第135話 殺せ
オレたちの撃った三つの銃弾は溶けあい、一つになって――
「効かんよ!」
それでもドラゴン男のバトルオーラを貫けずに。
溶け合いが完全ではない!
まだ三つの銃弾はブレている。威力が一つになれていないんだ。
ならすべき事は。
「心樋!」
「うん!」
心樋がずっと抱えていたグリムを、チャーミングを上へと放った。
この行動の意味を理解出来なかったのだろう、ドラゴン男たちがチャーミングに目を奪われてほんのわずかに動きを止める。
その目の先にいるチャーミングに、
「起きろ!」
オレから撃たれた銃弾がぶち当たった。
炸裂はしない。代わりにチャーミングの体内に入った銃弾はオレが使える唯一の魔法『吸収』によって周囲の魔力を喰い漁る。喰って喰って喰って、限界を迎え銃弾が破裂。
チャーミングに魔力を供給する。
チャーミングの髪色が綺麗なホワイトに、眼の色が深みのある紫系・レーズンへと変化した。
変化して――
「!」
魔力を大量に受け取ったチャーミングの意識が覚醒する!
クノイストが感じていた違和感。心樋を救う為大量の魔力を消費したチャーミングは休眠状態に入っているだけなのではないか? 信じ難かった。が、どうやら本当のようだ。
「チャーミング!」
ただの人形状態から少年へと変化したチャーミングの名を叫ぶ心樋。チャーミングはそんな心樋を見て、周囲を見て。
「お願い!」
伸ばされる心樋の手。を、触れるように取るチャーミング。
そして彼は。
「――交差する!」
魔法を放つに必要な言霊を唱えた。
五つ目の魔法を受けとり三つの銃弾はとうとう一つに。
「……まだか!」
一つにはなった、が、威力が足りない。バトルオーラを貫けない。
「人形如きが!」
熊男が猛る。
猛ってチャーミングを殴打する為に跳躍する。
大きく振りかぶられる腕の一撃を――
「!」
間に入った心樋が腹で受け止めた。
障壁は張っていたようだが、それでも激痛が走ったろう、心樋の表情が歪む。
「……殺せ」
え?
「殺せ!」
物騒。物騒な言霊がチャーミングから放たれた。
心樋を傷つけられたからか、自分の不甲斐なさからか怒気の篭った言霊であり魔法だ。
そいつが溶けあった三つの銃弾に上乗せされて凶悪な威力となり――
「なに!」
とうとうドラゴン男のバトルオーラを貫き、
「がぁ!」
放たれるはドラゴン男による火炎の息吹。
凶弾と火炎がぶつかり合う。と思った。火炎が回転する凶弾に吹き飛ばされるまでは。
チャーミング、どんだけ怒ってんだ。
そうして凶弾は、ドラゴン男の口内に飛び込み、内から彼の喉を貫き破った。
「……あ、ぐ……」
ドラゴン男が、空中の支配者と言っても良いドラゴンが落ちる。
重い音を出して瓦礫だらけの地面にぶつかり、獣人化が解けてしまう。
現れたのは禿頭の白人で、本来髪がある場所にまで魔法石のタトゥーを刻んでいた。
喉を貫かれた影響で呼吸がままならないようだ。か細い呼吸音はかすれていて、眼にはもう光はなく、いつ命の灯が消えてもおかしくない。
「嘘……だろ」
そんなドラゴン男を見て呆然となるのは熊男。絶対的な男の敗北を目の当たりにして、それが信じられないらしく。
ゆっくりとドラゴン男に近づいて――
「砕けろ」
「がっ!」
隙だらけの腹にチャーミングの殴打を喰らってビル壁へと叩きつけられ、沈黙する。
……今の殴打、心樋が一発貰ったのと同じ場所だったな……。
その心樋は瓦礫の上に寝かされ腹パンの前に唱えられたチャーミングの治癒魔法で回復中だ。暫く安静にしていれば元気になるだろう。
カマキリ女は足を撃たれているせいで動けない。出血も多い。もう体を動かす余力はなさそうだ。
「念の為だ」
おまけに、ユーリアの『レイ・ガン』に二つの鎌を折られてしまう。
完全に場の決着がついた。オレたちの勝利だ。
「ゆ……」
「ん?」
なにやらドラゴン男が呟いている。ヒュー、ヒューと、か細い呼吸の中で、なにを言おうとしている?
ドラゴン男に近づく、オレ。最期の言葉なら聞いた方が良いと思ったから。
「……言い残す事でも?」
「……ゆ、る……せ」
ゆるせ。許せ? 誰に対しての謝罪だ? 敗北したのを謝っているのか? 誰に?
と、その時気づいた。
穿たれた喉の奥が赤く染まっているのに。
まさか。




