暗闇の契約
タイトルが中二病っぽい
一方、邦海は商店街から離れた細い路地を歩いていた。
しばらくすると、酒屋の中に入っていった。
開けた途端、昼間だというのに酔った人達の声が嫌になるほど聞こえてきた。中には邦海のことを冷やかす者もいた。
邦海は店のカウンターには座らず、奥のドアを開けてさらに奥まで歩いていった。
階段を下りてドアを開けると、そこは半地下室だった。
中には誰かがいる。
「…本当に来るとはね。」
その人は少し驚いたような、感心したような声を上げた。
「来ないとでも思ってたんか。」
「まあね。」
邦海はドアに寄りかかって奥にいる人を睨んでいる。
「そんな怖い顔をしないでおくれ。」
「やだね。」
「まあ歓迎しよう。私の砦に来たのは君が初めてなんだから。」
というと、その人は明かりをつけた。
「やっぱりお前が…。」
「そ、私が大総統さ。…何で気づいたんだい?」
その人…大総統はそこら辺にあった椅子に座り優雅にコーヒーを飲んだ。邦海にも勧めるが、彼は首を振って断った。
「簡単だよ。星梨奈の好きな人を知っていて且つ大総統なんて名前なんか付けるのはお前しかいないんだもん。それに?何だっけ、忘れたけど…えっt」
「袁世凱かい?それは私ではなくt」
「校長やろ?」
「そこまで知っていたのかい…。」
大総統はひどく驚いた顔をした。どうやら想定外だったようだ。
(まあこれは完全に勘やってんけど。)
「それで?私が大総統だって言って警察に突き出すのかい?」
「そうしても良かったけど…どうせ俺を殺すやろ?」
邦海は机の上に置いてあった拳銃を指した。
「殺すつもりはない…監禁しようとは思っていたけども。」
そういうと大総統は邦海の目の前に鎖を投げた。どうやらこれで縛るつもりだったようだ。
「じゃあ何でここに?無事で返すとでも思って?」
大総統は不敵な笑みを浮かべた。表情からは『お前の行動なんて読めている』と言いたげだ。
邦海は暫く黙って顔をしかめていたが、やがて意を決したように口を開いた。
「…協力しようと思ってだな。」
そう言う邦海はどこか別人のように見えた。
「そうか。断りたいが…まあ君の父親に感謝するんだな。ちなみに理由は?」
邦海は床を見つめたまま答えない。
「有間?」
「んえっ?何?」
「なんで手を組みたいんだ?」
「いや、まあ…。」
邦海は言いにくそうにしている。
「糞親父を殺そうかと…。」
「…!?」
予想外の答えに大総統は思わず立ち上がった。
「は?」
「いやまあ、ほかにもあるけど…。」
「肉親を殺す…のか?」
「ああ。」
大総統は呆れて大きなため息をついた。
そして邦海に媒体を渡すと、帰るように指示した。
邦海がいなくなると、大総統は無言で頭を振った。
(こっちは肉親を殺した人に復讐しようとしてるっていうのに、あっちは親を殺す…か。世の中不思議だな、もう少し生きてみるのも悪くはない。)
○
「血のりだから安心して。」
時雨は今にも泣きそうな星梨奈を必死になだめていた。
誠介はというと、犯人に掴みかかていた。
「なんで俺のクラスメートを殺したんだよ!」
「仕方ねぇだろ!袁世凱とやらに言われたんだから!」
「良心ってやつは痛まなかったのか!?」
後ろでは春井が呆れながらも止めようとはしていなかった。
「良心?んなの人殺せるやつが持ってるわけないだろ?」
「とある誰かさんは持ってたぞ!?」
「誰だよ、てか俺と比べんじゃねーよ。」
「あぁ!?」
「誠介君、そこまでにしておけ。」
流石にヤバいと思ったのか春井はストップをかけた。
誠介は怒鳴るのをやめたものの、怒りが収まらないのか犯人…百織栄乙を睨んでいた。




