表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異変のダンジョン  作者: 闕恆遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/7

第1章:1.2:物理法則の挽歌:暗いトンネル内での初交戦

2024年2月15日、午前二時十四分。


「初航の災変」発生からすでに八時間近くが経過していた。


台北地下鉄板南線・龍山寺駅のホームには、もはや普段の通勤客の喧騒はなく、その代わりに一片の静寂と、押しつぶされそうなほど重苦しい金属の衝突音だけが響いていた。


ホームの広告用電箱は依然として灯っており、微かな蛍光が地面を照らし、二十体余りの完全武装した黒ずくめの影を映し出していた。


それは内政部警政署が誇る最精鋭の「維安特勤隊」、および国防部が緊急派遣した、都市でのテロ対策や極限状況の対処を専門とする「憲兵特種勤務隊」であった。


隊員たちはみな重い防弾ベストを着用し、双眼鏡式の暗視装置を備えた戦術ヘルメットを被り、手には国軍が現役で使用するT91戦術歩槍をしっかりと握りしめていた。


銃口の下に取り付けられた戦術ライトが青白い光束を放ち、西門駅へと続く真っ暗なトンネルの入口をまっすぐ捉えていた。


空気中には、湿った腐泥と鼻をつく金属の錆びた臭いが入り交じった冷たい匂いがますます濃くなり、呼吸をするたびに、その冷え切った感覚がまるで肺葉に直接貼り付くかのように、思わず身震いを覚えた。


「各分隊、注意しろ」


「通信を点検せよ」


「身分証明および記録用のカメラを起動せよ」


指揮官を務めるのは、毅然とした面持ちで、両目を血走らせた中校(中佐)であった。


彼はインカムを押さえ、声を押し殺しながら、隠しきれない疲労と深刻さを漂わせた口調で命じた。


「我々の任務はトンネル内に三メートル進入し、」


「台北メトロの生存可能性のある従業員を捜索し、」


「空間異常の原因を突き止めることだ。」


「もし正体不明の生物に遭遇した場合は、」


「発砲を許可する。」


インカムから何度か重々しい「了解」の声が返ってきた。


その後、部隊は標準的な戦術捜索隊形を組み、冷たい砂利や線路を踏みしめながら、トンネルの暗がりへとゆっくりと足を踏み入れた。


狭く円弧を描くトンネル内に足音が反響し、自分たちの呼吸音を除けば、周囲はまるで時間すらもが停止したかのように静まり返っていた。


約二百メートル進むと、周囲の光は完全に消え去り、暗闇の中を切り裂くのは戦術ライトの光束だけとなった。


その時、前方を斥候として進んでいた兵士が左手を挙げ、拳を固く握りしめた。

部隊全体が瞬時にしゃがみ込み、二十挺以上の歩槍の銃口が同時に前方へと向けられた。


暗視装置の緑色の画面越しに、そして戦術ライトの光の縁に、彼らはあの断裂した地下鉄車両の姿を捉えた。


車両の後半部分はまだ無事に線路の上に佇んでいたが、前半部分は突如として消え失せていた。


そして、鏡のように平らなその切断面からわずか五メートル手前の場所には、あの灰みがかった円形の穴が浮かんでいた。


車両の外側から見ると、その穴の周りの空気は、まるで真夏の熱せられたアスファルト道路のように、肉眼でもはっきりとわかるほどの激しい歪みを引き起こしていた。


その歪みは、トンネルのコンクリートの壁面までもが視覚的に波状の線へと変化させるほどであった。


それは炎でもなければブラックホールでもなく、一種の純粋な灰色であり、背筋が凍るような微光を放っていた。


「長官……」


「あそこに何かいます」


斥候の兵士の声がインカム越しに激しく震え、戦術ライトの光束が断裂した車両の屋根に焦点を合わせた。


そこには、成犬ほどの大きさがある異形の生物が三体、這いつくばっていたのだ。

やつらの身体は戦術ライトの光を受けて一種の半透明なガラス質のような質感を帯びており、内部にある骨格のような不気味な影がはっきりと見て取れた。


細かい剛毛が密集した八本の灰色の関節が車両の外殻をしっかりと捉え、歯が浮くような擦過音を立てていた。


最も恐ろしいのは、やつらの頭部にある巨大な複眼であった。


青白い光の中、その複眼は淡く、いかなる感情も帯びない暗紅色の光を放っていた。


ライトの光に刺激されたのか、三体の影の怪物のうちの一体が突如として口器を開き、金属同士がこすれ合うような極めて鋭い低い唸り声を上げた。


「撃て!」


「射撃開始!」


指揮官は一瞬たりとも躊躇せず、狂ったように大声で命じた。


その瞬間、狭い地下鉄のトンネル内に耳をつんざくような銃声が爆発した。


二十挺以上のT91歩槍が同時にまばゆい火花を吐き出し、無数の五・五六ミリ高速弾が恐るべき運動エネルギーを伴って、三体の怪物めがけて狂ったように浴びせられた。


これほど狭い空間において、この火力の交錯はどんな生物をも一瞬で引き裂くはずであった。


しかし、その直後に起きた光景は、百戦錬磨の特殊部隊員たちを魂の底からの恐怖へと陥れた。


薬室の中で火薬が爆発し、弾丸が鋭い唸りを上げて銃口から飛び出した。


だが、その弾丸が灰色の穴を取り巻く約三メートルの歪んだ力場へと足を踏み入れた瞬間、本来なら高速で飛行しているはずの弾頭が、まるで極めて濃厚な見えない接着剤に突っ込んだかのように、わずか半メートルの間に物理法則を無視したかのようなスピードで急激に減衰した。


誰もがはっきりと目撃した。


無数の弾頭が空中で突如として動きを鈍らせ、最後にはすべてのエネルギーを失い、力なく、パラパラと線路と砂利の間に落ちていったのである。


「そんな馬鹿な……!」


「弾道が完全に食い止められたぞ!」


「手榴弾だ!」


「手榴弾を使え!」


一人の憲兵特勤隊員が安全ピンを引き抜き、その手榴弾を力任せに投げつけた。

手榴弾は空中を描いて弧を描き、あの灰色の領域に入った瞬間、同じように水面に落ちた石のように極端に速度が落ち、最後には怪物の足元に力なく転がるだけとなった。


ド――ン!


手榴弾が爆発した。


だが、その爆発による衝撃波も無数の破片も、あの不気味な力場の中ではごく小さな範囲にまで圧縮されてしまい、怪物の外皮すら傷つけることができなかった。


火薬が燃焼することで生じる化学的な推進力は、その空間の前ではすべての威厳を完全に奪い去られていた。


怪物たちはこの突然の騒音に怒りを買ったようだった。


その中でも最も体格の大きな影の怪物が、車両の屋根から猛然と跳び降りた。


やつらの動きはぼんやりとした灰色の稲妻のようであり、力場の粘着感などまるで通用していないかのようだった。


「うわあ――!」


悲鳴が一瞬にして銃声を切り裂いた。


斥候の兵士は反応すらできず、胸元の防弾チョッキごと頑丈な肋骨を、あの鋭い灰色の四肢に容易く貫かれてしまった。


戦術ライトの光の輪の中に鮮血が飛び散り、鮮烈な血の霧と化した。


怪物の持つ暗紅色の複眼が冷酷に目の前の獲物を凝視し、次の瞬間、猛烈な勢いで振り払うと、体重八十キロを超える屈強な隊員をまるでゴミのようにトンネルの壁面へと叩きつけた。


「撤退だ!」


「早く退却しろ!」


指揮官の声は完全にコントロールを失っていた。


弾丸は通用せず、科学技術も役に立たない。


この純粋で、一方的かつ残虐な捕食行動は、台湾全土を圧倒するはずの精鋭兵士たちにかつてない絶望を味あわせた。


部隊は慌てふためいて後退を始めたが、怪物のスピードがあまりにも速すぎた。

二体目、三体目の影の怪物がトンネルの壁面を這うようにして迫り、鋭い剛毛がコンクリートを削る絶望的な音が響き渡る。


次々と隊員が闇の中へと引きずり込まれ、骨の砕ける音と悲鳴がインカムの通信チャンネルの中で地獄の交響曲のように入り交じった。


部隊全体が崩壊寸前となり、全滅しようかというその時、最後尾でしんがりを務めていた一人の老しごう(ベテラン下士官)が、混乱の中で線路に足を引っ掛け、転倒してしまった。


一匹の影の怪物がすでに彼の目の前まで飛びかかっており、粘液をまとった口器が今にも彼の顔に触れんばかりだった。


極限の恐怖とアドレナリンの急上昇の中、老下士官はもはや死を覚悟し、手の中で使い物にならなくなった歩槍を思い切って放り投げた。


そして反射的に、すぐ傍らの線路脇に、かつての地下鉄メンテナンス作業員が置き忘れていた重く、長さが一メートルもある大型の重炭素鋼製バールを手掴みにした。


「くたばりやがれ!」


「この化け物が!」


老下士官は狂ったように怒鳴り声を上げ、両手で重い鉄の棒をしっかりと握り締め、全身の筋肉の力を振り絞って、怪物の頭部めがけて猛烈に振り下ろした。


物理学におけるテコの原理と、人間の筋肉収縮が生み出す純粋な物理的パワーが、この瞬間に爆発した。


重い鉄の棒が空気を切り裂き、鈍い唸りを上げた。


ガキィンッ!


金属と甲殻がぶつかり合うこの上なく澄んだ音がトンネル内に響き渡った。


歩槍の弾丸すら軽々とはじき返したはずのその影の怪物は、この重い鉄のバールで頭部を殴打された瞬間、ガラス質だった半透明の甲殻が突如として大きく凹んだ。


大量の灰色がかった緑色の生臭い液体のしぶきが裂け目から噴き出し、怪物は苦痛に満ちた嘶き声を上げた。


その巨大な身体は、この純粋な物理的打撃によって二歩も後ろへと押し戻された。


「物理攻撃が効くぞ!」


「叩き潰せ!」


「斬りつけろ!」


老下士官は一瞬呆然としたが、すぐにインカムのチャンネルに向かって狂ったように叫んだ。


この悲壮な叫び声が、この凄惨な初交戦における唯一の救いの綱となった。


残された隊員たちは我に返り、もはや銃を撃つことは諦め、腰に携行していた格闘用軍刀を抜き放つか、あるいは周囲に転がっている鈍器になりそうなあらゆる金属管を拾い上げ、狂ったように振り回して身を守りながら、負傷した仲間を連れて龍山寺駅のホームへと這う這うの体で後退していった。


午前三時十分。


血まみれとなり、精神的に完全に追い詰められた最後の七名の隊員たちがホームへと這い上がってきた時、先発の捜索部隊はすでに過半数が命を落としていた。


龍山寺駅のホームの地面には、目を覆いたくなるような血の足跡と、放棄された最新鋭の銃器がそこかしこに散らばっていた。


その二時間後、この老下士官の身につけていた執務記録カメラによって撮影された、激しく揺れ動き、雑音だらけの映像が、国防部の最高機密である地下指揮所へと届けられた。


巨大なスクリーンには、弾丸が雨のように無力に墜落していく様子や、老下士官が鉄の棒を振るって怪物の甲殻を打ち砕くその瞬間が映し出されていた。


丸テーブルの周囲には、台湾の軍事最高幹部たちや、緊急招集された物理学・材料学の専門家たちがずらりと座っていた。


指揮所内は針の落ちる音すら聞こえないほど静まり返り、将官たちの顔色は誰もが極限まで青ざめ、タバコを挟む指先がかすかに震えていた。


彼らが誇りとし、数千億ニュー台湾ドルを費やして築き上げた近代化国防体系は、あの灰色の穴の前にあっては、まるで精巧でありながらもあまりに脆い玩具のようだった。


人類と怪物の戦争は、この夜を境にして、最も原始的で最も血生臭い冷兵器時代へと否応なしに引き戻されることになったのである。


そして、この血の代償と引き換えに得られた貴重な報告書は、やがて各国政府が新たな戦略を再構築し、さらには二年後に「ダンジョン探索系」の時代を生み出す科学的基盤となったのであった。


社会の巨大な歯車は、この死寂と絶望の中で、重々しく未知なる方向へと狂い始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ