↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メルヒェン・ヴェルト ~世界に童話を~  作者: 紙木 一覇
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/147

第135話 殺せ

 オレたちの撃った三つの銃弾は溶けあい、一つになって――


「効かんよ!」


 それでもドラゴン男のバトルオーラを貫けずに。

 溶け合いが完全ではない!

 まだ三つの銃弾はブレている。威力が一つになれていないんだ。

 ならすべき事は。


「心樋(ことい)!」

「うん!」


 心樋がずっと抱えていたグリムを、チャーミングを上へと放った。

 この行動の意味を理解出来なかったのだろう、ドラゴン男たちがチャーミングに目を奪われてほんのわずかに動きを止める。

 その目の先にいるチャーミングに、


「起きろ!」


オレから撃たれた銃弾がぶち当たった。

 炸裂はしない。代わりにチャーミングの体内に入った銃弾はオレが使える唯一の魔法『吸収』によって周囲の魔力を喰い漁る。喰って喰って喰って、限界を迎え銃弾が破裂。

 チャーミングに魔力を供給する。

 チャーミングの髪色が綺麗なホワイトに、眼の色が深みのある紫系・レーズンへと変化した。

 変化して――


「!」


 魔力を大量に受け取ったチャーミングの意識が覚醒する!

 クノイストが感じていた違和感。心樋を救う為大量の魔力を消費したチャーミングは休眠状態に入っているだけなのではないか? 信じ難かった。が、どうやら本当のようだ。


「チャーミング!」


 ただの人形状態から少年へと変化したチャーミングの名を叫ぶ心樋。チャーミングはそんな心樋を見て、周囲を見て。


「お願い!」


 伸ばされる心樋の手。を、触れるように取るチャーミング。

 そして彼は。


「――交差する(ベーテン)!」


 魔法を放つに必要な言霊を唱えた。

 五つ目の魔法を受けとり三つの銃弾はとうとう一つに。


「……まだか!」


 一つにはなった、が、威力が足りない。バトルオーラを貫けない。


「人形如きが!」


 熊男が猛る。

 猛ってチャーミングを殴打する為に跳躍する。

 大きく振りかぶられる腕の一撃を――


「!」


 間に入った心樋が腹で受け止めた。

 障壁は張っていたようだが、それでも激痛が走ったろう、心樋の表情が歪む。


「……殺せ(ベーテン)」


 え?


「殺せ(ベーテン)!」


 物騒。物騒な言霊がチャーミングから放たれた。

 心樋を傷つけられたからか、自分の不甲斐なさからか怒気の篭った言霊であり魔法だ。

 そいつが溶けあった三つの銃弾に上乗せされて凶悪な威力となり――


「なに!」


 とうとうドラゴン男のバトルオーラを貫き、


「がぁ!」


放たれるはドラゴン男による火炎の息吹。

 凶弾と火炎がぶつかり合う。と思った。火炎が回転する凶弾に吹き飛ばされるまでは。

 チャーミング、どんだけ怒ってんだ。

 そうして凶弾は、ドラゴン男の口内に飛び込み、内から彼の喉を貫き破った。


「……あ、ぐ……」


 ドラゴン男が、空中の支配者と言っても良いドラゴンが落ちる。

 重い音を出して瓦礫だらけの地面にぶつかり、獣人化が解けてしまう。

 現れたのは禿頭の白人で、本来髪がある場所にまで魔法石のタトゥーを刻んでいた。

 喉を貫かれた影響で呼吸がままならないようだ。か細い呼吸音はかすれていて、眼にはもう光はなく、いつ命の灯が消えてもおかしくない。


「嘘……だろ」


 そんなドラゴン男を見て呆然となるのは熊男。絶対的な男の敗北を目の当たりにして、それが信じられないらしく。

 ゆっくりとドラゴン男に近づいて――


「砕けろ(ベーテン)」

「がっ!」


 隙だらけの腹にチャーミングの殴打を喰らってビル壁へと叩きつけられ、沈黙する。

 ……今の殴打、心樋が一発貰ったのと同じ場所だったな……。

 その心樋は瓦礫の上に寝かされ腹パンの前に唱えられたチャーミングの治癒魔法で回復中だ。暫く安静にしていれば元気になるだろう。

 カマキリ女は足を撃たれているせいで動けない。出血も多い。もう体を動かす余力はなさそうだ。


「念の為だ」


 おまけに、ユーリアの『レイ・ガン』に二つの鎌を折られてしまう。

 完全に場の決着がついた。オレたちの勝利だ。


「ゆ……」

「ん?」


 なにやらドラゴン男が呟いている。ヒュー、ヒューと、か細い呼吸の中で、なにを言おうとしている?

 ドラゴン男に近づく、オレ。最期の言葉なら聞いた方が良いと思ったから。


「……言い残す事でも?」

「……ゆ、る……せ」


 ゆるせ。許せ? 誰に対しての謝罪だ? 敗北したのを謝っているのか? 誰に?

 と、その時気づいた。

 穿たれた喉の奥が赤く染まっているのに。

 まさか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。