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【説明】


 再び言われた木下コトネからのその発言に、俺は困惑していた。


「異能のせい? どういう事だよ。つーかお前俺に関わらなくなるんじゃなかったのか」

「誰もそんな事言ってないわ。それに今回は北条さんのためにも教えなければいけないと思ったんだもの」

「……まぁいい。それで? 異能がなんだって?」


 そう言うと彼女はここじゃなんだから、と人気のない体育館裏に俺を連れ出した。これ、傍から見たら俺がこいつに告ろうとしてるように見えるんじゃないだろうか。


「彼女は異能使いによって攻撃を受けた可能性が高いの」

「待ってくれ。まず異能使いってのはなんなんだ。そんなにいっぱいいるのか?」

「……そうね。じゃあまず異能について話しましょうか」


 そう言って彼女は語り始めた。


「異能は、ある日突然使えるようになる異常な能力のことよ。火を出せたり水を出せたりね」

「そんなもの今まで聞いたことなかったぞ」

「普通表の世界には出てこないもの。でも噂や都市伝説程度では聞いたことあるんじゃないかしら? 超能力や超常現象。未解決事件、歴史の裏には異能が絡んでいるわ。日本にも有名なのが昔いたでしょう。陰陽師って」

「本当だとしたらなかなか興味深い話だな」


 俺が疑り深くそういうと、彼女はくすりと笑った。


「まだ信じてないのね。まぁいいわ。異能使いを集める機関も存在するの。けどそれも一枚岩ではなくてね。敵対する機関なんかもあってややこしいのよ」

「お前もその機関とやらの所属か?」

「ええ、一応ね。それで話を戻すけど、北条さんからは異能の残滓を感じたわ」

「異能の残滓? なんだそれ、匂いとかあるのか?」

「いえ、勘とでも言いましょうか。異能使いにはわかる雰囲気というかオーラがあるのよ。それが彼女を覆ってた。悪意のあるオーラがね」


 魔力を感じ取るようなもんか……?

 なんだかいよいよ現実味がなくなってきたな。


「それで? ユイはなんで異能の攻撃なんて受けたんだ?」

「それはわからないわ。北条さんがどこかのタイミングで異能使いと接触してしまったのでしょうね」


 ユイが自らそんな事に関わるとは思えない。それに何か異変があったら俺に報告してるはずだし……。


「じゃあどうしたらユイは治るんだ?」

「攻撃した異能使いを見つけて解除させるのが一番手っ取り早いわ」

「おいおい、どこにいるかもわからん奴を探すのか?」

「そのための“探偵”よ。それに能力にも色々と制約があって、基本的には離れていると能力が解除されるはずだから」

「つまりユイに攻撃した奴は近くにいるってわけか……」

「そういうこと!」


 ふと彼女を見るとニヤニヤと笑っていた。


「なんだよ」

「ふふ、北条さんの事になると必死なのね」

「うるせぇ……とりあえず状況は把握した。それで、俺は何をしたらいい?」

「何もしなくていいわ。あなた、異能関係シロウトなんでしょう? 私に任せなさい」


 木下コトネは腰に手を当て胸を張ると得意げに続ける。


「助けてもらった借りをここで返すわ。私が北条さんの事は解決してあげる」

「ありがたい申し出だが、お前だけに任せるわけにはいかないな」

「なんでよ、私が信用できないの?」

「そうだよ。俺がお前を信用できる要素なんて1つもないだろう? もしかしたらお前がユイを攻撃した犯人なのかもしれないじゃないか」


 俺がそう言うと、木下コトネは嬉しそうに頷き笑った。


「疑り深いのね。やっぱりあなた、探偵に向いてるわ。いいわ、じゃあ一緒に調べましょう」

「わかった。で、異能の事件はまず何から調べるんだ?」

「まずは本人に何か心当たりがないか訊かないと」


 そう言って俺たちは保健室へと戻っていった。俺と木下コトネが一緒にいるのも変なので、保健室には俺だけが入った。そして俺がユイにそれとなくここ最近に起きた事を聞いた。


「いっくんが事故で入院してからずっと私はお見舞いに行ってたよぉ」

「体調が崩れたなぁって思ったのはちょうどいっくんが目を覚ました14日目だったかなぁ。たぶん疲れが溜まってたんだとおもうけど」


 ユイはそんな風な事を言った。

 そして俺たちは保健室を後にし、聞いた事を木下コトネに話しつつ近くの階段に座りながら考える。


「やっぱり全然異変はなさそうだったな」

「いえ、私は1つ気になる点があったわ」

「何?」

「あなたへのお見舞いって北条さんだけが来たわけじゃないでしょう?」

「まぁそうだな。友達はたくさん来たらしい」

「そのお友達はいつ来たかわからないの?」

「ばらばらに来てたみたいだからな。おいおいまさか、そいつらの誰かがユイに攻撃したってのか?」

「そのまさかよ。それが一番可能性があるでしょう?」

「まぁそうかもしれないが……なんの理由で」

「理由なんていくらでも考えられるわ。今はとにかく容疑者を絞りましょう。考えられるのは一番怪しい14日目ね」


 彼女のその言葉で俺たちは、ユイに攻撃した犯人を見つけるために捜査する事になった。


 というわけで俺はその日に俺の見舞いに来ていた人物が誰だったかを確認するため、授業も終わり放課後になったタイミングで俺の見舞いに来てくれていた友達に聞き込みを始めた。


「どうやらその日に来てくれてたのはこいつらみたいだ」


 俺は名前を書き込んだメモ用紙を木下コトネに渡した。メモにはこう書かれている。


 高杉

 中原

 牧野

 諏訪原

 佐々木

 綾小路

 篠原


 上5人が男下2人が女子だ。


「男子5人、女子2人、か」


 彼女は7人いるその名前にざっと目を通すとこう言った。


「で、一番北条さんと仲良くないのは誰?」

「言いづらい質問をするな」

「それが最も可能性が高いもの。嫌いな相手っていうのがね」

「だけどこの中にユイの事を嫌ってるやつなんていないと思うぞ。あいつは鈍臭い奴だがどこか憎めないからな」


 すると木下コトネは顎に手を当てなにか考え始める。


「けどそれは友情の範囲でしょ? もしそれが恋愛絡みだったら?」

「……どういう事だ?」

「こうは考えられないかしら。この2人いる女子のどちらかが上杉くん、あなたの事が好きなのよ」

「ちょ、ちょっと待て、何言い出してんだ」

「そして普段からあなたと近しい北条さんを恨めしく思った彼女は、偶発的に能力を使ってしまったの。どう?」


 つぶらなひとみで首を傾げて聞いてきやがった。俺はメモ用紙に書かれている女子2人の名前を指差しながらこう返す。


「よく見ろ、ここに書かれてる女子を。篠原ってのはユイの友達のめーちゃんとかいう子だ。俺とはそんな仲良くないけどユイの付き添いで来てくれたんだろう。だからこの子は無い」

「じゃあもう1人は?」

「こっちの方がもっと無いだろ。綾小路あやのこうじだぞ。今のクラスの委員長じゃん。まぁ去年も委員長だったんだけど。委員長は責任感強いから俺の見舞いに来てくれたんだろうな。俺にだけ特別来てくれたってわけじゃ無いはずだ」

「ふぅん……」


 木下コトネは興味深そうにそう言うと再び何か考え始めた。


「じゃあこの男子たちとあなたは仲良いの?」

「まぁそうだな。この中で言えば高杉とはかなり仲はいいと思う。他はまぁ普通だな。クラスメイトの友達って感じだ」

「高杉君と北条さんは?」

「接点はあまりないと思う」

「なるほど……さっぱりわからないわね」


 さっぱりわからねーのかよ。全然ダメじゃねーか。


「こうなったらあれね!」

「なんだ?」

「事情聴取よ!」


 なんだかこの探偵、あまり役に立たなそうだとおもうのは俺の気のせいだろうか。

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