表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は、おそうじが得意。 〜婚約破棄されましたが、塵一つ残さず 『焼却処分』いたしますわ〜  作者: くまたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

第40話 冥界清掃完了・最後の汚れへ

翌朝、国王への正式な報告を行った。


冥界での一部始終。封印の石の解除。門が開いたこと。死者たちが流れ始めたこと。そして、石を置いた者が百年以上生きている可能性があること。


国王は黙って聞いていた。報告が終わると、しばらく考えてから口を開いた。


「財務局の暗号解読が完了した。フォル・ネビュラから持ち帰った書類の全容がわかった」


「何が書かれていましたか」


「各国の窓口人物の一覧と、資金の流れだ。ガルベス子爵も、ヴァルタス猊下も、全員が記載されていた。そして——指示を出している者の記号が、全て同じだった」


「封印を置いた者と同じ存在、ということですわね」


「そう思われる。百年以上前から、この世界の各所に腐敗の種を蒔き続けてきた何かがいる」


「何者ですか」


「わからない。人間ではないかもしれない。ただ、天界との接点がある可能性を示す記号が、書類の中に一箇所だけあった」


天界。第五章の舞台が、そこに決まった。


-----


午後、ネーベル・アルバとエルナが宿を訪ねてきた。


二人並んで座ると、顔立ちの似ていることがよくわかった。エルナは二十代の半ばくらいで、父親より目に力がある。七年間、王城で過ごしてきた者の顔だ。


「お礼を言いたくて」エルナが言った。「父を見つけてくれて、ありがとうございます」


「仕事の流れでしたわ」


「それでも」


エルナが少し間を置いてから、続けた。


「私も、手伝えることがあれば手伝いたいと思っています。父が七年間抱えてきたこと、私にも関係がありますから」


私はエルナを見た。王城で七年間育った。国王に近い場所にいた。この先の仕事に、役に立つ場面があるかもしれない。


「必要な時に、声をかけますわ」


「はい」


ネーベル・アルバが静かに言った。「暗号の解読で力になれることがあれば、いつでも。七年間、何もできなかった分を返したい」


「それも、必要な時に」


二人が帰った後、シリルが言った。


「戦力が増えましたね」


「そうですわね。ただ、次の場所は天界です。人間が踏み込める場所かどうか、まだわかりません」


「冥界も踏み込めた場所ではありませんでしたが」


「それはそうですわ」


-----


夕方、私は一人で屋敷のサロンに座っていた。


窓の外に、王都の夕暮れが広がっている。橙色の光が屋根を染めていく。いつもの景色だ。


手の中のボタンを眺めた。白い、小さなボタン。母が百年前に冥界の岩場に置いていったもの。


次の者へ渡す伝言として。


そういうことだったのかもしれない。私への手紙を、母は書けなかった。でも、これを残した。解除の記号の場所を示すために。娘がいつかここに来ると、知っていたかどうかはわからない。ただ、誰かが来た時のために。


「第四章が終わりましたわ」


誰もいないサロンで、声に出してみた。


冥界の門は開いた。百年分の澱が流れ始めた。次は、その澱を作り続けてきた何かを探す。天界にいると思われる、百年以上生きている何かを。


それが、最後のおそうじだ。


シリルが茶を持ってきた。今日はほうじ茶だ。香ばしい香りが、サロンに広がった。


「次の出発は、いつ頃お考えですか」


「少し準備が必要ですわ。天界への入口がどこにあるか、まだわかっていない。国王と、ネーベル・アルバと、もう一度話し合ってから」


「では、少しゆっくりできますね」


「ゆっくりはしませんわ。調べることが山積みですもの」


シリルが笑顔で頷いた。


ほうじ茶を一口飲んだ。温かくて、深みのある味がした。


第四章が終わった。次は最後の章だ。天界で何が待っているかはわからない。でも、今まで通りやるだけだ。


汚れを見つけて、分別して、焼却処分。それだけですわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ