9話 意外な結果
「うおおおおおっ! まだ、俺達Cグループにも可能性があるぞ!残ってる奴全員死ぬ気で殺せええええええあえっ!!」
相沢達が消えると僅かに残っていたCグループ受験者達が活気付いて一斉にオークに襲い掛かる。極限の状態という事もあってか、荒々しくも自然と効率のいい連携 でオークを殺していく。
この一連の流れを見ていたBグループ受験者は余裕な表情から一変、凄まじい形相となりオークを殺していく。
中には同じ様にAグループへ攻撃をする受験者もいるが後の祭り。
――残り時間3分を切った。
Aグループは既に勝ったと判断したのか、何人かが野宮に頭を下げている。
それに比べてBグループ受験者は苦悶の表情。ここに来て戦うスタミナが切れたらしい。
Cグループはというと、アドレナリンが溢れ出ているのか、それとも相沢の影響を受けているのか一向に止まる気配がない。
これは逆転出来たか?
――3、2、1、0
Aグループ受験生達の勝利を確信したカウントダウンが試験終了を知らせると俺達は強制的にダンジョンから移動をさせられた。
タイマー式の強制転移……この札作った校長の凄さを物語ってるな。
「皆さまお疲れ様でした。怪我で未だ動けない方もいると思うので、今のリラックスした状態でお聞きください」
「おい、おい……」
「いや、今から話があるらしいか――」
ダンジョン入口で試験官が話を始めようとすると、聞き覚えのある声に話し掛けられた。
ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバい。只でさえ話し掛けられただけで緊張するのに、その相手があの相沢って……。
「攻撃力1、お前には助けられた。ありがとな。結果が悪くてもあの1発を決められたから悔いはない」
「え、いや、その、あの、まだ、結果分からないから……」
「お前の『バリア』が凄くて能ある鷹は爪を隠すってやつ?は分かったけどあの状況から逆転なんて想像つかねえ。それにAグループの奴らのあの余裕な態度とBグループのほっとした顔。それに比べてCグループ連中の不完全燃焼って感じの顔。こんなの誰が見ても結果は明らかだ。もう、試験官の話を聞く必要もねえよ」
相沢は悔いはないと言いながらも泣きそうな声で俺にお礼の言葉をくれた。人にお礼されたのなんていつ以来だろう。
なんか俺もありがとうの言葉だけでどうでもよくなってきたかも。
「えー。札の効果によってグループ対抗試験の集計結果が出ています。この結果が直接の合否になるわけではありませんが、発表致します。まず第3位は……」
「お、俺の方こそそ、その、ありがと――」
「お前ら吃り過ぎだって、別に何かする訳じゃねえしそんなに怯えなくても――」
「Bグループ」
聞き流していた試験官の言葉に俺達は見開いた目で視線を合わせた。
「3位がBグループ? って事は俺達は2位?おいおいおいおい俺がいなくなってからどんだけオークを殺したってんだよ……」
「ちっ! Bグループの奴ら油断したな」
信じられないといった様子で喜ぶ相沢と苛々が止まらない藤。
勢いはあると思っていたけど……やっぱり藤が途中で脱落したのが相当響いたって事か。
それと嬉しいのは分かるけど俺の背中をバンバン叩くのは止めてくんないかな、ねぇ相沢君……。
「これは私達も意外でしたが……第2位がAグループ、第1位がCグループ。カメラで様子を確認していましたが、所々死角になっていたのでなんでこうなったのやら――」
「やった! ……やったぞ! 攻撃力1! 攻撃力1!」
「そ、その、あ、あんまりそれで呼ぶの止めてくれる? それと苦しい」
何もする訳じゃないって言ったのに、そのヘッドロックはマジで殺すときのやつだから!
「攻撃力1の奴がいるグループが勝った? そんなにあいつらオーク殺してたか?」
「攻撃力1の奴なんか隅でバリアに籠ってただけだぞ」
「イカサマか?」
喜んでいる俺達に突き刺さるAグループとBグループの視線。
俺コツコツ倒してただけなんだけどな。
「おい! 攻撃力1の悪口を言ったのはどこのどいつだ?」
異様な雰囲気に気付いた相沢は周りを威嚇する。
これは強力な味方をつけれた。
「攻撃力1の『バリア』は強力だった。オークをどうやって大量に殺せたかは分からないが、攻撃力1の所為でやられたのは事実。今回は敗けを認めるとしようぜ」
藤の発言でぼやく受験生達が黙る。
意外なのは野宮さんも何も言わないこと。
もしかして怒ってる?
「意外な結末でしたが、先程も言った通り実戦試験だけで合否は決まりませんのであしからず。それではこれにて入学試験を終了と致します。札を返却した人から帰宅してください。改めてお疲れ様でした」
受験者達は試験官の入学試験終了の合図で移動し始めた。
さっきまで死ぬ思いで戦っていたっていうのにあんまり話しながら帰っていく受験者はいない。
最悪の空気で終わったから仕方ないかもしれないけ――
「能ある鷹は爪を隠す……攻撃力1のお陰で俺の中の何かが変わった気がした。もしお互い受かったらよろしく頼むな」
「わ、わかった」
「じゃあな、本当にありがとう」
最悪の空気だったけど……受かったら友達のいる学校生活が出来るかもしれない。
そう思うだけでダンジョン学校の校門へ向かう俺の足は軽くなるのだった。
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