうなん?」
「そうだよ。」
「そっか…。」
再び静かな時間が訪れた。
「…俺そろそろ行くわ。」
「うん。ありがとね。」
「おう。」
そういって出ようとすると、佐久間が急に名前を呼んだ。
「へ?」
「その姿の時は、一人称私にしておいた方がいいと思う。」
「え。別に俺でもいいと思うんやけど。」
「可愛いのに…。ま、俺っ娘でも可愛いけどね。」
「だ、だから可愛いって言うなよ!」
そういうと、顔を真っ赤にしながら、乱暴にドアを閉めた。部屋の中からは、佐久間の笑い声が聞こえていた。邦海はゆっくりと壁にもたれながら座った。
「俺、イケメンとかかっこいいとかは褒められ慣れてるけど、可愛いは褒められ慣れてないんやって…。特に好きな人からとか…殺す気かよ。」
窓から見える空は、快晴だった。
邦海、言っていいんかそれ。多分本人に聞こえてるぞ。




