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勇者魔王魔法少女悪役令嬢錬金術師  作者: 鎌ろん
第一章:悪役令嬢の復讐
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悪役令嬢の復讐3

 夜間の移動ということでノアに頼んで、私とルナをハミングの城まで運ばせた。

 ハミング伯爵には軽く事情を説明し、また明日細かく今後について話し合うことになった。

 今日はもう遅い時間だからそれぞれに割り当てられた部屋で休むということになったのだけれど、私が部屋で寝る準備をしていると扉を叩く音が聞こえた。


「エメシー様、ルナです。入ってもよろしいですか?」

「どうぞ。わざわざ部屋を訪ねてくるだなんて、一体どうしたの?」

「いえ、その、一つ聞き忘れていたことがありまして。エメシー様は今日はお怪我はされなかったのですか?もし良ければ、私に癒させて欲しいのです」


 何だか心配そうな顔をしていると思ったら、私が復讐の際に怪我をしたのではないかと気にしてくれたのね。


「怪我はしていないわよ。誰にも抵抗させなかったから」

 私が何でもないことのようにそう言うと、ルナは少し言葉を詰まらせたように口元を歪めた。


 ルナにとっては私が人を何人も殺したということを、受け入れようとしても整理が追い付いていないのかもしれないわね。


「……エメシー様、私に負担を掛けないように無理をしていませんか?そんな軽い口振りで言っても、エメシー様が人を何人も殺めて何も思わない人間であるとは思えません。体は無事でも、心に傷を負っているのではありませんか?」

 ……確かに、何も思わないと言うと嘘になるわね。かと言って、傷と言えるほど心が痛んでいるのかどうかは分からないのだけれど。

 まあ、せっかく気を使ってもらっているのだし、このまま何もせず帰ってもらうのは気が引けるわね。


「そうね……。今日はちょっと心が疲れてしまっているかもしれないわね。だからあなたの力を貸してもらえるかしら?」

 そう言って私はルナに左手を差し出した。


「はい!私の力が役立つのなら、いくらでも貸させてください!」

 私を癒せるのが嬉しいのか、元気にそう言うルナ。

 そして、ルナが右手を伸ばしてきて私の左手をルナの右手が包み込む……のかと思ったら、そうではなかった。ルナはお互いの指と指が交互に組み合うように絡めてきた。

 思わぬ接触方法に私が戸惑っていると、ルナは手にギュッと力を込めて更に今の私達の状態を印象付けてきた。


「どうですか?これだと癒しの力を強く感じませんか?」

 癒しの力を強く感じる……?手で触れた相手を癒すのが聖女の力だっていうのは知っているけれど、触れ方によって効果の大きさが変わるって言うの?

 それよりも、ルナがなんだかしたり顔なのが気になるのだけれど……。


「よ、よく分からないわ。最初にしてもらったときと何も変わらない気がするけれど……。ひょっとして、あなた、私のことをからかっているんじゃないの?」

「からかうだなんて、そんなつもりはないですよ。それよりも、もっとしっかりと私の力を感じ取ってみてください」

 やはりしたり顔で嬉しそうなルナが、そう求めてくる。

 私は言われた通りにルナから流れてくる癒しの力を意識してみたけれど、どうにも違いが分からない。


「うーん、やっぱり違いが分からないわ。もしかしたら癒しの力の効果には個人差があるのかしら。それで、私達の相性が悪くて癒しの力がきちんと発揮されないとか?」

 そうやって私が原因を探ろうと考察していると、ルナは少し慌てた様子になり

「そ、そんなことはないです!さっき言ったことは嘘なんです。別に触れ方で癒しの力が変わるなんてことは無くて、ただ私がこうやってエメシー様の手を握りたかっただけで……。だから、相性が悪いだなんて不吉なことは言わないでください」

と発言を撤回しだした。


「そうだったの?変な嘘を吐くのね。手の握り方なんてどんな風でも変わらないでしょうに」

「すみません。でも、こうやって握ればエメシー様をもっと強く感じられる気がしたんです。それに、実際にやってみて、それは間違いでないと分かりました」


 そう言うとルナは握った手に意識を集中させて、頬を赤く染めてうっとりとした顔になった。


 どうしたのかしら、ルナ。もしかして、この握り方が原因なのかしら?

 私はルナがしているのを真似て、左手に意識を集中させてみた。

 感じるのはルナの体温。そして、脈動。速さの違う私の脈動とルナの脈動が合わさって、不規則に指と指の間の敏感な部分を刺激する。その刺激はそのまま脳に鋭く甘い感覚を走らせた。


 ちょっと待って、こんな感覚知らないわ!指を組み合うだけで何でこんなに変な気持ちになるの?ノアに血を吸われた時と似ているようで、少し違って……。

 早い脈動はルナのもの?それなら、ルナも私と同じ感覚になっているということかしら。そう思うと、なんだかすごく気恥ずかしくなってくるわ。


「脈が速くなっていますよ?エメシー様も気付かれましたか?このままだと脈の速さを追い抜かれてしまいそうです」

 私の感情を読み取ったのか、悪戯っぽい笑みを浮かべてルナが言う。


 不味いわね、このままだとルナに弄ばれた感じになってしまうわ。


「脈、ああ、脈ね!そんなの意識していなかったけれど、きっとこの部屋が暑いせいかしらね!?」

 私はさも今気が付いたかのように振る舞う。

 けれど、ルナはそれすらも見透かしたかのように追い打ちをかけてくる。


「暑いですか?それなら、手をつなぐと余計に暑くて嫌ですよね。残念ですが、癒すのはこの辺りで終わりにしましょうか」

 そう言ってルナは手に込める力を緩め、少しずつ手を放そうとした。その手はなんだか物寂しそうで……、いや、寂しく感じているのは私の方?とにかく私はルナの手を手放したくない衝動に駆られた。

 そして、私は咄嗟に手に力を込めてルナの手を引き留めてしまった。


「あれ?エメシー様、暑いのではなかったのですか?」

 ルナに掌の上で踊らされているような気がした。けれど、体が勝手にやってしまったのだから仕方がない。


「だ、だってまだ私の心は完全に癒されていないのよ。私を癒してくれるって言ったんだから、途中で止めるだなんてそんなの許さないわ」

 敗戦濃厚になっても、なんとか体裁だけは取り繕おうと口先だけは威厳を保つ。

 指の間から伝わるお互いの脈はあっという間に同じ速さになり、一定のリズムを刻むようになってしまっている。ルナはそれを感じ取ったようだ。


「ふふっ、やっと私に合わせてくれましたね。私、あなたのことがとても愛おしいです」

「またそうやってからかって……」

「だから、からかってなんていないです。それに、今回は嘘でもありませんよ」


 あうぅー、まっすぐで澄んだ眼差しでそんなこと言わないでよ……。言ってて恥ずかしくならないのかしら?

 それにしても、どうしてこんなことになってしまったのかしら。

 ノアはあんな性格だから振り回されるのも仕方がないと思えるけれど、良識のあるルナにまで良いようにされるだなんて……。

 二人からは愛情を感じるし、振り回されても嫌には思わないのだけれど、ここまで自分の心を制御できないのはやっぱり変だわ。

 きっとジェード様に私の愛を踏みにじられた心の傷がまだ残っているのね。

 だから、こうやってルナに癒してもらえば、その心の傷も治ってちょっと愛情を向けられたくらいで動じるなんてことは無くなるはず……よね?

 そうと分かれば、今日はとことんルナに癒してもらいましょう。今日だけは振り回されるのを我慢して、以降は尊厳を保って二人に接することにするわ。今日の恥は必要経費なのよ!


 そう決意して、私は静かにルナと手を繋ぐ事に集中したのだった。

 部屋は恥ずかしさのあまり体が発する熱で本当に暑くなってしまっていたけれど、私達は手を放すことはなく、静かに、絡めた指にただ強く意識を向け続けた。


これにて第一章は完結です。

連続投稿は一旦終わって、第二章が完成し次第また投稿を始めます。

早ければ一週間後くらいには再開したいですが、断言はできませんので気長にお待ちください。


完結記念に活動報告で作者目線での第一章について語っています。

第二章も軽く紹介しているので気になる方はぜひ読んでいってください。

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