前話「毎日」
この世界は地下にある複数の地区がトンネルで繋がっていて、地区ごとに異なる社会が構成されている。
そして俺の住んでいる地区は唯一地上への出口が見える蒸気と機械のマルクト地区だ。
マルクト地区は地区全体がドームに覆われていて明かりは街の電灯と地上から約300メートル真上に空いている穴だけらしい。そしてマルクト地区のシンボルは穴から吊るされた爆弾であるらしい。
その爆弾が一体何なのか、爆発したりしないのかは誰にも分からない。というのもいつ誰が作ったか分からない地区のルールに「地上から150メートル超える建造物の建築と150メートルを超える飛行、跳躍を禁ずる」とあるからだ。噂では飛行機能を持っていたとある機械人が150メートルを超えたところで突然発狂しながら落下死したという事件から試すやつは誰一機もいなくなったらしい。まっ、俺には関係のないことだがな。なんせ俺が生活している場所はマルクト地区の地上から100メートル下にある廃棄資源保存地区という名の機械人の墓場で今言ったことすらもウソかマコトか分からない。俺は旧戦闘機能付探査機という種類の機械人で記憶がある時からずっとここにいる。
一日の始まり、俺は活動モードに切り替え、家とは呼べない廃墟を出たらマルクト地区から落ちてきた廃材や機械人のなれの果てを積載可能量まで拾ったら近くで徘徊している暴走機械獣らの目をかいくぐりつつ、俺の唯一情報をおんぼろのCPUに入れる場所である納品所で拾ったものを売り払いながら納品所の奥で流れているラジオを聞いて上を様子を知り(受付の奴と話さないのかって?俺の音声機能はいかれちまっているのか喋ることができない。そして受付の奴も筆談で会話するなんて面倒なこともする気はないようなもんで結局俺がコミュニケーションする機会は失われているのさ)、廃材をボルトや燃料に交換したら、家へ帰って休息モードに入るまでの数秒間を何もなかった日だと思いながら眠る。それが俺がずっとやってきた毎日だ。そしてこれからもそんな毎日を落ちてくる奴等と同じになるまで繰り返すのだろう。




