【事情聴取】
その日はもうみんな帰り始めていたので俺たちも一旦家に帰った。そして次の日、俺たちは事情聴取をする事になった。まずは高杉からだ。
高杉は顔が整っていて、気さくな奴なためかなりの人気者だ。
「なんだよ上杉。急に話があるなんてさ。それに木下さんも一緒かよ。お前ら付き合ってるって噂本当なのか?」
「なんだその噂。それは嘘だな。まぁそれはともかく、高杉お前俺の見舞いに来てくれたよな」
「ん? ああ、2回くらい行ったな」
「その時何か変な雰囲気の奴とかいなかったか?」
「変な雰囲気ってなんだよ。よくわからないけど……みんなお前のこと心配してたと思うぜ」
まぁ変な雰囲気って言われてもわからないか。俺が他の質問を考えていると、木下コトネが口を開いた。
「あなたは何故上杉君のお見舞いに来ようと思ったの?」
「なんでってそりゃ友達だからだろ」
泣けること言ってくれるぜ高杉。
「他の人もみんなそうかしら?」
「まぁ……そうなんじゃねえか? 女子の方はよくわからんけど、少なくとも俺と佐々木と牧野は一緒に行ったからそのはずだぜ」
「あなたたち3人は仲良いの?」
「そうだな、仲はいい方だと思うが。つーかなんなの? この質問」
「まぁ気にしないで。ありがとう高杉君。じゃあ次に行きましょう上杉君」
そう言って高杉との話を切り上げた木下。今のでいいのか? 何もわかった気がしないんだが。
「何が重要になるかなんて調査中はわからないものよ」
彼女はいかにも上級者っぽい言い方でそう言った。そんなわけで俺たちが次に話を聞くのは中原だ。
中原は特筆すべきところはあまりない普通の奴だ。クラスでもあまり目立ったりはしない。
「よう中原」
「上杉君に、木下さん。どうしたの」
「ちょっと聞きたいことがあってな。お前俺のお見舞いに来てくれたよな?」
「え、う、うん。一回だけだけど」
「その時何か変な事とか起きなかったか?」
「へ、変な事? いや別に?」
中原はいつもおどおどしている。性格なんだろうけどこの状況だと怪しく見えるな。
「中原君、あなたなんで上杉君のお見舞いに来ようと思ったの? あなたたちそんなに仲良くないでしょう?」
こいつ、凄いデリカシーないな。
「そ、それはクラスで1人1回は上杉君のお見舞いに行こうって話が出たからだよ」
「なんだそれ、初耳だぞ」
「あ、ご、ごめん。本人に言うとあまり気のいい話じゃないから口止めされてたんだけど」
まぁ無理矢理行かされてるとも取れるから、あえて言わなかったのか。俺は特に気にしたりしないけどな。
「それは誰が言い始めたのかしら?」
「い、委員長だよ。綾小路さんさ。クラスのみんなに連絡を取って、クラスのグループトークを作ったんだ」
それは容易に想像がつくな。
「なるほど。それで、お見舞いに行く日はどうやって決めたの?」
「グループトーク内で日程を調整して決めたよ。それぞれが行ける日に行こうって言って」
「ふぅん。あなたは、何故あの日にしたの?」
「べ、別に意味はないさ。空いてる日の中の1つにしただけだよ」
「なるほど、ありがとう。参考になったわ」
「い、いったい何なのさ。まるで尋問だ」
「探偵ごっこよ」
彼女はそう言って彼から離れた。しかし俺のお見舞いにそんな委員長の発言があったとはな……。
「新しい発見ね。謎解きっぽくなってきたわ」
そんなこんなで次は牧野だ。牧野は少し荒っぽい性格だが情に熱い奴だ。
「見舞いに行った理由? んなもん心配だったからに決まってんだろうが」
「変なこと? あぁ、そういえば篠原がちょっと諏訪原と揉めてたな。理由は知らん」
「あの日にした理由は高杉がその日にしようって言ったからだな。あいつはその前にも一回行ってたみたいだけど」
牧野から聞いた情報は以上だ。
次は諏訪原。彼はかなり理知的で頭がいい奴だ。
「見舞いに行った理由ですか。それは勿論君が心配でしたからね。まぁ綾小路さんの提案があったのは大きいですが」
「変な事? そうですね、少し篠原さんと口論になりましたか」
「理由は僕が北条さんに少しは休んだ方がいいですよと、言ったのが原因なんですが」
どういうことなのか。諏訪原に話を聞いていくとこういうことだった。
諏訪原はずっと看病し続けているユイが疲れているように見えたので、休む事を勧めた。するとユイは、気持ちは有り難いけどここから離れたくないと言ったらしい。
しかし馬鹿正直な諏訪原は、続けざまの看病は心身ともに疲弊し結果的に看病すらまともにできなくなりますよと言ったみたいだ。その感情をすっ飛ばしたかのような助言に、めーちゃんこと篠原が怒って口論になったようだ。
「最終的には僕が謝って終わりましたよ。納得いきませんでしたがね」
「見舞いをあの日に決めた理由ですか。特にありませんがまぁ予定が空いてたからですかね」
以上が諏訪原の話だ。
次は佐々木である。牧野、高杉と仲のいい奴だ。
「見舞いに行った理由? まぁ高杉に行こうって言われたからかな」
「変な奴? うーん、中原はいつも変かな。俺よく人の目線を気にしちゃうんだけど、あの時中原は、お前の事を物凄く見てたんだよ。あれは見てるってより睨みつけてる感じかな」
「あの日にしたのは高杉たちに言われたからだね。そんな事より木下さん、今度ご飯いかない?」
「遠慮するわ、協力ありがとう」
バッサリと佐々木を振る木下。可哀想だな。
さて、次は篠原だ。
「見舞いに行った理由? まぁユイがずっと看病してるって言うから私も行こうかなって。上杉君には悪いけどユイがちょっと心配だったの」
「変な人? 諏訪原にはムカついたわねー、あいつには人の心ってものがないのかしら? 実はあの時中原も看病休んだ方がいいって言ってたんだけどユイが一蹴したのよね。中原しょぼくれてたわ」
「あの日にした理由? 特にないわ」
「私が上杉君を好きかどうか? ふふ、悪いけど別に好きじゃないわ。だってあまり話したこともないもの、ねぇ?」
木下コトネ、何をさらりと聞いてんだこいつは。俺が恥かいただけじゃねえか。
そして次が最後、委員長綾小路である。
「見舞いに行った理由? それは勿論上杉君の事が心配だったからです。当たり前の事でしょう」
「変な人? いえ……ただ日程を皆さん決める時、中原君だけ急に日にちを変えましたね。あれはそう、北条さんが日にちを変えたタイミングと同じでした」
「あの日に決めた理由? 私はあの日だけでなく他に3回は行ってますから特に理由はありません」
「わ、私が上杉君の事を好いているか? 勿論嫌いではありませんが、私には恋愛というものがわかりませんので……ただ北条さんみたいに献身的に尽くす姿は憧れます」
以上で全ての調査を終えた。
俺たちは1度屋上に行き、聞いた話を整理していた。
「うーん、本当にこの中に犯人なんているのか?」
「いるわ、1人だけ嘘をついているもの。そして私は犯人がわかった」
「え? 誰だよ!」
「そうね、犯人は――」




